ラルロッザの学園都市 SS15
ギャグ編ショートストーリー15 Gインターバル
緊迫した雰囲気の中、必死に止めようとして右足にしがみついている牛男――ゼマルディ・クラウンをずるずると引きずりながら、白髪のドラゴン、ルイシエンタ・ノートランドは、長い髪を振り乱して周りを見回していた。見えないはずの彼女の目が、カッと見開かれている。生まれつきの先天性魔力過多という病気により、視力がほぼない彼女は、しかし魔力等の生命エネルギーを見ることはできる。
ぐるりと第十五生徒会室を見まわし、彼女は、手に持った散弾銃の銃座に取り付けられた装填グリップを掴み、ガシャコン、と慣れた手つきで弾を込めた。
「そこかああ!」
細い声で絶叫し、振り向きがてらズドンとぶっ放つ。銃弾には魔力がたらふく込められていたらしく、炸裂した百数個の鉛玉が、それぞれ一つ一つが砲弾が爆裂したかのような威力で、クローゼットを吹き飛ばし、木片と瓦礫屑を吹き荒れながら、壁を貫通して抜ける。
度重なる破壊活動により、学園理事会が生徒会搭の壁に魔導鉄板を組み込んだはずなのだが、意味がなかったことがここに証明された。
「やめろおお! おちつけルイ! やめてえええ!」
周りを見回しながらガシャコン、と弾を装填し、彼女は、今度はエレベーターの方に銃を向けた。
「そっちかサノバビッチ……」
口調が変わっている。首のあたりはほぼ完全にウロコが生え、巨竜の様相を呈していた。
生徒会室の中には彼ら以外誰もいないが、大理石の長テーブルが真っ二つになっていたり、シャンデリアが落下して粉々になっていたりと、酷い有様だ。
そこで、牛男はエレベーターが上昇してくるランプを見て青ざめた。
「ちょっ……やめろ! 死人が出る! 初の死人が出る!」
「消えてなくなれぇえ゛ええ!」
ポン、と電子音がしてエレベーターの扉が開いた瞬間、ルイはためらいもなくそこに向け、散弾銃をぶっ放した。
「きゃっ……!」
というやけに可愛らしい悲鳴が聞こえてきて、一拍遅れて、轟音を立ててエレベータールームそのものが爆散する。パラパラと顔に当たるガレキの粉を受け、呆然とゼマルディが口をわななかせる。
「ああ……遂に誰かが死んだ……いつかはこうなると思ってたけど遅かった……」
「死んでないわよ……いきなり何してくれてんのよ……」
物凄く低い声でそう呟き、半ば倒壊したエレベーターの中から、ムクリと小さな影が起き上がる。
妖精族のアルヴァロッタ・アークシーだった。小さな体に四枚のトンボ羽をブルブルふるわせながら、彼女は真っ赤に燃える瞳でドラゴンを睨みつけていた。
「何で生きてるんだお前……」
「不意討ちにはもう慣れたわ」
「慣れるなよ……ほんとに嫌な学園生活だ……」
炸裂の瞬間、体中の魔力を全開にして弾丸を反らしたらしい。爆発はそれによるものだったみたいだ。
もはや既に小型の人型兵器と化している女性達を交互に見ながら、ゼマルディが一歩、一歩と後ずさりを始める。
ルイがペッと床に唾を吐きだし、言い捨てた。
「チッ…………! しぶとい奴め……」
「舌打ちしたでしょ!? 何!? 人を銃撃しておいて何その態度!?」
「やかましいよアークシー! 乳だけ女はそこで静かに見てな!」
完全に普段と口調が変わり、目の色も変わっているルイが、ガシャコンと銃に弾を装填して部屋を見渡し始める。
「逃げろアークシー……それか、魔獣駆除委員会呼んで来い……ルイを封印するんだ……キレてるんだ……もう俺にはどうしようもないんだ……」
「とてつもなく腑に落ちないんだけど、なにこの状況……」
「早く行け……頼むから……」
「ふん! 役にも立たない乳をブルンブルンぶら下げてアホ面下げてよくもまあ今日も! 邪魔だよミルクタンク!」
「何ですってぇえ!」
「やめろルイ! 人に八つ当たりすんなよおお! おまっ、お前……かつてないほどガラが悪くなってるぞ! 淑女じゃなかったのか!? 人の欠点を抉るなよ!!」
「欠点って何!?」
「うるさいよ! 中途半端男! 一著前の存在感身につけてからそういう意見はするんだよ! 私に意見するんじゃないよ! 私の方が偉いんだよ!! 私は今忙しいんだよ!!」
ぎゃーぎゃー言っている彼氏と生徒会員をどなりつけ、ルイはポケットからだした弾丸を二つ、口にくわえた。
「……今日こそ決着をつけてやんよ……私をコケにしたツケはしっかりその体で払ってもらうよ……」
ブツブツ呟きながら、体中より真っ白い魔力を吹きあげつつ、ルイが辺りを徘徊し始める。
「何あれどうしたの、あのアホ……殺していい?」
ゼマルディを助け起こしてエレベーターに引きずり出したロッタに、涙を浮かべながら牛男が言う。
「やめてくれ……お前は見るのは初めてだろうけど、あいつの実家マフィアだから、キレるともう、手に負えないんだよ……お前よりもタチが悪いんだよあいつ……」
「あたしよりタチが悪い奴って生徒会にいたんだ……」
「自分がタチ悪いって自覚してたの!?」
「とりあえず、あんたは逃げて委員長から、超速効薬もらってきなさい。あたしはちょっとあそこの貧乳を懲らしめてから行くわ」
大きな胸をそらすようにして、ルイに聴こえるようにロッタが言い放つ。
白いドラゴンは、ピクリと鼻の脇を痙攣させると、銃を肩に担いでロッタの方を向いた。
「まだいたの……乳(にゅう)」
「乳(にゅう)!? 人格が完全に変わってるよ……何あったのよ……それでも胸から離れないのね……」
「邪魔をするんじゃないよ! 私は今忙しいんだよ!」
「さっき聞いたっつーの! 巨乳巨乳巨乳巨乳ってどいつもこいつも……あんたたちの頭の中はおっぱいしかないの!?」
「あんたに私の気持ちは分かんないよ!」
「あんたにもあたしの気持ちは分かんないでしょうよ!」
「ぎぃいい! 体重のほとんどが胸部に食われてるくせにいいい! 胸のオーラがピンク色よ!」
「何ぃ゛っ!? あんたはもぉぉぉほんとにそのコンプレックスしかないのね!」
「コンプレックスの塊に言われたくないね!」
「何おをお!? センだってね! でかいのが好きなのよ! 揉めるからね!」
全然関係ない彼女の彼氏――ルイの兄の名前を出し、ロッタは両腕を組んで鼻で笑った。
そして憐れむように、激昂して顔が真っ赤になっているルイのボディを見つめる。
「……ぷっ……手の平の方が大きいわねえ」
「くくっ……くっははは!」
しかしそこで、妙に邪悪な笑い声をルイが上げた。そしてポケットから取り出したハンドサイズの写真集をスパーンと床にたたきつける。
「これを見てもまだそんな口が叩けるかい!?」
「何これ……」
スレンダーな体で有名な、アイドルの写真集だった。
「ににさまの部屋から取ってきたんだよ! 何とか言ってみなタンクガール!」
「センが……何……これ……」
ガクガクと震えながら彼女はそれを手に取り……そして口元をわななかせながら彼女を睨みつける。
今度はルイが腕組みをして、なだらかな胸を反らして彼女を見下ろした。
「それでも眺めて勉強するんだね! 本物の女の魅力ってやつを!」
「信じられない裏切り行為だわ……きぃぃいい! 許せない!」
バリーンと背塚から写真集を真っ二つに引き裂き、ロッタはそれを床にたたきつけた。
「こっ……! こんなもので勝ったつもり!? ふ……ふんっ、哀しいわね……心の隙間をいくら妄想で埋めようと、『ない』ものは『ない』のよ!? あはははは無様ねええ! 図が高いわよ貧乳! 図が高いのよ!! 貧乳は貧乳なりに這いつくばって靴でも舐めてればいいのよ! 犬のように!」
「開き直ったな!? それがあんたの本性ってやつさ! その醜い叫びがあんたの本当の姿さ!」
巨大なバストと平坦なバストが睨みあう。
エレベーターの方に這って行こうとしているゼマルディに、その時ルイが目を止めた。
そして彼氏に銃を向けながら押し殺した声を発する。
「選ばせてあげるわマルディ……私とこのアバズレのどっちがいいのか……」
「そうね、男性の意見を聞きたいところね……あんたと話をしてもらちが明かないわ……」
「何故そこで関係ない話を俺に振る……?」
ロッタまでもが、瞳を赤く光らせながらゼマルディに向けて手を伸ばす。ルイが発射して壁にめり込んだ銃弾がぐらりと揺れ、ひしゃげた五十発近くが勝手に浮きあがり。
彼女の周りをグルングルンと回転し始めた。
「よく考えて答えた方がいいわよ」
「早く言いな! 私は今忙しいんだよ!」
「何て答えても俺はお仕舞いじゃねーか!!」
「「うるさいよ!」」
「くそ……っ! ひと思いに殺せ!」
……何で俺は、普通に登校して授業を受けて、普通に帰ろうとしただけなのに今、実弾兵器を向けられて死の覚悟をしているのか。
ふと今わの際にゼマルディがそう思う。
その時、ガチャリと音がして、生徒会室隅の非常ドアが開いた。螺旋階段状になっていて、そこを登っても部屋に来れるようになっているのだ。
「また何かやってるのか……?」
恐る恐るドアを開けて顔をのぞかせ。
生徒会長のドラゴン、センシエスタ・ノートランドが、ひっ、と息を呑んで硬直した。
エレベーターから入ると予期せぬ不意討ちに遭う確率が高いため、彼は主にここから出てここから帰る。
「「あっ」」
二人の女性が同時に声を上げる。
「見つけたぞこの腐れダボがあぁ゛ああ!」
口汚い言葉を喚きながら、ルイがセンに向かって散弾銃を構えた。
「なっ、なん、何だ!?」
反射的に両手を上げ、降伏の意思を示したセンに向かって、体の周りに弾丸を回転させたロッタが、ふらりと足を踏み出した。
「セン、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「その前にタマをとめろタマを!」
「死にさらせえええ!(Fuck You!)」
一拍早く、ルイが散弾銃をぶっ放つ。それはセンの体に突き刺さると、無情にも非常階段の向こうへと吹き飛ばした。それでも飽き足らず、装填しもう一発、さらに装填しもう一発とルイが壁を吹き飛ばしながら何度も散弾銃を発射する。空中で二度はね上げられ、そしてドラゴンが空中を手で掻いて落下していく。いざという時のために魔力を全開にしていたため、弾丸が貫通することはなかったが……相当な衝撃のはずだ。
絶叫と共に、べしゃりと何かが地面に激突した音が聞こえた。
ルイが、カチ、カチとトリガーを引き、弾丸が出ないことに気づき、ストックがないのか、散弾銃を床に投げ捨てる。
穴から下を見下ろし、ロッタが口元をわななかせた。
「こっ……ここまでやることは……死んだんじゃないあれ……?」
「ちぃぃっ! まだ生きてやがるッ!」
ルイが吐き捨て、ズンズンと歩いてくる。途中で彼女は、壁にかかっていたレイピアを抜き放った。
そして止めようとしたロッタを尻尾で弾き飛ばし、ツカツカと穴の方に向かった後。
無情に、剣を下に叩きつけた。
ガインッ! という音がして、切っ先が石造りの床に深々とめり込む。
それをぐいっと抜いて、先端を確認し。
彼女は打って変ったようなさっぱりとした笑顔を、背後で腰を抜かしているゼマルディに向けた。
「マッ、マルディィィ~っ♪ ついに! ついに仕留めましたあぁぁあ~~☆」
先ほどまでの殺気を孕んだ低い声ではなく、反転した少女の声で彼氏に呼びかける。
彼女は戦利品のように高々と掲げたレイピアの先には、もはや動かなくなった大きなゴキブリが、ぶっすりと串刺しにされていた。
生徒会室の隅に正座をさせられた、よれよれの制服とボサボサの髪のセンが。
ズンッ、と膝の上に、子供一人分の重さくらいはある魔法薬学の辞書を追加され、さるぐつわをかまされた奥の喉で、必死なうめき声をあげた。既に膝の上には四冊の辞書が乗っている。およそ120kgの重量がかかっている計算だ。
その隣で、片手でもう一冊の辞書を持っているロッタが、冷たい顔でそれを見下ろしていた。
「これは何……?」
「ん゛んん゛っ! う゛んぅ゛ぅっ゛!」
ブンブンと首を振っている彼氏に、自分が破り捨てたアイドルの写真集をつきつけ、彼女は彼の前にしゃがみこんだ。そして目だけは動かさずに笑ってみせる。
「そんなに怖がらないでいいのよ。あたしは、あんたが他の女に欲情してることを怒ってる訳じゃないの。ね、大したことじゃないの。あたしはただ、何でこの女の胸がこんなに小さいのか、それを聞いてるの」
「ん゛ん゛ン゛ぅうぅ!」
「胸が小さい子は沢山いるわ……それはどうでもいいんだけど。ね、あたしは、何であんたの部屋にあるグラビアの中の子が、貧乳なのか、それを聞いてるのよ……」
涙を振りまきながら首を振っているセンの顎をつまみ、そしてロッタは低い声で言った。
「答えなさいよ……それとも乳がでかい女とは話したくもないってことかしら……?」
生徒会室の隅で行われている拷問を見て見ぬふりをしながら、先ほど全員集合した残りの生徒会員達は、深いため息をついた。
ただ一人ゼマルディだけが、ズンッ、とセンの足に辞書がもう一冊追加されたのを見て口元を震わせている。
「答えろって……答えられなくしてんのは自分じゃねーか……」
「まったく……ゴキブリ一匹で何でこんなことに……」
頭痛を抑えながら、車椅子に乗った赤毛の人魚――アイカ・マロンが口を開く。
ゼマルディの体に寄りかかって眠っている、白いドラゴンを三白眼のような目で一瞥し、彼女は続けた。
「折角この生徒会室に、核シェルター並の改造を施させたという矢先に、こんなにあっさりと、わたくしの努力が無駄になるとは思ってもいませんでしたわ。もういっそプレハブでいいんじゃないでしょうか」
「壊れることが前提なのか」
「だって核爆発にも耐えるほどの内装だったんですのよ? てゆうか、特注の純大理石テーブルがベニヤ板みたいに粉々ですわ。最近皆さん、兵器化がいちじるしいですわよ。誰と戦うんですの? その力で誰を斃すおつもりなんですの?」
「無論世の中の悪だ」
胸を張って答えた怪鳥族の大男――クヌギ・トランスの膝の上で、小さな金髪の吸血鬼――フィルレイン・ラインシュタインが、右手を上げて声を発する。
「銀河の平和を守るよ!」
「現実に戻ってきてくださいまし……あなた方は破壊者(デストロイア)にはなれますけども、守護者にはなれないと思います……とりあえず、死者が出る前に、ゴンザレスごっこ(第十二話参照)は禁止にします。武器に、必要以上に魔力を込めるのも禁止です。てゆうか、学校に武器及び危険物を持ってこないでくださいまし」
「自分のことを棚に上げてお前……」
ゼマルディを無視し、アイカはクヌギとフィルを見た。
「いいですね?」
「それじゃ俺たちはどこでゴンザレスごっこをすればいいんだ」
「必要があれば私が許可を出しますから」
「ふむ……力の解放は承認制か。それもまたオツだな」
「わたしはどーでもいいよー」
二人を呆れた瞳で見下ろし、宙に浮かんでいた幽霊――サラサ・メルが口を開ける。
「とりあえずアークシー様とノートランド妹が仲良くなれば、被害の八割方は防げるような……」
「バカ言わないで」
話を聞いていたのか、ロッタがすっくと立ち上がる。その拍子に、ズン、とまた辞書がセンの膝に追加された。白目をむいてピクピクと痙攣している。太ももがそろそろ破裂しそうだ。
「あたしとそいつが分かりあうときは、魔界に巨乳と貧乳の差がなくなった時よ」
「何仰ってるんですか!? 自分たちを代表みたいに言わないでください!」
自分の胸を手で隠してサラサが素っ頓狂な声を上げる。
「全員が全員ミドルというのも、そんな世界はつまらないものだぞ……」
「クヌギさんも何言ってるんですか!?」
アンニュイな顔でそう言ったクヌギを見上げ、フィルが寂しそうに言った。
「ミドルか……」
「まあ胸の話は置いとくとしまして」
無理やり話しの流れを断ち切り、アイカが顔の前で指先をくるくるとまわした。
「そろそろ本当に困りますので、暴れるなら東区じゃなくて……そう、西区みたいな別のエリアで」
「うおっ痛!」
そこでクヌギが声を上げ、さえぎられた形になったアイカがイラッとした顔を彼に向ける。
「何ですの?」
「いや、瓦礫で指を切っただけだ。気にするな」
そう言って、ぷくーっと赤い血が浮いてきた指先を見せる。
「大丈夫クヌギ君!?」
そこでフィルが慌てて口を開き。
全員が、あっ、と声を上げる前に、彼の手を掴んで引き寄せ、血が出ている指を口に含んだ。
床に絹糸のような金髪を広げ、すらりとした肢体を投げ出した、すさまじいモデルプロポーションをした美女に抱きしめられ、クヌギが停止している。豊満過ぎる胸に頭を押しつけられ、頭の先からつま先までカチコチだ。
(フィルは好きな人の血を飲むと、好感度により一定時間成長します。また、クヌギは極度のロリコンです)
「うふふ……小さなクヌギさんも可愛い……」
妖艶なつぶやきを聞き、その場の全員からズルリと力が抜けた。
頬を撫でられているクヌギが、必死に『助けろ』と周囲に視線を送っている。
「誰だお前……?」
「あら、マルディさん、ご機嫌よう。フィルレイン・ラインシュタインと申します」
優雅に頭を下げたフィルを見て、アイカがため息をついた。
「そう言えば、目が覚めている状態で大きくなったフィルちゃんを見るのは、わたくし達、初めてですわね……」
「中身も成長するんですね……」
サラサがうんざりしたように呟く。
「先ほどまでのお話は、聞かせていただきました」
クヌギをそっと脇に立たせ、大人フィルはロッタに近づいた。そして戸惑いまくっている妖精の少女を、そっと自分の胸に抱く。
「女性の胸は、大切な人を抱きしめてあげるためにあるのですよ。そこに大きさなどは関係ありません、大事なのは心だと、私は思います」
手を離し、彼女はロッタの頭をいい子いい子をするように撫でた。
「大きくても、小さくても、心が優しければ、私は美人さんだと思いますよ」
ロッタは少し停止し、そして大人フィルの胸にポン、と手を置いた。そして何度かポムポムと揉んでみてから、息を吐き。
グッ、と親指を立てた。何だか知らないが負けを認めたらしい。
大人フィルが反射的に親指を立て返す。
それを潤んだ瞳でロッタが見上げる。
「よくわかんないけどありがとう姐さん!」
「うふふ。もっと自分に自信を持ってください」
「はい! あたし頑張る!」
「何をだ……通じ合いやがった……」
ゼマルディが離れたところから小さく呟く。
アイカが肩をすくめ、口を開いた。
「もう何が何やら……まあ、胸が大きい小さいはどうでもいいんですの」
大人になったフィルをパシャリと写真に収め、彼女はカメラをポケットに収めた。
「どうでもよくはないような……マロンさん、あなたは生まれつきその大きさだからいいんでしょうけど。初めて会ったとき、何で胸部にマスクメロンを詰めているのかと」
「黙りませんと茹であがった水蒸気と混ぜますわよ」
にっこりとサラサにほほ笑んでみせてから人魚が続ける。
「わたくしが聞きたいのはですね」
息を吸って、吐き。
そして彼女はあきらめたように言った。
「明日から、この一角はプレハブで構いませんねということだけです」
結
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