ラルロッザの学園都市 SSS3
ラルロッザの学園都市 ショートショートストーリー
SSS3 運命両断猫ツインブレード
「フリンスよ。お前がわしの弟子となってから何年が経つ?」
岩が連なり重なった滝つぼのてっぺんに座禅を組んでいるドラゴンの脳天にしがみつきながら、でっぷりと太った魔獣、どう見ても猫にしか見えないにゃんこ先生が聞く。
彼を頭に乗せているドラゴン、センは
「そ……そろそろ一年です。師匠……」
と答え、足をプルプルさせながら、不安定な岩の上で控えめに続けた。
「師匠、そろそろ落ちそうです……」
「うむ。洒落でやってみたが落ちたら、少々これはリアルに危険だな。戻ろう」
「ありがとうございます…………しかし師匠、一歩でも動いたら落ちそうです」
「何? 気張れセンシエスタ。わしが降りるくらいまで踏ん張れ」
「そ、うしたいのは山々なのですが……ししょ、ちょ、うごかな」
いち早く自分だけ助かろうとした猫がぶるんと動いた瞬間。
それに振り子のように振られ、ドラゴンが数百メートルの滝つぼに、足場ごと足を踏み外した。
「あ」
弟子が落ちて行くのと同時に落下しながら、しかし次の瞬間、にゃんこ先生は
「とう!」
と叫んで彼の頭を後ろ足で強く蹴った。太った猫が宙を舞い、くるくると回転してから、スタッと滝つぼに着地する。
落下していく弟子を
「……うわぁ……」
と見下ろしながら、彼はその場に腰を下ろした。
そして懐から葉巻を取り出し、ジッポで火をつけてぷっかぁ……と煙を吐く。
「やっちまった……」
「生きていたかセンシエスタ」
腕組みをして石の上に仁王立ちになっているにゃんこ先生を、ずぶぬれで岸に打ち上げられたままセンは見上げた。
「師匠…………何をするんですか…………」
「正直すまんかった。てゆうか何でお前は生きているんだ? まあいい。お詫びに奥義を一つ教えてやろう。立つがいい」
「え……!? にゃんこ真拳の奥義を!?」
「うむ。そろそろ一年だしな。憶え始めてもいいころだ」
「一年で奥義の伝承を始めるんですか……」
「侮るでない。にゃんこ真拳の奥義は百八式まであるぞ」
「百八!?」
「とりあえず、手軽なところから始めるか」
ムクリと起き上がった弟子の回復力に唖然としながら、にゃんこ先生は岸辺に突っ立っていた、拳闘練習用の、人間大の丸太に目を移した。
「お前にもできそうなところだと、そうだな……うーん……第一の秘技、運命両断猫ツインブレードから、順を追ってやっていったほうがいいかもしれん」
「とても不安をあおる名前ですね」
「恐ろしかろう。まあ、口で言うよりも実演して見せたほうが早い。ちょっと見ておれ」
そう言って、にゃんこ先生はでっぷんでっぷんとたるんだ腹を揺らして丸太から少し離れた場所に移動した。
「運命両断猫ツインブレードは、そこまで難しい魔力調整を要求はしていない。ただ、右手と左手に持った剣に込める魔力を丁度フィフティーフィフティーにし、空間に反物質を形成、それを定義反転の結界で覆い、インパクトの瞬間に開放。対消滅を起こさせる技だ。たいしたことはない」
「いや何か今すごいこと仰りませんでした!?」
「反物質くらいで驚いていては、これから先の百七個の奥義で心臓が止まるぞ」
「反物質て!? 本当に運命両断してる!!」
「なかなかいいリアクションだ。どれ、まず薄めに技を使ってみる。よく見ておけ」
「反物質って薄めに作れるものなんですか……いややめてくださいよ。ちょっとお!」
「わしを誰だと思っておる。心して黙っておれ」
心なしか数メートル退避したセンに気づいていないのか、にゃんこ先生は腰のベルトに刺していた二本の小さな剣を抜き、両手に構えた。
「フンッ!」
気合を入れた途端、ズンッと音がして彼の周り半径五メートルほどの地面がすり鉢上に、噴出された魔力で陥没した。
「よいかセンシエスタ。にゃんこ真拳の極技は技の威力でもなんでもない。いかに格好よく見栄と口上を切れるかということをわしは見る。例えば、ここで2パーセントほどの力を放出し」
「2パー!?」
カチリとマントに取り付けられた小型魔導録音機のボタンを押すと
『チャラララーラーラララララーラー』
という妙にケレン味溢れる音楽が鳴り響き始めた。
「破ァァッ! キャットオブハートの名にかけてぇ゛ッ!!」
と叫ぶと
『チャラララッ! チャラララッ! チャララッラッララッ!』
と、音楽が一段楽したところで。
怪鳥音のような声を発した猫から、黒い渦状の魔力が放出され。
ズムンッ! と今度は川を巻き込んで半径五メートルだったはずの陥没が一気に三十メートルほどにまで拡大された。
その中心に、バチバチと放電のような白い光をまといながら、でっぷり太った猫がふわふわ浮かんでいる。陥没している直径六十メートルほどの空間内にはものすごい圧力がかかっているのか、中の地面がボロボロに崩れて、重力に逆らい浮き上がり始めていた。
センはいち早く離れた川の中に逃げ込み、ブルブル震えながらそちらを見ている。
にゃんこ先生はケレン味溢れる音楽を垂れ流しながら、体中の毛をまりものように逆立てつつ口を開いた。
「あと2パーくらい力を上乗せる」
「それで4パーですか!?」
「黙って聞け。この次の口上が大事なのだ。あとはわしも魔力の制御に集中する。これから先はしかと目に焼きつけよ」
「いえ、師匠ちょっ……もう十分ですから。せめて俺がもう少し退避するまで」
「天よ地よ……」
そこで弟子の声を無視し、にゃんこ先生が目を閉じて魔力の集中を始めた。
「ひいい!」
慌ててばしゃばしゃと水を掻き分けながらセンが逃げ始める。
「火よ水よ……」
ボッ、と音がして右手の剣、その刀身に真っ赤な炎が吹き上がる。対照的に左手の剣の刀身にはビキビキと音がして氷が走り始めた。
「猫に力を与えたまええ゛えぇええ゛!!」
「うわこれ洒落になんねえ!」
センが絶叫した前で、にゃんこ先生が右手と左手の剣を
「ヘル! アンドヘブン状態ッ!」
と意味不明な叫び声をあげて両手で一つに握った。途端、彼を取り囲んでいた六十メートルの魔力フィールドが、真っ白な半透明に変わった。代わりに猫を中心に、浮いている彼を囲むように、小さな黒い球体が発生している。バチバチと何か白い煙を発していたが、やがて周囲の瓦礫がそこに吸い込まれるようにして、粉々の砂になり、次々と掻き消えていくのがセンの目に見えた。
「とぅぁぁぁあ!」
そこは軽くぼでん、と浮き上がった空中を蹴り、太った猫が丸太に向けて高く跳躍する。
両手に真っ白に発光している二本の剣を持ち、空中でその柄と柄を合わせて一本の両刃剣のようにする。ヘリコプターを連想とさせる動きで、頭の上でグルグルグルグルと回しながら、彼は叫んだ。
「サンダァァッ! キャットクラッシュッ!」
ズボンッと音がした、ということしかセンには分からなかった。
丸太に突き刺さるようにして墜落した猫が一瞬で数十メートルも地面を抉り取り、そのまま土と岩と、目前の森……その樹齢二百年を超える大木群を何十本を直線状に倒しながら、三百メートルほど、砕け散った丸太を吹き飛ばしながら滑っていく。
土煙と爆風で前が見えなくなったセンの耳に、何故かそれだけははっきり聞こえる少しかすれた声で
「とぅぁぁああぁああ!」
という声が届く。
しばらくしてだいぶ離れたところの森を吹き飛ばして空に煙を噴き上げているにゃんこ先生が、上空はるか高くに飛び上がったのが見えた。
太陽を背にして小さな太った猫が、大上段に剣を構えて落下していく。
実にシュールな光景だ。
拡声器でも使っているのか、そのとき。
一段と大きな声があたりにとどろいた。
「運命両断! ツインブレェェ゛ェエ゛ッドッ゛ふっッゲフォッ!」
最後につっかえたのか、咳が聞こえた。
「成敗!」
気を取り直したのか、ピュー……と猫が落ちていった先の森から、間抜けな叫び声が轟きわたる。
既に丸太は砕け散っている以上、一体何を成敗したのか分からないが。
次の瞬間、天を突く、真っ白な光の柱がにゃんこ先生の着弾地点から吹き上がった。
渦を描いて直径百メートルは超えているのではないかというくらいの光の柱が、雲を貫通し、ピカピカと雷のような明滅をしつつ、周囲の森を吹き飛ばしながら噴出される。
唖然としているセンの前で、しかしその光の柱の威力は全く衰えず。
一秒、二秒経った途端、いきなりゴウッと膨れ上がった。
「ぎゃあ!」
断末魔の悲鳴を上げた弟子を巻き込み、にゃんこ先生の発した攻撃は、周囲一体の森、その約半分以上もの面積を包み込み、範囲の木々や地面を粉々に分解しつつ、ついにはそれでも飽き足らず、核でも炸裂したのではないかというくらいの轟音と熱線を吹き飛ばして、その場で破裂した。
綺麗な茶褐色の砂漠が、見渡す限り広がっている。
でっぷん、でっぷんと腹を揺らして歩いてきたにゃんこ先生が、砂に埋もれて倒れていたセンを、剣の先でつんつんとつついた。
「流石に死んだか……?」
恐る恐る呟いてみると、しかし弟子はビクンッと痙攣してから、震えつつ上半身を起こした。
「ひいっ!」
と女の子のような悲鳴を上げて、にゃんこ先生がしりもちをつく。
激しく咳をして砂を吐き出しながら、センは荒く息をつきつつ言った。
「や……やりすぎ…………でしょう…………森が………………森が……………………」
「いや、正直ほんとすまん。だいぶ抑えたんだが。てゆうか何故まだ生きているんだ? ……まあいい。それじゃセンシエスタ」
気を取り直したのか、にゃんこ先生は手に持っていた小さな猫用剣を弟子に握らせた。
そしてくいっ、と背後の砂漠を親指で指す。
「やってみろ」
「できるわけねえだろ!」
そこで一年経ってはじめて。
ドラゴンの少年は、師匠に向かって暴言を吐きながら。
手の中の剣を、バシーンと地面にたたきつけた。
結
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コメント
ツインブレード、懐かしいですね。ただMXでガデスを倒したとき、なんでイベントでしめんだよ!とちょっと思いました。ガデス出てくる意味ねえだろ…と。ちなみにガデスには中身があります、あの姿はマスクドフォームでしかないのです(マテ)。
無理はせず自分のペースで進めていけばいいと思いますよ。某外道作家や極道うさぎなんか作品を途中で打ち切ってるんですから。しかもよりによって、いかにも次回に続く、てところでo(`ω´*)oプンスカプンスカ!!
マルディの成績については今後もスルーでお願いします。てか来年は丑年ですね、奴が増長しそうです。
人魚の国の話は…にゃんこ先生は連れてこない方がいいですね、いろんな意味で。でも勝手についてきそうだなぁ…
投稿: シロガネ ケイイチ | 2008年12月23日 (火) 20時41分
ガデッサー!
クロノスの逆襲は、スパロボで本編の設定さえもあんまり使われてなかった気が……
そもそもケンリュウとバイカンフーって何なんでしょうね
デザインは狂おしいほどかっこいいですけども
運命両断剣て、実はロムは最終話にて生身で使ってた気もしますし
ガデスって何だったんでしょうね。何したかったのか
あいつもクロノス族でしたっけ?
本編他はまあ、適度にやっていきます
にゃんこは、いらない時にはおっぱいパブに送ればいいので、扱いは結構楽なのです
そういえば、この話ではキャットハンドスマッシュにしようとしてたのを、今更思い出しました
設定上、あとにゃんこ先生は二匹いるのですが、重ねネコイタチとダブルキャットフィンガー、キャットアンドドッグなどを使うことができます
というしょうもないことを考えていたりしました
投稿: マツサガシン | 2008年12月24日 (水) 09時53分