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2009年1月 5日 (月)

灯影 ―― 詩

この指がなければ。
僕に何が出来るのだろうか。

足がなければ、何が許されているのだろうか。

声がなければ、何かを許されるのだろうか。

百年、二百年。
これから先、安らかに眠るために。

一体どれだけ払えば、その権利を売ってもらえるのでしょうか。

指がなければ、何かから解放されるのだろうか。

足がなければ、何かから解放されるのだろうか。

しがらみからも、夢からも解放されて。

静かに横になることができるのだろうか。

見えなければ、許されるのだろうか。
知らなければ、許されていいのでしょうか。

ならば僕は、知り得なければ、つらくないのでしょうか。

この指も、足も、声も、目も。

映るものすべてと、聞こえるもの全て。

モノトーンにそれが、静止映画のような断続的な音をたてて。
カラカラ、カラカラと動いているのです。

耳障りなその音は。
僕にはどうすることもできないのですけれど。

その音を立てなければ、機械は動かないと。
みんな、言うのです。

その通りなのでしょう。
多分。きっと。

世の中には、音を立てずに映写せる機械が沢山ありますが。
僕が触れるものは、今にも朽ちて落ちそうで。

虫食いの穴を所かまわずに開けながら。

カランカランと、それでも回り続けています。

指がなければ、フィルムをなぞることはできないのかもしれません。

声がなければ、アテレコの必要もないのかもしれません。

この目がなければ、耳がなければ。
まわっていることに、気付かないのかもしれません。

カラカラという、腐った音を聞きながらいつも思うのです。

何がなければ、目をそらすことが許されるんでしょうか。

気づけば誰も、周りに座っていませんでした。
朝も、昼も、夜も。
映写機は回り続けています。

劇場は暗く寒くて。
非常口が、ずっと、ずっと遠くに見えます。

一度、外を見たことがありました。

そこには同じような寂れた劇場が、ずらずらと。
連なっているだけ、だった。

端から腐って崩れていくのを、いろいろな人が待っているのかもしれない。
そう、なのかもしれない。

足がなければ、誰かが来てくれるでしょうか。
腕がなければ、係員が来てくれるでしょうか。

この劇場の椅子は臭くて汚くて。
横になることが、できないのです。

ねえ。
誰か、見ているのでしょう。

何がなければ、出してもらえますか。

指がなければ。
足がなければ、許してもらえますか。

でも、それはきっと。
とても痛いの、かもしれません。

痛みを避けようとして、ただ安穏と座りつづける。

そんな僕には。

朽ちていくのがお似合いだと。

誰かは、哂っているのかもしれません。

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