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<title>白馬の王子様</title>
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<description>～そしてボクらは風になる～</description>
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<title>魔王　「奴隷でも買ってくるか……」</title>
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<description>１．―奴隷市場― 魔王　「（変装してちょっと魔王城を抜け出してきたが……）」 魔...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;１．―奴隷市場―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;魔王　「（変装してちょっと魔王城を抜け出してきたが……）」&lt;br /&gt;魔王　「（くっくっく……人間どもめ、間抜けな表情をさらしておるわ）」&lt;br /&gt;魔王　「（じきに俺に征服されるとも知らず……くっくっく）」&lt;br /&gt;魔王　「（さて、それはいいんだ……）」&lt;br /&gt;魔王　「（奴隷、奴隷……できるだけ生きのいい奴が良いな……）」&lt;br /&gt;魔王　「（すぐに死なれたらいたぶりがいがないというものだし……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２．奴隷商人　「さぁ、本日も異国の地から大量に入荷したよ！　見てって選んでください！！」&lt;br /&gt;奴隷達　「…………」&lt;br /&gt;魔王　「（ほう、人間はこうやって奴隷を売り出すのか）」&lt;br /&gt;魔王　「（側近は、止めたほうがいいと言っていたが……）」&lt;br /&gt;魔王　「（鎖につながれて、まるで家畜ではないか……）」&lt;br /&gt;魔王　「（てゆうか隣の大陸の魔王、ずいぶんとがんばってるな……）」&lt;br /&gt;魔王　「（こっちは大魔王に怒られて、予算を３０％カットされたばかりだというのに……）」&lt;br /&gt;魔王　「（くそっ、今に隣の大陸にも大量に奴隷を送れるくらいの魔王にならなければ……）」&lt;br /&gt;魔王　「（だがその前に奴隷奴隷……）」&lt;/p&gt;&lt;p&gt;３．魔王　「（しかし本当にひどいな……）」&lt;br /&gt;魔王　「（同じ人間のくせに、よくやる）」&lt;br /&gt;魔王　「（…………）」&lt;br /&gt;魔王　「（どいつもこいつも生気のない目をしおって……ええい！）」&lt;br /&gt;魔王　「（この大陸の勇者とやらはいったい何をやっているんだ！）」&lt;br /&gt;魔王　「（……ん？　いいのか。こいつらは人間だしな）」&lt;br /&gt;魔王　「（しかし、人間が人間に値段をつけて競りをしているというのも異様な光景だな）」&lt;br /&gt;魔王　「（今度モンスター軍にも同じ制度を取り入れてみようかな……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４．魔王　「（何だ？　あの奴隷だけ妙に安いな……）」&lt;br /&gt;奴隷商人　「さぁさぁ、まだ小さな子供ですが、小間使いとして使うには十分でしょう！」&lt;br /&gt;奴隷商人　「今なら驚きの５０ゼニー！　５０ゼニーから開始です！」&lt;br /&gt;魔王　「（誰も買う気配がないな……）」&lt;br /&gt;魔王　「（というか、あんな子供を売りに出して、人間は心が痛まぬのか……）」&lt;br /&gt;魔王　「（やはりこの大陸は、俺が責任を持って征服すべきだな……）」&lt;br /&gt;魔王　「…………」&lt;br /&gt;奴隷少女　「…………」&lt;br /&gt;魔王　「（薄汚れてやせている。ろくにものも食べていない証拠だ）」&lt;br /&gt;魔王　「（生きがいいとは程遠いな……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５．魔王　「…………」&lt;br /&gt;奴隷商人　「それでは、落札なしということでよろしいでしょうか！？」&lt;br /&gt;奴隷商人　「仕方ない！　それでは３０ゼニーまで開始価格を落としましょう！！」&lt;br /&gt;魔王　「（３０ゼニー？　パン一斤と同じくらいではないか）」&lt;br /&gt;魔王　「（お得だな……）」&lt;br /&gt;魔王　「（今月の俺のお小遣いでも、十分遊べるくらいの金額が残る）」&lt;br /&gt;魔王　「（最近側近の奴、経費削減の余波でお小遣いまで減らしおったからな……）」&lt;br /&gt;魔王　「（あいつもオークションにかけてやろうか……）」&lt;br /&gt;奴隷商人　「３０ゼニー！　３０ゼニーから再開始です。どなたか入札される方はいらっしゃいませんか！？」&lt;br /&gt;奴隷少女　「…………」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６．魔王　「（しかしなぁ……あんな、いかにもすぐ死にそうな奴隷を買ってもな……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「けほっ……けほっ……」&lt;br /&gt;魔王　「（それにあれは病気だ。あんなの、当初の目的とは違うし……）」&lt;br /&gt;魔王　「（理想はちょっとやそっとでは死なない程度なんだが……）」&lt;br /&gt;魔王　「（………………）」&lt;br /&gt;魔王　「（ここで買われなかった奴隷はいったいどこに行くんだろう……）」&lt;br /&gt;魔王　「（側近もそこまでは教えてくれなかったが……）」&lt;br /&gt;魔王　「（人間は野蛮だ。何をするか分からんぞ。何せ同じ人間を売りに出す奴らだ……）」&lt;br /&gt;魔王　「（うぅむ）」&lt;br /&gt;奴隷商人　「それでは、落札なしということで……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;７．奴隷少女　「…………」&lt;br /&gt;魔王　「（目……）」&lt;br /&gt;魔王　「（あの、目…………）」&lt;br /&gt;魔王　「………………」&lt;br /&gt;魔王　「待て、私が落札しよう」&lt;br /&gt;　＞ざわざわ&lt;br /&gt;奴隷商人　「えぇ！？　…………よ、よろしいんですか？」&lt;br /&gt;魔王　「何がだ？　やはり３０ゼニーのお得感は拭えんしな（ごそごそ）」&lt;br /&gt;魔王　「ほら、金だ。その奴隷をよこせ」&lt;br /&gt;奴隷商人　「お……お買い上げありがとうございます～（カランカラン）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「………………」&lt;br /&gt;魔王　「何をしている、ほら、いくぞ」&lt;br /&gt;魔王　「（衝動的に買ってしまった……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;８．奴隷少女　「ほ、本当に……けほっ」&lt;br /&gt;奴隷少女　「私で、いいんですか……？」&lt;br /&gt;魔王　「……？」&lt;br /&gt;奴隷少女　「私、病気ですし…………それに……何のお役にも……」&lt;br /&gt;魔王　「病気？　ほら（ズキュゥゥゥン）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（ビクッ）…………！！」&lt;br /&gt;魔王　「一時的だが楽になったはずだ。キリキリ歩け。少し離れたらルーラ使うから」&lt;br /&gt;奴隷少女　「の……喉の痛みが止まった……あなた様は……？」&lt;br /&gt;魔王　「何、俺の魔力を少しお前に分け与えただけだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;９．―魔王城―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;側近　「魔王様！　魔王様！　……まったく……今期の売り上げ（支配率）も伸び悩んでいるというのに……」&lt;br /&gt;側近　「定例会議をすっぽかしてどこに行かれたのか……」&lt;br /&gt;魔王　「（シュン）ただいま」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（シュン）……！！！？」&lt;br /&gt;側近　「あぁ魔王様！　今までどこに……」&lt;br /&gt;側近　「大魔王様から連絡がありまして、やっぱり今期の予算は３５％カットということに……」&lt;br /&gt;側近　「やや……！！　それは……！」&lt;br /&gt;側近　「人間！！！！」&lt;br /&gt;奴隷少女　「きゃぁぁ！！　モンスター！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１０．魔王　「何だ、今まで平気だったではないか（ズォォ）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「！！　あなたは……もしかして……」&lt;br /&gt;魔王　「いかにも。この大陸の魔王である」&lt;br /&gt;奴隷少女　「………………！！　……！！」&lt;br /&gt;側近　「魔王様、あれほど奴隷などおやめなさいと言ったではないですか！」&lt;br /&gt;側近　「ただでさえ予算のやりくりが厳しいというのに、無駄遣いはおやめくださいと……」&lt;br /&gt;魔王　「無駄遣いではないぞ。これは３０ゼニーで買ってきた」&lt;br /&gt;側近　「３０ゼニー！？」&lt;br /&gt;魔王　「お得だろ？」&lt;br /&gt;側近　「確かにお得ですが……人間なんて中に入れてどうするつもりで……？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１１．魔王　「うむ。我が魔王城にだが、俺以外にまともな人間タイプの部下がいないではないか」&lt;br /&gt;側近　「確かにそうですが……」&lt;br /&gt;魔王　「そのせいでほら……」&lt;br /&gt;奴隷少女　「じゃ……じゃあ、ここが魔王城…………」&lt;br /&gt;魔王　「いかにも」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（その割には薄汚れているような……というかこれはむしろ廃墟……）」&lt;br /&gt;魔王　「ごらんの有様だ」&lt;br /&gt;魔王　「最近この大陸には勇者らしい勇者も現れず、かといって征服が進むといえば進まない、そんな微妙な状態だ」&lt;br /&gt;魔王　「我が城の予算もカットされていき、城内の宝箱の数も激減している」&lt;br /&gt;魔王　「そこで、安価な人間の奴隷を連れてきて、掃除をさせようと考えたわけだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１２．奴隷少女　「そ……掃除……？」&lt;br /&gt;魔王　「何かおかしいか？」&lt;br /&gt;奴隷少女　「その……ご主人様……は、魔王様なんですよね……？」&lt;br /&gt;魔王　「いかにも。俺がこの大陸の魔王である」&lt;br /&gt;奴隷少女　「魔王様が……掃除……？　私を、食べるとかじゃなくて……？」&lt;br /&gt;魔王　「バカにするな。何故俺が人間などを食わなければいけない」&lt;br /&gt;側近　「その通りです。モンスターは基本雑食ですが、闇の気を吸収しておけば死なないのです」&lt;br /&gt;魔王　「まぁ、俺はその中でもエリートだから、普通に食事をすることも出来るが」&lt;br /&gt;魔王　「いうなれば、悪さをすればするほど満腹になるからな」&lt;br /&gt;魔王　「人間なんて食らっても何のメリットもないわ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１３．奴隷少女　「それで、私に掃除を……」&lt;br /&gt;魔王　「うむ……」&lt;br /&gt;魔王　「このままでは、いくらこの大陸の勇者がショボいといっても、ここにたどり着いてラストダンジョンだと思えぬだろ」&lt;br /&gt;側近　「加えて魔王様は大の掃除嫌いなのだ」&lt;br /&gt;魔王　「貴様らが給料分働かないからだろうが！」&lt;br /&gt;側近　「我々の体は掃除が出来るように出来ていませんので」&lt;br /&gt;側近　「しかし……こんなやせこけたみすぼらしい人間に、魔王城のリフレッシュなんぞできるのでしょうか……」&lt;br /&gt;奴隷少女　「………………」&lt;br /&gt;魔王　「うむ……しかしまぁ、買ってきちゃったものは仕方ないだろう」&lt;br /&gt;側近　「（はぁ……）魔王様はいつもそれですな……」&lt;br /&gt;奴隷少女　「…………」&lt;br /&gt;魔王　「どうした？　恐ろしさで声もでないか」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１４．奴隷少女　「い……いいえ……意外と、魔王様たちって……」&lt;br /&gt;奴隷少女　「人間っぽいんだなぁって……驚いていました」&lt;br /&gt;側近　「貴様……無礼であろう！　下賎な人間などと私たちを一緒にするな！！」&lt;br /&gt;奴隷少女　「す……すみません！！　すみません！！」&lt;br /&gt;魔王　「まぁいい。とりあえず、そのみすぼらしい外見とかをどうにかしよう」&lt;br /&gt;魔王　「ふんッヌッ！　ハァァ！！」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（ポンッ！）……！！！！」&lt;br /&gt;奴隷少女　「私が……魔王様のような服に……」&lt;br /&gt;魔王　「厨房などもある。勝手に掃除して勝手に食事をするがいい」&lt;br /&gt;魔王　「さて……今日も元気に征服活動をするか……（ふぁぁぁ）」&lt;br /&gt;側近　「魔王様、もう幼稚園の馬車を襲う活動はマンネリ気味かと……」&lt;br /&gt;魔王　「そうか？　……他に何を襲えというんだ？」&lt;br /&gt;側近　「もう少し征服の幅を広げてみてはどうでしょうか……」&lt;br /&gt;魔王　「あれが一番効率がいい闇の気の集め方なんだよな……被害も少ないし……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１５．奴隷少女　「（本当に、ここってあの魔王城なのかしら……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（その割には汚いし……なんかほのぼのしてるし……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（…………おなかすいた…………）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（魔王様……行っちゃったし……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（とりあえず、私、買われたんだよね……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（なら、お仕事をしなきゃ……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（厨房を勝手に使えって、魔王様は仰ってたけれど……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（厨房ってどこかしら……）…………（とぼとぼ）」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「………………」&lt;br /&gt;奴隷少女　「………………」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「誰や？」&lt;br /&gt;奴隷少女　「！！　石像がしゃべった！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１６．ガーゴイル　「そりゃガーゴイルやもん。喋るわ」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「何や、今度はえろう貧相な勇者やな。ん……？　なしておめぇ、魔王様の印がついた服を着てるんや？」&lt;br /&gt;奴隷少女　「あ……あの、違うんです。私、ついさっき魔王様に……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「………………ふむ、ふむ。この魔王城のリフレッシュをなぁ」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「まぁ、せいぜいがんばり」&lt;br /&gt;奴隷少女　「あ……はい……（投げやりだ……）」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「ここ数年、まともな勇者がここまでたどり着くってことがないからよぉ」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「すっかり魔王城も平和なんだわ」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「オイラなんて、やることなくてコレ、背中の骨もバッキバキやぞ（ボキボキ）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（動くんだ……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（普通ならここで驚いて大騒ぎするんだろうけれど……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（……不思議と、ぜんぜん怖くないや……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（もう私、病気治らないからかな……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（何でも来いって感じになっちゃったのかも……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１７．ガーゴイル　「で、何してたん？」&lt;br /&gt;奴隷少女　「あ……まず厨房からお掃除しようと思って……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「厨房？　それならこっちや。ついてき（ズン、ズン）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「あ、ありがとうございます」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「しっかし魔王様が人間をなぁ。けったいなことをするお方や」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「人間は弱いし、卑怯だし、どうしようもない愚図ばっかやねん」&lt;br /&gt;奴隷少女　「…………そう、ですね……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「お、殊勝なことやな。自分の立場というものをわきまえてんな」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「ここや」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（うっ……何年も使ってないみたい……それにこれ、水道から本当に、お水出るのかな……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（キュ）………………（キュボボボボ）……（茶色い水が出た……！！）」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「食材は……まぁ腐ってるだろうから、適当に無事そうな乾物でも使えや」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１８．奴隷少女　「あ……あの、一応この魔王城のお掃除係の方とかっていらっしゃるんですよね？」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「いねぇぞ」&lt;br /&gt;奴隷少女　「！？」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「俺らは勇者を倒すのが仕事やからな。しっかし、ここ最近とんとその仕事もねぇ」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「人間が腑抜けちまってるんや」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「そのせいで、いっつも腹の虫が鳴りっぱなしよ」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「あ゛ー、俺も幼稚園の馬車襲撃班にまわしてもらおうかな……」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（何で幼稚園の馬車限定なんだろう……）」&lt;br /&gt;奴隷少女　「あ……それじゃ、私ここ片付けますので……」&lt;br /&gt;奴隷少女　「何か作ったら、お食べになりますか？」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「人間が作ったもんを？　ケェ。ま、味見くらいならしてやらんでもないねん」&lt;br /&gt;奴隷少女　「ええ。それじゃ、片付けはじめます」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;１９．―しばらく後―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;ガーゴイル　「Ｚｚｚ……ハッ！　いかんいかん寝てしもうた」&lt;br /&gt;奴隷少女　「あ、おはようございます」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「！　これは……！！　足の踏み場もなく、蜘蛛の巣の巣窟だった食堂が……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「移動できる空間になっちょる！」&lt;br /&gt;奴隷少女　「ふぅ……さすがにちょっと疲れました……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「オイラ人間ナメてたわ。ちょっとこっち来ィ」&lt;br /&gt;奴隷少女　「はい？」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「（撫で撫で）あんさん……グッドやで……！！」&lt;br /&gt;奴隷少女　「あ……ありがとう……ございます……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「？　何真っ赤になっとんのや？」&lt;br /&gt;奴隷少女　「そ、その……人からほめていただくっていうの、産まれて初めてなんで……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２０．ガーゴイル　「人やない、魔族や」&lt;br /&gt;奴隷少女　「あ……ごめんなさい……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「しっかしこりゃ、普通に使えるくらいにはなったな。中々やるやないか人間。見直したで」&lt;br /&gt;奴隷少女　「干し肉と干し魚でスープも作ってみたんです。どうでしょう？」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「ケェ。別に俺らァ食わんともイケるんだが……（グビリ）」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「うんめェェ～～～ッ！！」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（ニコッ）良かった」&lt;br /&gt;魔王　「ふぁぁぁ……あ゛っ！　今日も元気に幼稚園の馬車を襲ったな」&lt;br /&gt;側近　「王家の警備隊が到着するまでの逃走記録の時間更新ですね。いつもより三分四十秒早く逃げることが出来ています」&lt;br /&gt;ドラゴン　「勝利もへったくれもねぇと思いますが……（ズシン、ズシン）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２１．魔王　「！　これは……！！」&lt;br /&gt;奴隷少女　「あ、ご主人様おかえりなさいませ」&lt;br /&gt;魔王　「いかんいかん、一瞬ルーラが暴発したのかと思ったぞ」&lt;br /&gt;側近　「ほほう。これはこれは。あの廃墟がここまで復旧するとは」&lt;br /&gt;ドラゴン　「ヘェ、あんたが魔王様が言ってた掃除婦か。俺っちはドラゴン。あとで俺っちの部屋も片付けてくれ」&lt;br /&gt;奴隷少女　「（お……おっきい……）は…………はい…………」&lt;br /&gt;魔王　「しかしこれはうれしい誤算だった。まさか少女がここまで使えるとは……」&lt;br /&gt;奴隷少女　「前のお屋敷では、同じようなことをしていましたから……」&lt;br /&gt;側近　「３０ゼニーのもとは取れましたね」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「うんめぇぇ～～～ッ（ズバズバ）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２２．魔王　「うむ、美味いな（グビグビ）」&lt;br /&gt;側近　「魔王様！　そんなはしたない……」&lt;br /&gt;魔王　「今日のところは掃除はこれくらいでいいだろう。メシにするぞ」&lt;br /&gt;ドラゴン　「最近幼稚園児達も怖がらねぇから、闇のエナジーが集まらなくて困ってたんだ。助かるぜ」&lt;br /&gt;側近　「ですから幼稚園の馬車襲撃はマンネリ化も著しいと言っているではないですか」&lt;br /&gt;側近　「私たちは大陸を征服しなければいけないんですよ」&lt;br /&gt;側近　「大魔王様からも、そんなどこかの秘密結社のような真似はやめるようにといわれていますし……」&lt;br /&gt;魔王　「しかし、現状の戦力では表立って戦争をする気も起きんしなぁ」&lt;br /&gt;魔王　「おい少女、何をしている。食事の支度だ。ワインを開けろ。勝利の美酒といこう」&lt;br /&gt;ドラゴン　「幼稚園の馬車ガタガタ揺らしてきただけですけどな……」&lt;br /&gt;少女　「は……はい、ただ今……！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２３．ガーゴイル　「ふぅ、うんめぇかった。おめぇさんはなして奴隷なんて売りにだされてたんや？」&lt;br /&gt;少女　「私は……その、病気で……」&lt;br /&gt;少女　「お館様が、使えないメイドは要らないと……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「ケェ。人間の世界はシビアやな！　まだ十分使えるじゃねぇかや」&lt;br /&gt;ドラゴン　「（グビッ）このスープイケるぜ」&lt;br /&gt;魔王　「…………」&lt;br /&gt;魔王　「（まただ……）」&lt;br /&gt;魔王　「（また、あの目だ。どこかさびしそうで、全てを諦めているかのような目……）」&lt;br /&gt;魔王　「（俺たち魔族を目の前にしても、全く動じることもない……）」&lt;br /&gt;魔王　「（病気だと言っていた。俺の魔力を与えても、具合があまりよさそうに見えないのはそのせいか……）」&lt;br /&gt;魔王　「（まぁ、少し様子を見てみるか……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２４．―城―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;国王　「……というわけで、小悪党どもがのさばっていて、困っているのだ」&lt;br /&gt;国王　「今日も幼稚園の馬車が襲撃された……」&lt;br /&gt;勇者　「何だと……？　こっちの魔王はそんな小さな子供まで手にかけるほど卑劣なのか……！！」&lt;br /&gt;勇者　「くっ……平和な町だとばかり思っていたが、見落としていた……！！」&lt;br /&gt;国王　「い、いえ、実害はほとんどないのですが……」&lt;br /&gt;勇者　「その卑劣な魔王軍は、幼稚園の馬車を襲ってどうするんです！？」&lt;br /&gt;国王　「……目撃者によると、ただガタガタと馬車を揺らし、周りを囲み奇妙な踊りを踊り狂ってから、脱兎のように逃げさるという……」&lt;br /&gt;勇者　「…………ただ、揺らすだけですか？」&lt;br /&gt;国王　「ただ、揺らすだけだ……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２５．―城下町―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;戦士　「おい勇者、くだらねーぜ。国王様は冗談でも言ってるんじゃないか？」&lt;br /&gt;勇者　「しかし気になる……仮にも魔王だぞ？　それがそんな行動をとるからには、何らかのわけがあるんじゃないか？」&lt;br /&gt;僧侶　「考えすぎよ。適当にあしらって、次の大陸に行きましょう」&lt;br /&gt;武道家　「そうそう。幼稚園の馬車しか狙わないような小悪党を相手にしても、時間の無駄だよ」&lt;br /&gt;武道家　「何せボクたち、隣の大陸の魔王を倒した、伝説の勇者一向なんだからね」&lt;br /&gt;僧侶　「こんなくだらない案件にかかずらわっている暇はありません。私たちの助けを待っている人は、たくさん世の中にいるのです」&lt;br /&gt;勇者　「君達は何を言っているんだ？」&lt;br /&gt;戦士　「勇者？」&lt;br /&gt;勇者　「たとえそれが幼稚園の馬車襲撃だとしても、モンスターの存在を許すことは出来ない。見ろ！」&lt;br /&gt;勇者　「あの遠くに見える魔王城。あれがある限り、人々は安心して過ごすこともできないだろう」&lt;br /&gt;僧侶　「別にここの人たちは、何の脅威もなく過ごしてるような気もしますけれど……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２６．勇者　「とにかく、この大陸の魔王ももれなく倒していこう。少ないとはいえ、国王も賞金を出してくださるそうだ」&lt;br /&gt;戦士　「ま……勇者がそう言うんなら仕方ねーな」&lt;br /&gt;僧侶　「しかし……幼稚園の馬車しか狙わないなんてどこかの秘密結社みたいですねぇ」&lt;br /&gt;武道家　「魔王軍も色々、財政状態とか厳しいんじゃないかな。隣の魔王は羽振り良かったけどね」&lt;br /&gt;戦士　「全くだぜ。城の中の宝箱の数が半端なかった。その分、モンスターどもものさばりまくってたがな」&lt;br /&gt;戦士　「見たところこっちの大陸は、支配率２％も行ってねーんじゃねぇか？」&lt;br /&gt;戦士　「みんなあの魔王城スルーしてるし……」&lt;br /&gt;戦士　「とっとと行って、とっとと倒してこようぜ」&lt;br /&gt;勇者　「ああ。明日の朝出発しよう」&lt;br /&gt;勇者　「（卑劣な魔王め……俺はだまされんぞ……！）」&lt;br /&gt;勇者　「（何かしらの秘密があるに違いない。暴いてやる……！！）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２７．―魔王城―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;少女　「うーん……うーん………………」&lt;br /&gt;魔王　「（うなされている……やはり、病気か……）」&lt;br /&gt;魔王　「（スッ）」&lt;br /&gt;少女　「（シュワワワワワ）………………すぅー……すぅー……」&lt;br /&gt;魔王　「こうやって魔力を分け与えることくらいしか出来ぬが……」&lt;br /&gt;側近　「見たところ、肺に何かの腫瘍を持っているようですな」&lt;br /&gt;魔王　「！　側近！」&lt;br /&gt;側近　「ふふふ、魔王様も隅に置けぬものです。まさか人間の娘を気にかけるとは……」&lt;br /&gt;魔王　「……ふんッ。あたらしい掃除婦が、すぐに使えなくなったら、俺のお小遣いが無駄になるではないか」&lt;br /&gt;側近　「そのことなのですが魔王様、予算３５％カットにつき、魔王様のお小遣いも、今月から５割カットさせていただきます」&lt;br /&gt;魔王　「！！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２８．魔王　「…………くっ…………！　大魔王め……！！」&lt;br /&gt;魔王　「金がなきゃ何も出来ないっつーの！」&lt;br /&gt;魔王　「モンスターへの給料もタダじゃないんだよ……！！！」&lt;br /&gt;側近　「魔王様……非常に申し上げにくいことなのですが……」&lt;br /&gt;側近　「大魔王様は、もうこの大陸の支配をお諦めになっているのではないでしょうか……」&lt;br /&gt;魔王　「！！　そ……そそ、そんなことはない。俺は大魔王様の第一皇子だぞ……」&lt;br /&gt;側近　「魔王様、声が裏返っておりますぞ」&lt;br /&gt;魔王　「………………」&lt;br /&gt;側近　「大魔王様は、大魔界に帰って来いと仰っております。この辺で潮時ではないでしょうか……」&lt;br /&gt;側近　「連日、襲える幼稚園の馬車も少なくなってきております」&lt;br /&gt;側近　「これ以上を求めると、味方にも損害が出てくるでしょう」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;２９．側近　「大魔王様の『楽して征服』計画では、味方の損害ゼロとなっておりますが……」&lt;br /&gt;側近　「やはり、人間達を支配するにはそれ相応の闇のエナジーを集めなければいけません」&lt;br /&gt;側近　「そうすると、もっとグレードの高い『悪いこと』をする必要が出てくると思われます」&lt;br /&gt;魔王　「ふむぅ……」&lt;br /&gt;側近　「何ですか、そのやる気のないお返事は」&lt;br /&gt;魔王　「いや……戦争は大魔界で嫌というほどやってきたからなぁ」&lt;br /&gt;魔王　「このまま地道に闇の力を集めていくってわけにはいかないのか？」&lt;br /&gt;側近　「今日なんて幼稚園児、大喜びでしたから……」&lt;br /&gt;側近　「闇の力というよりは、太陽の力が集まっていましたよ……」&lt;br /&gt;魔王　「マジでか……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３０．側近　「（魔王様……あなたは優しすぎる……）」&lt;br /&gt;側近　「（確かにあなた様の魔法力は膨大で、力もお強いが……）」&lt;br /&gt;側近　「（やはり大王様はお気づきになっていらっしゃる。魔王様が人間を征服するおつもりがないことに……！！）」&lt;br /&gt;側近　「（ただ、大魔界から逃げて人間界でバカンスを楽しんでいるだけだということに……！！）」&lt;br /&gt;側近　「（しかしこのままではいずれ、強力な勇者が来たときに太刀打ちが出来なくなってしまう）」&lt;br /&gt;側近　「（魔王様お一人で撃退できるかどうか……）」&lt;br /&gt;側近　「（やはりもっと悪いことをして、闇の力を集めなければ……）」&lt;br /&gt;魔王　「ふぅむ……確かに、もう少し悪さのグレードを上げなければ、モンスター達も育たないな」&lt;br /&gt;魔王　「（しかしそうすると人間達が……）」&lt;br /&gt;魔王　「（俺は大魔界で、父上が全てを焼き払い、全てをなぎ倒すのを幾度となく見てきた）」&lt;br /&gt;魔王　「（そんな土地を手に入れても仕方がない）」&lt;br /&gt;魔王　「（俺が欲しいのは、人間がこのまま暮らせて、俺が最頂点に君臨できる土地なんだ……）」&lt;br /&gt;魔王　「（俺のリゾート地に出来るような土地なんだよ……！！）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３１．魔王　「（だがこのままでは、確かに大魔界に帰らなきゃいけなくなるな……）」&lt;br /&gt;魔王　「（何かしらの結果を残さなければ……）」&lt;br /&gt;少女　「うーん……」&lt;br /&gt;少女　「ハッ！　魔王様……！　それに側近さんも……」&lt;br /&gt;魔王　「ン、すまない。うなされていたようなのでな」&lt;br /&gt;少女　「す、すみません……ベッドなんて久しぶりで……」&lt;br /&gt;魔王　「寝ていて良い。今は勤務時間外だ。気にすることはない」&lt;br /&gt;魔王　「お前のおかげで、ここ最近の魔王城は見違えるように綺麗になった」&lt;br /&gt;魔王　「感謝をしてやらんこともない」&lt;br /&gt;少女　「そ……そんな、ありがたいお言葉です……」&lt;br /&gt;少女　「あれ……何だろ……」&lt;br /&gt;魔王　「（涙……？　泣いているのか？）」&lt;br /&gt;魔王　「どうした？　どこかが痛むのか？」」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３２．少女　「どうして……魔王様は、そんなに優しいのですか？」&lt;br /&gt;魔王　「やさしい？　俺がか？」&lt;br /&gt;少女　「（コクリ）」&lt;br /&gt;少女　「私は、今までこんな風に誰かに心配されたことがありませんでした……」&lt;br /&gt;少女　「いつも、叩かれて怒鳴られていた記憶しかないんです……」&lt;br /&gt;少女　「病気になったら、売りに出されてしまいましたし……」&lt;br /&gt;少女　「でも、魔王様はそんな私を買ってくださって、魔力まで分け与えて病気を抑えてくださっています」&lt;br /&gt;少女　「どうして……？　人間は、魔王様達の敵でしょう？」&lt;br /&gt;少女　「そう考えたら、どうしてか涙が出てきちゃって……」&lt;br /&gt;魔王　「………………」&lt;br /&gt;魔王　「フンッ！　勘違いするな！」&lt;br /&gt;少女　「！」&lt;br /&gt;魔王　「お前は俺の城の掃除婦だ。貴重なお小遣いをはたいて買ってきた俺のものだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３３．魔王　「別に心配しているわけではないわ。図に乗るでない」&lt;br /&gt;少女　「ご……ごめんなさい……」&lt;br /&gt;魔王　「………………」&lt;br /&gt;少女　「………………」&lt;br /&gt;魔王　「ま、まぁ。もし勇者が乗り込んできた時、魔王城がしょぼかったら、俺の威厳にもかかわるからな」&lt;br /&gt;魔王　「貴様には、どんどんこの城をリフレッシュしていってもらいたい」&lt;br /&gt;少女　「…………私なんかで、本当によろしいんですか？」&lt;br /&gt;魔王　「それより貴様は、人間なのに魔族の俺たちに協力していることに気兼ねはないのか？」&lt;br /&gt;少女　「………………」&lt;br /&gt;少女　「気兼ねなんて、ないです」&lt;br /&gt;少女　「だって、魔王様はとてもお優しい方ではありませんか……」&lt;br /&gt;魔王　「！！　うわっ、今ゾクッとした……」&lt;br /&gt;側近　「魔王様！」&lt;br /&gt;魔王　「やめろ、これ以上俺に向かってやさしいとか言うな。じんましんが出てくる！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３４．魔王　「フンッ！　そこまで言うならいいだろう。とびっきりの悪いことをしてきてやる」&lt;br /&gt;魔王　「それを見て、まだ貴様がなめた口を叩けるかどうか見ものだな！」&lt;br /&gt;少女　「とびっきりの……」&lt;br /&gt;側近　「悪いこと？」&lt;br /&gt;側近　「魔王様、しかし今日の定例会議では、今度は小学校の送迎馬車を襲撃すると宣言されたばかりではないですか」&lt;br /&gt;魔王　「ふふ……それしきのことではこの人間の鼻はあかせんだろう」&lt;br /&gt;魔王　「俺を優しいといったことをたっぷりと後悔させてくれるわ！　ふはっはっは！！」&lt;br /&gt;側近　「あぁ……行ってしまわれた。何をされるおつもりなのか……」&lt;br /&gt;少女　「私、何か悪いことを言ってしまったのでしょうか……」&lt;br /&gt;側近　「魔族の皇子である魔王様に、『優しい』という言葉は禁句だ。残虐の申し子と大魔界では言われてらっしゃったからな……」&lt;br /&gt;少女　「残虐の申し子……！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３５．魔王　「（さて……とびっきりの悪いことと言ったが、一体何をやるべきか……）」&lt;br /&gt;魔王　「（国王でも脅かしてくるか……）」&lt;br /&gt;魔王　「（いや、でも王宮には行ったことがないからルーラは使えないし……）」&lt;br /&gt;魔王　「（戦争の宣言をするのもなぁ……）」&lt;br /&gt;魔王　「（予算が３５％もカットされてるから、フィールドにモンスターを放つのも最小限にしてるし……）」&lt;br /&gt;魔王　「（いざ戦うとなったら、俺一人で戦うことになるんだろうが……）」&lt;br /&gt;魔王　「（俺が……戦う……）」&lt;br /&gt;魔王　「（またあの業火と叫び声の中で、力を振るいまくるのか……）」&lt;br /&gt;魔王　「（助けを求める声……恐怖の叫び声……）」&lt;br /&gt;魔王　「（そうだ、あの目だ……）」&lt;br /&gt;魔王　「（俺は、あの少女のあの目と同じ目を、大魔界でたくさん見てきた……）」&lt;br /&gt;魔王　「（全てを諦めた、無気力で投げやりな瞳……）」&lt;br /&gt;魔王　「（なんとも嫌な瞳だ……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３６．―次の日、朝―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;少女　「（魔王様、昨日は『とびっきりの悪いこと』をするって仰ってたけれど……）」&lt;br /&gt;少女　「（いったい何をされるつもりなんだろう……）」&lt;br /&gt;少女　「（ていうか……どうして幼稚園の馬車ばっかり襲ってるんだろう……）」&lt;br /&gt;少女　「（魔王様なら、もっと大掛かりに……）」&lt;br /&gt;少女　「（何か、思うところがおありなのかもしれないわ……）」&lt;br /&gt;少女　「（あんなに優しい方なんですもの……）」&lt;br /&gt;少女　「（私の、前いたお屋敷は隣の魔王の襲撃で崩れてしまったけれど……）」&lt;br /&gt;少女　「（それからのことの方が、私には……）」&lt;br /&gt;少女　「（…………）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３７．ガーゴイル　「おいおいどうしたぃ。浮かない顔やな」&lt;br /&gt;少女　「ガーゴイルさん……」&lt;br /&gt;少女　「ね、魔王様って、この大陸の征服活動をされてるんでしょう？」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「ん～……征服っつぅか、バカンスっつぅか……」&lt;br /&gt;少女　「バカンス！？」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「あぁ。もともとオイラ達ァ、大魔界から大魔王様に派遣されてきてんねん」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「魔王様は戦うとめっちゃ強いねんけど、好きなものはゲームと玩具や」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「あの方は、図体はでかいが心は子供のままなんだよ」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「そういう呪いをお持ちでいらっしゃる」&lt;br /&gt;少女　「呪い……」&lt;br /&gt;少女　「（私の病気と……同じだ……）」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「せやから、魔王様は魔王様で、征服するッつぅコトにいまいち気が進まないまま派遣に参加してな」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「ま。俺らもそんな魔王様が好きだからついてきてんねんけど」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「世の中キバってもしゃぁないで。気楽に気楽にが、楽に生きるモットーやねん」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３８．少女　「…………」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「どした？」&lt;br /&gt;少女　「私、隣の大陸で、別の魔王様が、人間に色々ひどいことをするのを見てきた……」&lt;br /&gt;少女　「でも、私、同じ人間にもたくさんひどいことをされた……」&lt;br /&gt;少女　「誰が悪いのかとか、ちょっとわからなくなっちゃった……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「なぁに言っとんねん」&lt;br /&gt;少女　「？」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「おいら達が悪いに決まってるやんか。なにせおいら達は魔族だぜ？」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「軟弱な人間なんかと一緒にするでねぇよ」&lt;br /&gt;少女　「…………」&lt;br /&gt;少女　「（くすり）そう……ですね」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;３９．ガーゴイル　「お、魔王様がお帰りになったで」&lt;br /&gt;少女　「（一体どんな悪いことをしてきたんだろう……）」&lt;br /&gt;魔王　「ふはっはっはっは！　コレを見ろ！（ドザァァァ！）」&lt;br /&gt;側近　「！　魔王様！　これは……！！」&lt;br /&gt;魔王　「コレだけの金銀財宝があれば、もはや俺をやさしいなどと言うことは出来ないだろう！」&lt;br /&gt;少女　「（す……すごい数の宝石……）」&lt;br /&gt;少女　「ま……魔王様、これをどこで……」&lt;br /&gt;魔王　「何、そういえばなければとってくればいいとふと思ってな」&lt;br /&gt;魔王　「王宮に変装して進入して、つめられるだけポケットに詰めてルーラで帰ってきたわけだ！」&lt;br /&gt;魔王　「ふはははは！！　貴様にこの悪行がまねできるか！！」&lt;br /&gt;少女　「（本当……まるで子供みたい……）」&lt;br /&gt;ドラゴン　「すげぇ……魔王様……いままでにねぇ悪行っぷりだぜ……（ゴクリ）」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「ああ……ついに魔王として覚醒されたんだ……（ゴクリ）」&lt;br /&gt;少女　「（やってることはコソドロじゃないかなぁ……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４０．少女　「でも確かに、これで魔王様の財政難は乗り切れますね」&lt;br /&gt;魔王　「ふははは！　何で今まで気がつかなかったのか！　さっさととってくればよかったのだ！」&lt;br /&gt;側近　「発想の盲点でした」&lt;br /&gt;魔王　「少女は早速これを魔王城の装飾に使え。残りは山分けだ」&lt;br /&gt;魔王　「くっくっく……人間どもめ。俺の力に今頃おびえ泣き叫んでいるだろう……」&lt;br /&gt;側近　「その割には闇のエナジーがあまり集まっていないような気がしますな……」&lt;br /&gt;魔王　「ん？　そういえばそうだな……」&lt;br /&gt;魔王　「何だ？　盗んできた量が少なかったのか？」&lt;br /&gt;少女　「（一応盗んできたっていう自覚はあったんだ……）」&lt;br /&gt;魔王　「だがあれ以上残ってたら誰かに見つかっちゃいそうだったからな……」&lt;br /&gt;魔王　「とにかく！　これで俺が邪悪だと証明できただろう！」&lt;br /&gt;魔王　「俺を崇め奉れ愚民ども！」&lt;br /&gt;モンスター達　「おおおおお！！」&lt;br /&gt;少女　「………………」&lt;br /&gt;少女　「（報復とか、大丈夫かなぁ……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４１．―城―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;王様　「ぬがぁぁ！　何だと！？　明らかに怪しげな男に、私のへそくり庫を破られただと！？」&lt;br /&gt;兵士　「す……すみません！　かなりの魔法の使い手だと見えて、見張りも全員ラリホーで眠らされてしまい……」&lt;br /&gt;王様　「きぃぃ！　言い訳など聞きたくもないわ！　お前たちは残りの財宝を数えるんじゃ！！」&lt;br /&gt;王様　「（まずい……まずいぞ）」&lt;br /&gt;王様　「（あれは、奴隷の人身売買で得た金じゃ……）」&lt;br /&gt;王様　「（いうなれば奴隷商人たちから上納された汚れた金……）」&lt;br /&gt;王様　「（本当なら禁止されている奴隷売買が裏通りで行われているのは、ほかならぬ私が黙認しているから……）」&lt;br /&gt;王様　「（そんな金が盗まれたと広まったら……）」&lt;br /&gt;王様　「（くそ！　小悪党め！！）」&lt;br /&gt;王様　「勇者！　勇者を呼べ！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４２．～しばらく後～&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;勇者　「何ですって！？　王家の隠し財産が、小悪党に盗まれてしまったんですか！？」&lt;br /&gt;王様　「う……うむ。至急取り戻してもらいたい。謝礼は十分しよう」&lt;br /&gt;王様　「目撃者の証言によると、やはりいつもの幼稚園の馬車を襲撃している、男のうちの一人だったということだ」&lt;br /&gt;王様　「あくまで秘密裏にことを進めて欲しい」&lt;br /&gt;勇者　「（謝礼金の額がいきなり跳ね上がった……）」&lt;br /&gt;勇者　「（昨日とはずいぶんと態度が違うな……）」&lt;br /&gt;王様　「で、では頼んだぞ！」&lt;br /&gt;勇者　「王様、その前に少しお聞きしたいことがあります」&lt;br /&gt;王様　「（ギクリ）な……何じゃ？」&lt;br /&gt;勇者　「ここに来る途中、人身売買の市場を見かけました」&lt;br /&gt;勇者　「王様はそれをご存知ですか？　確か、世界法で人身売買は禁止されていたと思うのですが……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４３．王様　「な……何？　それはけしからんことだ。すぐに言って中止させよう」&lt;br /&gt;勇者　「やはり同じ人が人を売り買いしているのは、見ていて気持ちがいいものではありません」&lt;br /&gt;勇者　「どうか迅速な対処を……」&lt;br /&gt;王様　「わ……分かった。この話はもうおしまいじゃ！（ツカツカ）」&lt;br /&gt;勇者　「………………」&lt;br /&gt;勇者　「金が盗まれた、か……」&lt;br /&gt;勇者　「（幼稚園の馬車を襲撃するような、気弱なモンスター達が、いきなり何故そのようなことを……）」&lt;br /&gt;勇者　「（何か考えがあるのか……それとも、何も考えないでのことなのか……）」&lt;br /&gt;勇者　「（まるで子供のいたずらにつき合わされているような気分だ……！！）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４４．―城下町―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;戦士　「ふん、多分汚れた金だぜ。だから慌てて回収に呼び出したんだ&lt;br /&gt;武道家　「ボク達が隣の魔王を滅ぼさなかったら、もっとひどいことになってたんだね……」&lt;br /&gt;戦士　「王家がそんな感じじゃ、モンスターよりタチが悪ィ」&lt;br /&gt;戦士　「モンスターは倒せば事足りるが、王家はそうもいかねぇだろ」&lt;br /&gt;僧侶　「そうですねぇ。勇者、どうするんです？」&lt;br /&gt;僧侶　「国王の依頼を、本当に受けるんですか？」&lt;br /&gt;勇者　「当然だ。王家の財産がモンスターに盗まれたことは間違いがないだろう」&lt;br /&gt;勇者　「俺たちは、世界中の魔王を倒して、平和な世界にすることが目的で行動している」&lt;br /&gt;勇者　「なら、目の前の敵はただ倒すのみだ」&lt;br /&gt;勇者　「…………」&lt;br /&gt;勇者　「（…………そうは言うが…………）」&lt;br /&gt;勇者　「（この国があまり裕福な国ではないことは確かだ）」&lt;br /&gt;勇者　「（それなのに、あれだけの量の謝礼金を出してくるというのは、単にモンスターに対する脅威だけではない……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４５．勇者　「（いや、むしろモンスターへというよりも何かがバレることを恐れるような……）」&lt;br /&gt;勇者　「（やはり戦士の言うとおりに、奴隷売買を国家は黙認しているということなのか……）」&lt;br /&gt;勇者　「（だとしたら、国王が取り戻そうとしているのは、奴隷売買で得た金の可能性がある……）」&lt;br /&gt;勇者　「（盗みは悪いことだ……だが、表立って騒ぎにならないのもおかしい……）」&lt;br /&gt;勇者　「（奴隷市場も、撤去される気配がない……）」&lt;br /&gt;　＞外（ザワザワ）&lt;br /&gt;　　奴隷商人　「さぁ、今日も生きのいいのが入ってるよ！　まずは１００ゼニーから！！」&lt;br /&gt;戦士　「……ちっ、嫌な街だ」&lt;br /&gt;戦士　「俺たちが必死こいて魔王を倒しても、あんなのが横行してるんじゃ、何のために戦ってるのか分かったもんじゃねぇぜ」&lt;br /&gt;勇者　「…………」&lt;br /&gt;勇者　「とにかく、今日中に魔王城に行こう。金を盗んだのならば、何かしらのたくらみがあるはずだ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４６．―魔王城―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;魔王　「（ふぅ。ノリで敵地に潜入してきたが……）」&lt;br /&gt;魔王　「（あんな軍勢と戦うのか……ちょっと厳しいな……）」&lt;br /&gt;魔王　「（見つからないかとドキドキものだったが、案外ラリホーを連発すればどうにかなるものだな……）」&lt;br /&gt;少女　「魔王様、お茶が入りました」&lt;br /&gt;魔王　「うむ」&lt;br /&gt;魔王　「……この魔王城も、だいぶラストダンジョンっぽくなってきたな」&lt;br /&gt;魔王　「部下達のやる気も、いつもとはちょっと違って少しは高いようだ」&lt;br /&gt;魔王　「貴様が来たおかげで、ずいぶんと周りも片付いてきた。もう少し誇ってもいいのだぞ」&lt;br /&gt;少女　「…………」&lt;br /&gt;魔王　「どうした、少女」&lt;br /&gt;魔王　「盗みもこなす俺に対する恐怖で口も開けぬか。はっははは！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４７．少女　「魔王様、やっぱり……盗みはいけないことだと思います」&lt;br /&gt;魔王　「！　いきなり何を言い出す？」&lt;br /&gt;少女　「幼稚園の馬車を襲っている間はいいと思います。でも、お金が絡めば人は変わってしまうものだと思うんです」&lt;br /&gt;少女　「王家のお金なら、なおさら……」&lt;br /&gt;魔王　「…………」&lt;br /&gt;少女　「一度、私が前にいた屋敷で、お金がなくなってしまったことがありました」&lt;br /&gt;少女　「使用人の中の誰かが盗んだのでしょうけれど……」&lt;br /&gt;少女　「お館様はとてもお怒りになって、全ての使用人に罰をお与えになりました」&lt;br /&gt;少女　「結局犯人は分からなかったのですが、金庫番をしていた子は売りに出されてしまいました……」&lt;br /&gt;少女　「盗みは……他の誰かが傷ついてしまう、そして誰かにゆがみをもたらしてしまうことなんだと思います」&lt;br /&gt;魔王　「……ふん」&lt;br /&gt;魔王　「貴様、何か勘違いをしていないか？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４８．少女　「勘違い……？」　&lt;br /&gt;魔王　「俺は魔王だぞ。いわば、悪いことをするのが仕事だ」&lt;br /&gt;魔王　「お前を助けたのは、ただの気まぐれに過ぎん。他の人間がどうなろうが知ったことか」&lt;br /&gt;魔王　「何せ俺は『悪い』悪魔だからな」&lt;br /&gt;少女　「そうでしょうか……」&lt;br /&gt;魔王　「……？」&lt;br /&gt;少女　「私には、魔王様は……そんなに悪い人には見えないんです」&lt;br /&gt;少女　「悪い人というよりは、さびしそうだなぁって……」&lt;br /&gt;少女　「そう、何となく思うんです」&lt;br /&gt;魔王　「俺が……さびしそう？　ふははは！　奇妙なことを言う」&lt;br /&gt;魔王　「魔族は基本的に一人だ。産まれてからも一人で育ち、自分で自分のことをなしていくのが仕事だ」&lt;br /&gt;魔王　「その中にさびしいなどという感情はないわ」&lt;br /&gt;魔王　「何せ、俺は強いからな！」&lt;br /&gt;魔王　「貴様ら脆弱な人間と一緒にするでない」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;４９．少女　「…………そう、ですね…………」&lt;br /&gt;少女　「何か、変なお話をしてしまいました。ごめんなさい……」&lt;br /&gt;魔王　「お茶が冷めてしまった。淹れなおせ」&lt;br /&gt;少女　「は……はい。ただ今（パタパタ）」&lt;br /&gt;魔王　「………………」&lt;br /&gt;魔王　「（俺が……寂しそう？　そうみえるのか……）」&lt;br /&gt;魔王　「（寂しい？　寂しいことなど、あろうはずがない）」&lt;br /&gt;魔王　「（俺は自分で何でもできる。世界征服だって……）」&lt;br /&gt;魔王　「（父上のように……）」&lt;br /&gt;魔王　「（…………父上のように…………）」&lt;br /&gt;魔王　「………………」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５０．少女　「（カシャァァン）…………ッ！！」&lt;br /&gt;少女　「ゲホッ！　ゲホッ！」&lt;br /&gt;魔王　「少女！　どうした！？」&lt;br /&gt;側近　「魔王様、今の音は……やや！！」&lt;br /&gt;側近　「少女殿！」&lt;br /&gt;少女　「ゲホ…………ゲホ…………」&lt;br /&gt;少女　「うう……」&lt;br /&gt;魔王　「これは……少女の口から血が……」&lt;br /&gt;魔王　「魔力を分け与えなければ……！（ズキュゥゥゥゥン）」&lt;br /&gt;少女　「…………ケホ…………ケホッ…………」&lt;br /&gt;魔王　「そ……側近、良くなる気配がないぞ……！！」&lt;br /&gt;側近　「魔王様、落ち着くのです。ガーゴイル！」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「ぁぃ、何でっしゃろか？　……！　少女はん！！」&lt;br /&gt;側近　「少女をそっとベッドに運ぶのだ」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「わ……分かりやした。おい少女はん、しっかりしぃや！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５１．～しばらく後～&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;魔王　「側近、それで……少女の容態はどうなんだ？」&lt;br /&gt;側近　「今までは魔王様の魔力で痛みが抑えられてはいましたが、それもあくまで一時的なものでして……」&lt;br /&gt;側近　「肺の中の腫瘍が大きくなって、呼吸が困難になっているようです」&lt;br /&gt;魔王　「くそっ……何とかならんのか……！！」&lt;br /&gt;側近　「ここまで進行してしまっては……それに、我ら魔族は病気などしない一族。医者はいないのです」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「少女はん、しっかりしぃや……あんさんがいなくなったら、誰がこの無法地帯を掃除するんだぃ」&lt;br /&gt;少女　「うう……う……」&lt;br /&gt;魔王　「くっ……人間の力を借りるしかないというのか……」&lt;br /&gt;魔王　「魔王であるこの俺が、人間の力を……」&lt;br /&gt;側近　「少女殿のこの最近の働きは目を見張るものがあります」&lt;br /&gt;側近　「廃墟同然だったこの魔王城も、少しは見れるようになって来ました」&lt;br /&gt;側近　「３０ゼニー分の元は十分もうとりましたが……」&lt;br /&gt;側近　「ここで失うには、あまりにおしい」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５２．魔王　「金ならある。どうにかして少女を治療してもらおう」&lt;br /&gt;ドラゴン　「俺からも頼みまさぁ。こいつの作る飯は結構美味いもんで」&lt;br /&gt;魔王　「ドラゴン……フッ。我ら魔族が総出で、人間の心配などをするとはな……」&lt;br /&gt;魔王　「皮肉なものだ……」&lt;br /&gt;魔王　「俺が変装して連れて行く」&lt;br /&gt;魔王　「お前たちは留守を頼む」&lt;br /&gt;側近　「魔王様お一人で……」&lt;br /&gt;魔王　「ええい！　ぐずぐずしている暇はないのだ！（バッ）」&lt;br /&gt;側近　「あ！　魔王様……！！」&lt;br /&gt;魔王　「（こうして背負うと、少女は軽いな……）」&lt;br /&gt;魔王　「（今までも無理をして動いていたのか……！！）」&lt;br /&gt;魔王　「（俺は、そんなことにも気づかず……）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５３．―城下町、夜―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;魔王　「ええい！　夜だろうがなんだろうが急患なんだぞ！　戸を開けろ愚民ども！！」&lt;br /&gt;医師　「すみませんねぇ……夜間診療所は街のはずれにしかないんで……」&lt;br /&gt;魔王　「貴様ら、それでもこいつと同じ人間か！　おい、こら！！」&lt;br /&gt;魔王　「…………」&lt;br /&gt;魔王　「（どいつもこいつも、急患だというのに扉を開けようともしない……）」&lt;br /&gt;魔王　「（いくら深夜だといっても、これは…………）」&lt;br /&gt;魔王　「（これが同じ人間のやることか……！！）」&lt;br /&gt;魔王　「（人間を売り、人間を見捨てて、それで自分だけはのうのうと生きていくのか……！！）」&lt;br /&gt;魔王　「（くそっ……人間め……！！）」&lt;br /&gt;魔王　「（やはり……この俺の力で征服を……）」&lt;br /&gt;少女　「ン…………」&lt;br /&gt;魔王　「少女！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５４．少女　「ここは…………」&lt;br /&gt;魔王　「しっかりしろ。今病院とやらに連れて行ってやる」&lt;br /&gt;少女　「魔王様……私をおぶって…………」&lt;br /&gt;少女　「（汗だくで……ずいぶんと歩き回ってくださったんだ…………！！）」&lt;br /&gt;少女　「ひ……一人で歩けます……」&lt;br /&gt;魔王　「無茶をするな（グイッ）」&lt;br /&gt;魔王　「お前は大事な、俺のお小遣いで買った奴隷なんだ」&lt;br /&gt;魔王　「こんなところで死なれては困る！！」&lt;br /&gt;少女　「（奴隷一人のために……）」&lt;br /&gt;少女　「うっ……（ぽろぽろ）」&lt;br /&gt;魔王　「どうした？　何故泣く？」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５５．少女　「魔王様……私は、もう治らない病気なんです」&lt;br /&gt;魔王　「治らない……？」&lt;br /&gt;少女　「それに、この街では貴族でもなければお医者にかかることなんて出来ません……」&lt;br /&gt;少女　「私の病気は、一度かかったら諦めるしかない病気なんです」&lt;br /&gt;少女　「ですから、お気になさらないでください（ニコッ）」&lt;br /&gt;少女　「私……気にしていませんから」&lt;br /&gt;少女　「ここまで魔王様が私を連れてきてくださったことが、とてもうれしい……」&lt;br /&gt;少女　「人生で、一番うれしいことかもしれません……」&lt;br /&gt;魔王　「………………」&lt;br /&gt;魔王　「バカを言うな！！」&lt;br /&gt;少女　「（ビクッ）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５６．魔王　「貴様、だから死んでもいいとでも抜かすつもりか！」&lt;br /&gt;魔王　「それしきのことが、人生で一番うれしいことだとでも抜かすつもりか！」&lt;br /&gt;魔王　「小さい！　小さいぞ人間！」&lt;br /&gt;少女　「小さい……？」&lt;br /&gt;魔王　「俺の夢は、大魔界の征服だ」&lt;br /&gt;魔王　「人間界などどうでもいい」&lt;br /&gt;魔王　「大魔界は今、父上が全てをなぎ倒し、全てを壊しつくし廃墟になっている」&lt;br /&gt;魔王　「それを復興させ、俺のリゾートとするのが、俺の夢だ！」&lt;br /&gt;魔王　「俺は偉い！　俺は強い！　貴様のように、ただおぶってもらっただけで満足ですといって死ねるようなタマではない！」&lt;br /&gt;魔王　「小さすぎて哀れになる！！」&lt;br /&gt;少女　「ご……ごめんなさい……」&lt;br /&gt;魔王　「フンッ！　貴様は俺が買った、俺のものだ」&lt;br /&gt;魔王　「なら、俺のその夢をかなえるのが仕事だろう！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５７．少女　「魔王様の夢をかなえるのが……私の仕事……？」&lt;br /&gt;魔王　「そうだ、それまではいくらつらくても死ぬことなど許さん！」&lt;br /&gt;魔王　「舐めた口を利くんじゃない！」&lt;br /&gt;魔王　「治らない病気が何だ。そんなもの魔界では勲章だわ！」&lt;br /&gt;少女　「…………ふふ……っ」&lt;br /&gt;魔王　「？　何がおかしい！」&lt;br /&gt;少女　「魔王様、私なんかのためにむきになって怒ってくださって……」&lt;br /&gt;少女　「なんだかかわいいなって……」&lt;br /&gt;魔王　「！！　かわいいだと！　やめろ！　そんな言葉を聞くとじんましんがでてくる！！」&lt;br /&gt;少女　「え……じんましん……！？」&lt;br /&gt;魔王　「はぁ……はぁ……」&lt;br /&gt;魔王　「貴様俺を呪い殺すつもりか！！」&lt;br /&gt;少女　「ご、ごめんなさい……」&lt;br /&gt;魔王　「フンッ、もう一軒病院を回るぞ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５８．少女　「（魔王様……ありがとうございます）」&lt;br /&gt;少女　「（でも、私の病気は……）」&lt;br /&gt;少女　「！！　魔王様、魔王城が……」&lt;br /&gt;魔王　「ぬ！？　あれは……」&lt;br /&gt;魔王　「（魔王城から火の手が…………）」&lt;br /&gt;魔王　「（人間め、宝石の報復に来たのか？）」&lt;br /&gt;魔王　「（今、俺一人戻れば多分鎮圧できるが……）」&lt;br /&gt;魔王　「（そうすると少女が……）」&lt;br /&gt;少女　「（スッ）魔王様、行ってください」&lt;br /&gt;魔王　「！！　そんなこと……できるわけがないだろう！」&lt;br /&gt;少女　「魔王様は……とても良い方です……」&lt;br /&gt;少女　「幼稚園の馬車ばかり狙っていたのも、味方にも、人間にも被害があまり出ない方法を選んでいたから……」&lt;br /&gt;少女　「誰よりも仲間のことを、人のことを思っているのはあなたです……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;５９．少女　「みんな待っています。行ってあげてください」&lt;br /&gt;魔王　「……くっ……（ガシッ）」&lt;br /&gt;少女　「きゃっ……魔王様！？」&lt;br /&gt;魔王　「一旦魔王城にルーラで戻る。一瞬で片付けて、その後お前を医者に連れて行く。いいな！？」&lt;br /&gt;少女　「魔王様……そんな、私がいては……」&lt;br /&gt;魔王　「やかましい！　俺のものならもっと……らしく、堂々としていろ！」&lt;br /&gt;魔王　「それが魔王の召使いというものだ！」&lt;br /&gt;少女　「（魔王様の……召使い……）」&lt;br /&gt;少女　「（私が……！）」&lt;br /&gt;少女　「……はい！」&lt;br /&gt;魔王　「フンッ！　ヌッ！（シュン）」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６０．―魔王城―&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;戦士　「何だこの魔王城……モンスターの数も少ねぇし、気配がねぇな……」&lt;br /&gt;僧侶　「先ほどのモンスター達も魔法で追い払いましたが、一向に襲い掛かってくる気配がないですね……」&lt;br /&gt;武道家　「魔王なんてこの先にいるのかな？」&lt;br /&gt;武道家　「お城の中は綺麗に整備されてるけど、人の気配がないよ」&lt;br /&gt;勇者　「……君達、気を抜くんじゃない」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;～少し離れた場所～&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;側近　「あわわわ……久しぶりに何か来たと思ったら、ずいぶんとハイレベルな勇者達が来てしまった……」&lt;br /&gt;側近　「よりにもよって魔王様がご不在の時に……」&lt;br /&gt;ドラゴン　「ちぃ。せっかく少女が片付けたのに土足で汚しやがって……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「オイラたちじゃちっと勝てねぇな、あのレベルだと……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６１．側近　「何を言う。こういうときこそ一致団結して、我らの城を守らなければいけないではないか！」&lt;br /&gt;側近　「お前たち、今こそ奮い立つときですぞ！」&lt;br /&gt;ドラゴン　「ンなこといったってなぁ……」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「せやかて、俺らあんな強いのと戦って勝てる実力はないで」&lt;br /&gt;側近　「戦う前から何を負けを認めておる！」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「ここは潔く撤退して、魔王様のお帰りを影から待つに限るで！（サササッ）」&lt;br /&gt;ドラゴン　「同感！（サササッ）」&lt;br /&gt;モンスター達　「キィ！（サササッ）」&lt;br /&gt;側近　「あ！　こらお前たち！！」&lt;br /&gt;戦士　「あ～ん？　何かこっちが騒がしいな……」&lt;br /&gt;僧侶　「あんなところにモンスターが一匹いますわ！」&lt;br /&gt;武道家　「お！　今度こそ逃がさないよ～！！（ダダッ）」&lt;br /&gt;側近　「ひぃぃ！　こっちに来た！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６２．魔王　「（シュン）遅くなった」&lt;br /&gt;側近　「魔王様！！」&lt;br /&gt;武道家　「！　お前は……もしかして魔王か！！」&lt;br /&gt;魔王　「俺の城でよくも勝手なまねをしてくれたな」&lt;br /&gt;武道家　「ふんっ！　ボク達は隣の魔王を倒したんだ。お前みたいな小物、ボク一人でも……」&lt;br /&gt;勇者　「武道家、待つんだ！」&lt;br /&gt;魔王　「（ピクッ）小物……？」&lt;br /&gt;魔王　「隣の大陸の魔王を倒した程度で調子に乗りやがって……」&lt;br /&gt;魔王　「奴と俺を比べるなど、片腹痛いわ！」&lt;br /&gt;武道家　「抜かせぇ！　はぁぁぁ！！（ドドドド）」&lt;br /&gt;魔王　「フンッ！　（ピンッ）」&lt;br /&gt;武道家　「！　きゃぁあああ！（ゴォォォォッ）」&lt;br /&gt;僧侶　「武道家さん！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６３．武道家　「な……何、今の……タメなしでメラゾーマ……？」&lt;br /&gt;魔王　「俺と貴様らでは魔力の圧倒的総量が違いすぎる。ここで四人仲良く消し炭に……」&lt;br /&gt;少女　「………………ケホッ……ケホッ………………」&lt;br /&gt;魔王　「……………………チッ」&lt;br /&gt;勇者　「！　（奴の後ろに人間の姿が……）」&lt;br /&gt;勇者　「（卑怯な……人質というわけか……！！）」&lt;br /&gt;戦士　「何ビビってんだ！　相手は一人、やれるぜ！！（ドドドド）」&lt;br /&gt;魔王　「バカめが……バシルーラでも食らうがいい（シュン）」&lt;br /&gt;戦士　「な……何だこの風は……うわぁぁぁ！！（ドヒュゥゥゥン）」&lt;br /&gt;僧侶　「戦士さん！」&lt;br /&gt;魔王　「お前たちもどこかに飛んでいけ（シュン！　シュン！）」&lt;br /&gt;僧侶　「きゃあぁ！（ドヒュゥゥゥン）」&lt;br /&gt;武道家　「うわぁぁぁ！（ドヒュゥゥゥン）」&lt;br /&gt;勇者　「み……みんな！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６４．魔王　「確か勇者にだけはバシルーラは効かないんだったな。貴様だけは俺の手でつまみ出してくれるわ！」&lt;br /&gt;勇者　「くっ……卑怯だぞ魔王！」&lt;br /&gt;魔王　「卑怯……俺が……？」&lt;br /&gt;勇者　「人質をとるなんて、男のすることか！　今すぐその人を解放しろ！！」&lt;br /&gt;魔王　「くくく……はははは！」&lt;br /&gt;勇者　「！！」&lt;br /&gt;魔王　「そうだ！　その感覚だ！　最近ほめられっぱなしでじんましんばかりがでてきていたが、この感覚よ！」&lt;br /&gt;魔王　「俺は卑怯だ！　卑劣な魔王だ！　もっと俺を罵れ！　くははは！！」&lt;br /&gt;勇者　「邪悪な魔王め……！！（ジャキィィン）」&lt;br /&gt;勇者　「だが！　俺は勇者だ。たとえ独りになろうとも必ず悪は討つ！！」&lt;br /&gt;勇者　「魔王、覚悟！！」&lt;br /&gt;魔王　「ふははは！　来るがいい！　おろかな勇者よ！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６５．少女　「ゲホッ……う……っ」&lt;br /&gt;魔王　「！！」&lt;br /&gt;勇者　「（魔王の気がそれた……いまだ！！）」&lt;br /&gt;勇者　「うおおおお！！」&lt;br /&gt;魔王　「（ザンッ）……っ……ぐぅ……」&lt;br /&gt;魔王　「や……やりやがったな…………」&lt;br /&gt;魔王　「……！　体が動かん……！！」&lt;br /&gt;勇者　「破邪の剣だ！　邪悪なものの体を麻痺させる力がある……！」&lt;br /&gt;勇者　「はぁ……はぁ……」&lt;br /&gt;勇者　「終わりだ！　魔王！」&lt;br /&gt;少女　「や……やめて……」&lt;br /&gt;少女　「やめてください！！（バッ）」&lt;br /&gt;勇者　「！！　（ザンッ）」&lt;br /&gt;少女　「う……ッ！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６６．魔王「！！！　少女！！　少女ーッ！！」&lt;br /&gt;勇者　「あ……ああ……」&lt;br /&gt;勇者　「まさか、自分から飛び込んでくるなんて……」&lt;br /&gt;勇者　「俺が……人間を斬った……！？」&lt;br /&gt;少女　「う……（ドサリ）」&lt;br /&gt;魔王　「貴様ァァァ！！」&lt;br /&gt;少女　「ま……魔王様……おやめください……」&lt;br /&gt;魔王　「！　少女！」&lt;br /&gt;少女　「勇者様を傷つければ……国王は、さらに多くの軍勢を魔王城に派遣します……」&lt;br /&gt;少女　「魔王様の……『楽して征服』作戦が……もう使えなくなってしまいます……」&lt;br /&gt;魔王　「そんなことを言っている場合か！　こいつは……お前を……！！！」&lt;br /&gt;少女　「宝石の残りなら……お返ししましょう」&lt;br /&gt;少女　「魔王様……どうか、優しいままの魔王様でいてください…………」&lt;br /&gt;魔王　「！！　少女！？」&lt;br /&gt;少女　「………………」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６７．魔王　「貴様ァァァァ！！！」&lt;br /&gt;魔王　「く……ぐぅぅぅ！（バキバキバキ）」&lt;br /&gt;勇者　「ま……まさか、破邪の封印を破るのか！」&lt;br /&gt;魔王　「がぁぁ！（バキィィン）」&lt;br /&gt;魔王　「よくも少女を…………」&lt;br /&gt;側近　「魔王様……！　少女が……！！」&lt;br /&gt;少女　「………………」&lt;br /&gt;魔王　「ぐぅぅぅぅ！！！」&lt;br /&gt;勇者　「ま……待て、魔王！」&lt;br /&gt;魔王　「！！」&lt;br /&gt;勇者　「事情は分からないが、その女の子の手当てをさせてくれ！」&lt;br /&gt;勇者　「勇者が人を殺めたとあっては、俺自身の存在意義にかかわる問題だ！！」&lt;br /&gt;勇者　「頼む……このとおりだ！」&lt;br /&gt;魔王　「（勇者が……人間が、俺に向けて頭を下げるとは……）」&lt;br /&gt;魔王　「（スッ……）早くしろ！　間に合わなくなったらブチ殺すぞ！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６８．勇者　「……（傷はそう深くはない。まだ助かるぞ……！！）」&lt;br /&gt;魔王　「ええい何をしている屑勇者！！　勇者の癖に人間一人救えないのか！」&lt;br /&gt;魔王　「お前たちは人を売り、人を見捨て、挙句の果てには人一人の命も見捨てて……」&lt;br /&gt;魔王　「一体何なんだ！！」&lt;br /&gt;勇者　「…………（くっ……）」&lt;br /&gt;勇者　「（奴隷市場での光景……言い返すことが出来ない……）」&lt;br /&gt;勇者　「（それにこの子……隣の大陸の民族の肌だ……）」&lt;br /&gt;勇者　「（俺たちが隣の魔王を倒している間に、裏では奴隷売買が行われていたのか……）」&lt;br /&gt;勇者　「……荷物の中に復活の杖があったはずだ。ここで使おう」&lt;br /&gt;魔王　「…………」&lt;br /&gt;勇者　「（パァァァァッ）」&lt;br /&gt;側近　「おおっ！　少女殿の傷が消えていく……！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;６９．勇者　「ひとまず、これで大丈夫なはずだ」&lt;br /&gt;魔王　「……フンッ！　信用などできるものか！　貸せ！（バッ）」&lt;br /&gt;勇者　「あっ！」&lt;br /&gt;魔王　「少女、少女よ生き返れ！（パァァァ！）」&lt;br /&gt;魔王　「俺と一緒に世界征服をするんだろう。奴隷はそれが役目なんだ！」&lt;br /&gt;魔王　「俺と一緒に…………」&lt;br /&gt;魔王　「………………」&lt;br /&gt;勇者　「………………」&lt;br /&gt;少女　「ン……ん……」&lt;br /&gt;魔王　「！！　少女！！」&lt;br /&gt;勇者　「！　良かった。復活の杖が効いたんだ……！！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;７０．少女　「魔王様……それに、勇者さんも……」&lt;br /&gt;魔王　「少女……良かった。一瞬死んでしまったかと……」&lt;br /&gt;少女　「魔王様……泣いて……」&lt;br /&gt;魔王　「（ぐしぐし）バ……バカ者が！　俺は由緒正しきまがまがしい魔族だぞ！　泣いたりするものか！！」&lt;br /&gt;少女　「（くすり）……そうですね……」&lt;br /&gt;勇者　「…………」&lt;br /&gt;少女　「勇者さん……宝石は……ここに、とってあります」&lt;br /&gt;少女　「これを、持ち主の方に返してあげてください」&lt;br /&gt;魔王　「……！　少女……」&lt;br /&gt;少女　「魔王様、お金は人を変えてしまいます……」&lt;br /&gt;少女　「それに、私はいつまでも、地道な魔王様でいて欲しいんです……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;７１．勇者　「これは……盗まれた宝石……」&lt;br /&gt;勇者　「（奴隷売買で得た金……）」&lt;br /&gt;勇者　「……………………」&lt;br /&gt;勇者　「………………分かった」&lt;br /&gt;魔王　「フンッ……それを持ってどこへなりと消え去るがいい」&lt;br /&gt;勇者　「…………そうしよう。だが魔王！　俺はお前を倒すことを諦めたわけではない」&lt;br /&gt;勇者　「お前がいくら小さい悪事を繰り替えす小悪党だったとしても、絶対に倒してくれる！」&lt;br /&gt;勇者　「そのときを待っていろ！！（ササッ）」&lt;br /&gt;ガーゴイル　「行ってもうた。どっちが悪役かわからんなぁ」&lt;br /&gt;ドラゴン　「しっかし少女、良かった。一瞬死んだかと思ったぞ」&lt;br /&gt;少女　「うん……それに、胸の痛みも少し治まってるみたいなの……」&lt;br /&gt;魔王　「この杖のおかげか？」&lt;br /&gt;少女　「あ……！　勇者さん、忘れて行っちゃったんだ……」&lt;br /&gt;側近　「少女殿の役に立つと分かったのです。ありがたくいただいておきましょう」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;７２．少女　「（魔王様……私のことを、すごく心配してくださって……）」&lt;br /&gt;少女　「（涙……）」&lt;br /&gt;少女　「（あの時、魔王様は確かに泣いてらした……）」&lt;br /&gt;少女　「（奴隷である私に……）」&lt;br /&gt;少女　「（もう少し……）」&lt;br /&gt;少女　「（私のために泣いてくれる人がいるのなら、たとえ奴隷でも、魔王様でも……）」&lt;br /&gt;少女　「（もう少し、生きてみようかな……）」&lt;br /&gt;魔王　「何をしている、少女。病院とやらに行くぞ」&lt;br /&gt;少女　「その杖のおかげで、ずいぶんと楽になりました。明日でも……」&lt;br /&gt;魔王　「ならんならん！　また悪化したらどうする！」&lt;br /&gt;魔王　「早く背中に乗れ！」&lt;br /&gt;少女　「（魔王様……）」&lt;br /&gt;少女　「………………はい！」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;魔王　「奴隷でも買ってくるか……」　完&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>魔王SS</dc:subject>

<dc:creator>マツサガシン</dc:creator>
<dc:date>2009-09-28T11:12:50+09:00</dc:date>
</item>
<item rdf:about="http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-62e0.html">
<title>ラルロッザの学園都市　ＳＳ２９</title>
<link>http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-62e0.html</link>
<description>ギャグ編　ＳＳ２９　猫の王 　「あんたたちはもう少しあたしの存在に感謝をするべき...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;&lt;strong&gt;&lt;span style=&quot;color: #cc0033;font-size: 1.2em;&quot;&gt;ギャグ編　ＳＳ２９　猫の王&lt;/span&gt;&lt;/strong&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「あんたたちはもう少しあたしの存在に感謝をするべきだと思うわ」&lt;br /&gt;突然会議中にそう言われ、第十五生徒会のみなさんはきょとんとして、大きな胸をそらしている夏妖精のアルヴァロッタ・アークシーに目をやった。&lt;br /&gt;「どうしたんだ。やっぱり女の子の日はきついんだろ？　無理すんな」&lt;br /&gt;牛角の少年、ゼマルディ・クラウンに投げやりに突っ込まれ、ロッタは&lt;br /&gt;「うるさいわ。中途半端にオブラートに包むんじゃないわよ！　生理とはっきりいいなさい」&lt;br /&gt;と冷たく返してから、全員の顔を見回した。&lt;br /&gt;金髪の吸血鬼、フィルレイン・ラインシュタインは彼氏である怪鳥族のクヌギ・トランスの膝の上で、全ての事柄に自分は関係ないといわんばかりにぐっすり眠っている。&lt;br /&gt;自分の隣で、ずり落ちそうになって同じように眠っている赤と白髪メッシュの女の子――彼女の娘（いろいろありましたがロッタの実の子ではありません）リンフロンを忌々しげに見てから、視線をまた脇にやる。&lt;br /&gt;少し離れた場所で、テーブルに突っ伏すようにして、盲目のホワイトドラゴン、ルイシエンタ・ノートランドが幸せそうに寝息を立てている。&lt;br /&gt;自分用の専用枕クッションを引いているという完璧体制だ。&lt;br /&gt;資料を開いているのはロッタと、その隣で半分居眠りをしては覚醒している彼氏である、ドラゴン族の生徒会長、センシエスタ・ノートランド。そしてゼマルディの三人だけだった。&lt;/p&gt;&lt;p&gt;クヌギはフィルを膝に乗せ、参考書を開いて、ものすごい勢いで勉強をしている。&lt;br /&gt;いつも運動部などの活躍で忙しい彼は、大概こういう空いた時間（生徒会の会議中）などには、周りの声に反応しないほどの集中力で宿題を終わらせている。&lt;br /&gt;今もやはり、反応はない。&lt;br /&gt;少し離れた長テーブルの隅では、幽霊族のサラサ・メルがピコピコと魔導小型ゲーム機で遊んでいた。&lt;br /&gt;車椅子の人魚、アイカ・マロンは机の上にアルコールランプなどの器具を配置し、何かフラスコに入ったヘドロのようなものをぐつぐつと加熱しながら、ニヤニヤしている。&lt;br /&gt;そんなカオスな状況の中、九本のキツネ尻尾をふりふりと揺らしながら、小さなポニーテールをした茶髪の女の子が、全員の前に、ちょこちょことトレイに載せて運んできたコーヒーを置いていた。&lt;br /&gt;エルグレンという、上級魔導種族の娘、アラリスだった（ＳＳ２８話より登場）&lt;br /&gt;彼女――九歳らしい、センのメイドの女の子はロッタの前にコーヒーを置いてから、立ち上がっている彼女の脇に止まって、全員をきょとんと見回した。&lt;br /&gt;「てゆうか今、みなさんはなにをしてらっしゃるんですか？」&lt;br /&gt;「会議という名の休憩会よ。はい、注目。寝てるのは起こすと寝ぼけて何するかわかんないからいいけど、起きてる奴はいい加減注目。注目しないと、このテーブルをひっくり返したいと思います」&lt;br /&gt;さらりと狂気を言い放ち、ロッタが腕を組んで周りを見ます。&lt;br /&gt;「どうしましょうね……！？」&lt;br /&gt;「落ち着け。何トンあると思ってんだ、大理石だぞこのテーブル……」&lt;br /&gt;ニコニコ笑いながら、反面プルプルと、巨大な長テーブルを持ったロッタの手が震えている。&lt;br /&gt;それにあわせてミシミシとテーブルがきしみ音を立て始めた。&lt;br /&gt;慌てて起きているみなさんがロッタの方を向いた。&lt;br /&gt;アイカがとなりのクヌギをつついて彼女の方を向かせる。&lt;br /&gt;注目を集めたのを確認して、ズン、と何センチか浮いていた数トンはある大理石テーブルを床に落としてから、ロッタは大きな胸をそらし、腕組みをした。&lt;br /&gt;「……ナメてんの……？　あんたたちちょっと気合が足りないんじゃない……？」&lt;br /&gt;「生理痛の恨みをわたくしたちに当てるのはやめましょうよ」&lt;br /&gt;「当ててるんじゃないのよ。ちょっと限界が近いからあたしはもう寮に帰るって言ってんの」&lt;br /&gt;ロッタがそう言った途端、生徒会室に衝撃が走った。&lt;br /&gt;センまでもがバッと起き上がり彼女を見る。&lt;br /&gt;「というわけだから、今回はあたしがやるべき本来の業務、その全てをあんたたちに担当してもらうことにするわ」&lt;br /&gt;「バカな……というか今は何の話し合いだったんだ？」&lt;br /&gt;生徒会長の彼氏がそう言った途端、笑顔で傍らの羽ペンを彼の脳天に突き刺し、悶絶している様を見下ろしながらロッタは言った。&lt;br /&gt;「話は聞いてたわね？　聞いてたととらえることにするわ。というわけで、あたしに少し休みを頂戴」&lt;br /&gt;「アークシー様。難しくてよく分からなかったのですが、行動内容の指示さえしていただければ、あとはアラリーがやっておきますよ」&lt;br /&gt;アラリスがそう言うと、ロッタは軽く首を振った。&lt;br /&gt;「ダメよ。甘やかしちゃいけないわ。あんたがやればそりゃできるでしょうけど、それとこれとは話は別よ。てゆうかあんたたち、９歳の女の子にやらせて、それでいいっていうの？　恥を知りなさい恥を」&lt;br /&gt;トゲのある台詞を吐きながら、さっさとロッタは帰り支度を始めてしまった。&lt;br /&gt;どうやら今までは引継ぎの話をしていたらしい。&lt;br /&gt;一人だけ話を真面目に聞いていたゼマルディが、そこで軽く手を上げて言った。&lt;br /&gt;「おーい。やれっつわれたって、決算書の中身知らないからやりようがないぞ。せめて資料を置いていけ」&lt;br /&gt;「アラリスに渡しといたわよ。というわけでリンの世話も何もかも全部お願い。あたし今日は帰って寝る」&lt;br /&gt;「そんなに限界なら最初に言ってくれればよかったのに」&lt;br /&gt;アイカがそう言うと、ロッタは深くため息をついて答えた。&lt;br /&gt;「いや、会議の最初に何もかも全部話をしたんだけど……」&lt;br /&gt;「まぁ、やっぱ無理なら、もう帰れよ。顔色相当悪いぞ」&lt;br /&gt;「う……言われたらまたおなか痛くなってきた……」&lt;br /&gt;「テーブル持ち上げるからだよ……いいからホラ、帰れほら」&lt;br /&gt;ロッタをエレベーターに押しやって見送ってから、ゼマルディは全員を見回した。&lt;br /&gt;「よし、じゃあ終わらせて帰るぞ」&lt;br /&gt;「何をだ？」&lt;br /&gt;脳天から羽ペンを抜いて問いかけたセンの隣で、アイカが頬に指を当てる。&lt;br /&gt;「あぁ、そういえば一週間後の体育祭の話をしていたんじゃありませんでしたっけ？」&lt;br /&gt;「体育祭？　あぁ～。なんかそんなことを師匠から聞いたな」&lt;br /&gt;センがうなずいたところで、ゼマルディが呆れ顔で着席しながら彼を見た。&lt;br /&gt;「お前……自分の妻が生理痛でダウンしてるときに一ミリたりとも話を理解していないとは、相当だな」&lt;br /&gt;「アークシーがああいう状況だとな、とばっちりでひどい目にあうことが多いから、なるべく接触しないようにしてるんだよ……お前一緒に暮らしてる身にもなってみろ。今日の朝だって危うく閉め落とされかけたんだぞ。足が宙に浮いたぞ。茶碗を洗わなかったと言う理由だけで」&lt;br /&gt;アンニュイな顔でそう言い、センは周りを見回した。&lt;br /&gt;「あー……じゃあよくわかんないから帰るか。あとはマルディが何とかしてくれるそうだ」&lt;br /&gt;「お前がやるんだよ。待て、帰らせたら俺がアークシーに殺される」&lt;br /&gt;ゼマルディが制止して、とにかく全員に手元の資料を見るように促す。&lt;br /&gt;羊皮紙をめくってから、クヌギがため息をついた。&lt;br /&gt;「……また体育祭か。この学園は年に何度祭を行えば気が済むんだ？　というか、俺は明日の薬事法即学の課題が終わっていないから、そういうことなら帰宅させてもらう。フィルをベッドで寝かせなければいけない」&lt;br /&gt;「そこの夫妻もちょっと待てな。お前らも逃がしたら、やはり俺がアークシーに殺される」&lt;br /&gt;「あなたの身に人質の価値がおありとでもお思いですか？　死ぬなら一人で死んでくださいませ」&lt;br /&gt;アイカに言われ、ゼマルディはヒステリックな声でそれに突っ込んだ。&lt;br /&gt;「うるせー！　グダグダ言わずに、今まで俺とアークシーでやってたことをお前らが分担するんだよ！！　少しは世間様の役に立て！　この穀潰しのバカ貴族ども！！」&lt;br /&gt;「あんまりと言えばあんまりな暴言ですわ！！」&lt;br /&gt;「ちょっと今のは聞き捨てならないな」&lt;br /&gt;「マルディ、俺は貴族ではない。しかし心はお前達と共にあるつもりだ」&lt;br /&gt;「うるせぇぇよ！　めんどくせーなお前らはもー！！　いいから資料を見ろ。あぁアラリス、配ってくれ」&lt;br /&gt;「かしこまりました」&lt;br /&gt;頷いて、キツネ尻尾の女の子が皆さんの前に資料を置いていく。&lt;br /&gt;ゼマルディはそれをパンパンと手でたたきながら、眠っている厄介な生き物三人は無視して、やる気がなさそうなその他を見回した。&lt;br /&gt;「というわけで、今日はこれから次の体育祭でかかる予算の決定第一回を全員で行う」&lt;br /&gt;「待てマルディ。お前俺の計算能力を甘く見てるんじゃないだろうな？」&lt;br /&gt;生徒会長のセンがそう言うと、ゼマルディは深く頷いてから投げやりに言った。&lt;br /&gt;「あぁお前には期待してないから」&lt;br /&gt;「助かる」&lt;br /&gt;「どうせ何か指示しないとお前らは何もやらないだろうから、俺が割り振りするぞ。アークシーに後で腕ひしぎ四の字固めをキメられたくなかったら、観念して仕事を手伝え」&lt;br /&gt;「望むところですわ。いずれ彼女とは決着をつけねばなるまいと思っていたところです」&lt;br /&gt;「何で戦う方向性でとるかな！？　いいから観念しろつってんだよ！！」&lt;br /&gt;珍しくゼマルディがブチ切れ、スパーンと資料をテーブルにたたきつけがてら言った。&lt;br /&gt;「マロンとトランスはとりあえず俺とアークシーが今まで作っておいた予算書の金額があってるかどうかの確認。ノートランドは、今までアークシーに書いてもらってたスピーチの内容を自分で書くように。今日中に。あとそこゲームやめろ！！」&lt;br /&gt;まだピコピコと魔導ゲーム機から目を離さない幽霊、サラサにゼマルディが羽ペンを投げつける。&lt;br /&gt;それがスカッと彼女の頭を貫通して背後の壁に突き刺さった。&lt;br /&gt;不満げにサラサが顔を挙げ、そしてゼマルディを見る。&lt;br /&gt;「あと五分……！！」&lt;br /&gt;「俺はてめーのお母さんじゃないの！！　てゆうか校内には私物の持ち込みは原則禁止！！」&lt;br /&gt;「はぁ……もういっそのこと戦って決めましょうよ。勝った方の言うことを聞くということでいかがでしょう？」&lt;br /&gt;「そうですねマロンさん。わたしも力を貸しましょう」&lt;br /&gt;「あれぇおかしいな！？　本来の業務をしろっていってるだけなのに、俺を殺す方向に話が行ってない！？　だからお前はバトルから離れろ！！」&lt;br /&gt;「わたくしたちから戦闘力を取ったら何が残ると言うのですか。まぁあらゆる点が凡庸なマルディからしてみれば分からないでしょうけど、わたくしたちだっていろいろ大変ですのよ！？」&lt;br /&gt;「いいから仕事をしろっつってんだよ！！!　この子たちに話が通じない！！」&lt;br /&gt;「じゃあ私はゲームをする係と言うことで」&lt;br /&gt;手を上げてサラサが言う。ゼマルディは突っ込みすぎの酸欠のようになりながら、すたすたと歩いていくと、ポケットから出したジップロックに、その、気体でできている幽霊用魔導ゲーム機を流し込んで口を閉め、折りたたんでポケットにしまいこんだ。&lt;br /&gt;サラサが唖然として、それからわなわなと震えだす。&lt;br /&gt;「セ、セクハラァァ！！」&lt;br /&gt;「仕事が終わったら返すよ。メルはタイプライターで予算案の提議書を作成。ほら、さっさととりかかれバカども」&lt;br /&gt;同様にアイカの実験器具もガシャガシャと段ボールに没収して、ゼマルディは、代わりにドサリとテーブルに羊皮紙の山を置いた。&lt;br /&gt;「くっ……バックにロッタさえいなければここで焼き殺してやるものを……！！」&lt;br /&gt;「乱暴に扱わないでください高かったんですよそれ！！」&lt;br /&gt;ブーブー言っている女性陣を無視して、ゼマルディは自分の分の予算書作成に取り掛かり始めた。&lt;br /&gt;生徒会員も観念したのか、それぞれ黙々と作業に移行し始める。&lt;br /&gt;と、そこでクヌギの膝の上で寝ていたフィルが&lt;br /&gt;「んう」&lt;br /&gt;と一言呻いて目を開けた。&lt;br /&gt;そして大きく欠伸をしてからふらんふらんと頭を揺する。&lt;br /&gt;「おはようみんな。ご飯食べに行こう！！」&lt;br /&gt;三秒してから元気に彼女が声を上げる。&lt;br /&gt;ゼマルディが深いため息をついて頭を押さえた。&lt;br /&gt;「……また一から説明しなきゃいけないのか……」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　それから、結局は起きてきたルイとリンにも同じことを説明して、ゼマルディが自分の分の作業に取り掛かり始めたのは下校時刻の夕方五時を回ったころだった。&lt;br /&gt;「くそ……俺一人ならもう終わってたのに……」&lt;br /&gt;わなわなと手を震わせながらタイプライターを打っている。&lt;br /&gt;反面、今まで寝ていたフィルとリンという伝説の魔族二人は、割り当てられた分の計算を既に終えて、生徒会室の隅でキャピキャピとモーム（魔界のチェスのようなものです）をして遊んでいた。&lt;br /&gt;その矛盾している状況に、生徒会員全体が三白眼のような目になっている。&lt;br /&gt;「……どうしてフィルちゃんたちとわたくしたちの作業量を九対一くらいにしなかったんですか……！？」&lt;br /&gt;ひそひそとアイカに言われ、ゼマルディがそれを手で押し戻しながら答えた。&lt;br /&gt;「フィフティーフィフティーにはしたんだから文句言うなよ……あとフィルもリンも早いけどケアレスミスとか珍解答が多いから、全部任せるのは不安なんだよ……」&lt;br /&gt;そう言って彼は、最初の一手を指してから二～三手で勝負がつくいう高度過ぎる戦いをくり広げているフィルとリンを見た。&lt;br /&gt;精神年齢と外見は完全に小学生なのだが、彼女達の知能の高さは半端ではない。&lt;br /&gt;惜しむらくは心が子供なので、飽きっぽいと言うところなのだ。むしろ彼から言わせれば、配当した分量を彼女達が終わらせた事自体が奇跡だった。&lt;br /&gt;そんなこんなで夕方六時を回ったころ、ポン、と音がしてエレベーターのドアが開いた。&lt;br /&gt;そして中から二足歩行の太った猫、にゃんこ先生が、でっぷん、でっぷんと腹を揺らしながら入ってくる。&lt;br /&gt;彼は珍しく真面目に仕事をしている生徒会の皆さんを見ると、一瞬ぽかんとしてから、不思議そうに、懸命に文書を作成しているセンを見た。&lt;br /&gt;「フリンス……お、お前……わしがいくら読み書きを教えても理解しようとしなかったお前が、モノを書いている……！？」&lt;br /&gt;「あんた先生だろ……」&lt;br /&gt;ゼマルディに突っ込まれ、にゃんこ先生は肩にサンタクロースのように背負っていた布袋を、ドサリと床に下ろした。&lt;br /&gt;「アークシーから電話をもらってな。奴隷どもがきちんと働いているかチェックをしてきてくれと言われたが……」&lt;br /&gt;そう言って彼は遊んでいるフィルとリンを見て、見なかったことにしたのかテーブルに視線を戻した。&lt;br /&gt;そして袋の中からプリンなどの菓子類を取り出しす。&lt;br /&gt;「真面目にやっているようなので褒美をやろう。これでも食らうがいい」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　目の色を変えてプリンやケーキをもっしゃもっしゃとほおばっているフィルとリンを尻目に、生徒会員はとりあえずの一息、と言うことで、にゃんこ先生が持ってきたお菓子に口をつけていた。&lt;br /&gt;しばらくしてから、アラリスが&lt;br /&gt;「お紅茶です～」&lt;br /&gt;と言いながらトレイに載せた紅茶を運んできて、全員の前においていく。&lt;br /&gt;にゃんこ先生はテーブルの上に座り、もっちゅもっちゅとバナナをほおばりながら全員を見回した。&lt;br /&gt;「と言うかお前達は何をやっているんだ？」&lt;br /&gt;「いや、次の体育祭の顧問ってあんたじゃなかったですっけ？」&lt;br /&gt;ゼマルディに突っ込まれて、そこで初めて気がついたのか、にゃんこ先生はポン、と肉球と肉球を叩きあわせた。&lt;br /&gt;「あぁ、そういえばそんなことを理事会でいわれた気もする」&lt;br /&gt;「あんたって人は……」&lt;br /&gt;「アークシーが今まで全部やっていたのか」&lt;br /&gt;「改めて見ると超人ですわね」&lt;br /&gt;アイカが紅茶に口をつけながら、計算に飽きたのか資料を脇に投げ出して息をついた。&lt;br /&gt;「誤算でしたわ。今月の彼女の暴発期間に体育祭が重なるとは思ってもいませんでした」&lt;br /&gt;「ふむ。まぁせいぜい頑張るがいい」&lt;br /&gt;ズズ……と紅茶をすすった彼に、ゼマルディが非難気味な目を向けた。&lt;br /&gt;「折角きたんだから手伝ってってくださいよ」&lt;br /&gt;「わしはこれから行くところがある」&lt;br /&gt;「どうせおっぱいパブだろ」&lt;br /&gt;「貴様はわしを何だと思っているんだ。そうそう毎日おっぱいを揉む必要はないわ。ちと別の用事があってな……」&lt;br /&gt;「用事？」&lt;br /&gt;「ふむ。そろそろか」&lt;br /&gt;そう言って彼は、エレベーターに歩いていくと、中に乗り込んでボタンを押した。&lt;br /&gt;しばらくして下降したエレベーターが戻ってきて、また開く。&lt;br /&gt;そして中から、毛並みのいい猫が二十匹近く、ニャンニャンいいながら中に入り込んできた。&lt;br /&gt;その先頭で二足で歩きながら、彼が背後を振り返り&lt;br /&gt;「ニャン」&lt;br /&gt;と言う。それに猫たちが&lt;br /&gt;「ニャン」&lt;br /&gt;と返し、指さされたソファーの方向に思い思いに歩いていった。&lt;br /&gt;ポカンとしている生徒会員の前で、にゃんこ先生は猫たちと車座になって座ると、ふぅと息をついて彼らの方を向いた。&lt;br /&gt;「と言うわけで、わしらはこれから会議を行うので、お前達は勝手に頑張っていろ」&lt;br /&gt;「外でやれよ猫会議は！！」&lt;br /&gt;「ばか者。体育祭なんかよりも重大な問題が持ち上がっているんだ。今日ここに集合していただいたのは、このザインフロー西ブロックを管轄している若奥様達だ」&lt;br /&gt;にゃんこ先生が彼女（？）達の方を向いて&lt;br /&gt;「ニャン」&lt;br /&gt;と言うと、毛並みのいい猫たちはザッと生徒会員の方を向いて、口々にニャンニャンと挨拶をした。&lt;br /&gt;「猫を統率してやがる……」&lt;br /&gt;「まぁ猫ですからね……」&lt;br /&gt;生徒会員の突っ込みを無視し、にゃんこ先生は少し考え込んでから、ポン、と肉球を叩いた。&lt;br /&gt;「そうだ。どうせお前達、そろそろ作業に飽きてきているのではないか？　手伝え」&lt;br /&gt;顔を上げた生徒会員の前で、彼はにやりとふてぶてしく笑ってみせた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「説明はこちらの若奥様からしていただく。どうぞ奥様」&lt;br /&gt;にゃんこ先生に紹介された白い猫がすっくと背筋を伸ばし、青い瞳で周りを見る。&lt;br /&gt;そして彼女は首の辺りを手でカリッカリッと掻いてから&lt;br /&gt;「メン」&lt;br /&gt;と鳴いた。&lt;br /&gt;周りの猫たちがウンウンと頷いて、にゃんこ先生が深刻な面持ちで生徒会員達を見る。&lt;br /&gt;「だそうだ」&lt;br /&gt;「さっぱりわかんねーよ」&lt;br /&gt;ゼマルディに突っ込まれ、にゃんこ先生がヒゲをしごいてから&lt;br /&gt;「ふむ」&lt;br /&gt;と言う。それに重ねるように、ボーッと聞いていたリンフロンが、白い猫を見て&lt;br /&gt;「ニャー」&lt;br /&gt;と言った。それを聞いて別の猫がすっくと背筋を伸ばし、&lt;br /&gt;「ミュン」&lt;br /&gt;と言う。リンがそれを聞いて口に手を当て、&lt;br /&gt;「ニャム……」&lt;br /&gt;と言うと、他の猫たちがウンウンと頷いてからうなだれた。&lt;br /&gt;「それは大変なの。みなさんとてもおつらかったと思うの……」&lt;br /&gt;リンが目に涙をためながら頷く。それにゼマルディが静かに言った。&lt;br /&gt;「出来れば通訳してくれ。てゆうかなんでリンは猫と話せるんだ？」&lt;br /&gt;「まぁかいつまんで言うとだ」&lt;br /&gt;にゃんこ先生が指を立てて注目を集めてから言った。&lt;br /&gt;説明によると、どうやら最近、猫の若奥様で構成されているらしいコミュニティ『おにゃんこ倶楽部』が、野良猫の組織『なめんなよ』に、縄張り問題で立ち退きを強要されたとのことだった。&lt;br /&gt;既になめんなよは若奥様達の散歩地域にまで見張りを総動員させ、彼女達の交流の場を奪ってしまったとのことだった。&lt;br /&gt;「あの短い言葉の間にそんな意思疎通があったのか……」&lt;br /&gt;得体の知れない猫会議を目の前にして、ゼマルディがボソリと突っ込む。&lt;br /&gt;それにリンがきょとんとして全員を見回した。&lt;br /&gt;「猫語は、言葉だけじゃなくて動作とか毛並みとかでも意味が違うの。だから単純に音だけで会話をする愚鈍な人間とは違うって、皆さんは言ってるの。態度が大きいぞ人間って言われてるの」&lt;br /&gt;「何でわたくし達見下されてるんですの……？」&lt;br /&gt;「なんか不愉快ですね……」&lt;br /&gt;にゃんこ先生が袋からカルカンを取り出し、ぺりぺりと蓋を剥がして全員の前に置きながら、口を開いた。&lt;br /&gt;「しかし、最近の『なめんなよ』、とりわけトップのドス猫の暴虐は、わしから見ても目に余る。若奥様達も子供にそろそろ外の世界を教えなければいけない。そこでわしに相談に来られたという訳じゃ」&lt;br /&gt;全員どこかの飼い猫らしく、カルカンを食べる仕草が上品だ。&lt;br /&gt;にゃんこ先生は生徒会員を見て、そしてヒゲをしごきながら言った。&lt;br /&gt;「と言うわけで、今日、これからドスを殲滅しに行こうと思う。お前達も手伝え」&lt;br /&gt;「いや……まずは、その、良くわかんないけど彼？　と話し合いとかした方がいいんじゃないかな……？」&lt;br /&gt;ゼマルディに言われ、しかしにゃんこ先生はバカにしたようにハッと笑ってから答えた。&lt;br /&gt;「何を言うておる。こんな麗しい奥様達がわしを頼っておるのだ。どちらが悪くてどちらが正しいかは、確認するまでもないことじゃ」&lt;br /&gt;「あんた人間でも猫でも見堺なしか……でも、そんなんに俺たちがいく必要もないじゃないですか。あんた一人でいいでしょ？」&lt;br /&gt;意義を唱えられ、しかしにゃんこ先生は&lt;br /&gt;「ふむ……」&lt;br /&gt;と考え込んでから、近くの若奥様に&lt;br /&gt;「ミョーアン」&lt;br /&gt;と言った。それに毛づくろいと視線で答えられ、彼は少し考え込んでから顔を上げた。&lt;br /&gt;「いや、……今のなめんなよのトップを仕切っている猫が、普通の猫ではなくてな……」&lt;br /&gt;「普通の猫じゃないのはあんただろ」&lt;br /&gt;「人を下等な魔獣と一緒にするなバカチンが。おそらくはどこぞで魔力でも吸って化け猫にでもなったんだろう。しかし油断は出来ん。当然奥様達では太刀打ちできんので、なるべくなら捜査人数は多い方がいいのだ。それに、厄介な魔法具を装備していてな……」&lt;br /&gt;「いやだから化け猫はあんただろ」&lt;br /&gt;「かたくなに自分を猫と認めませんわね……」&lt;br /&gt;「行くぞバカども。ついてこい！」&lt;br /&gt;話を聞いていないにゃんこ先生の先導で、猫のみなさんがぞろぞろとエレベーターに向かう。&lt;br /&gt;生徒会員達は顔を見合わせ、アラリスに見送られ、ため息をついてそれに続いた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「うっわ寒……」&lt;br /&gt;ぶるっと外に出た途端ゼマルディが震える。彼女であるホワイトドラゴン、盲目のルイシエンタ・ノートランドの手を引きながら、彼はいまいち状況を把握できていない彼女に、気分転換だと説明していた。&lt;br /&gt;いまや、リンだけではなくフィルまでもが普通に猫奥様達と意思疎通を取っていた。&lt;br /&gt;リンにコツを教えてもらったところ把握できたらしい。&lt;br /&gt;熱心に猫語講座を聞いているクヌギを横目に、車椅子を進めながらアイカが言った。&lt;br /&gt;「……で、そのドスとやらはどこにいるんですか？　早いとこ済ませて、で、仕事も早いとこ済ませてとっとと帰りたいんですけど……」&lt;br /&gt;「ドスは、奥様方の情報によると、西の第三工場をねぐらにしているらしい。プリン食ったのなら、グダグダ言わずについて来い」&lt;br /&gt;でっぷんでっぷんと歩いているにゃんこ先生の脇について、センが腰を屈めて口を開く。&lt;br /&gt;「しかし師匠。俺たちが総出で行かねばならないほどの強敵なのですか？　だったらこのあたりがこいつらに廃墟にされるより先に、魔獣駆除委員会に出撃してもらった方が……」&lt;br /&gt;「いや、ドス自体は多少魔力が高いだけの普通の猫なのだ。問題はあ奴が持っているものでな……」&lt;br /&gt;「何か師匠の弱点になるようなものでも……？」&lt;br /&gt;「うむ。前に一度話し合いに言ったが、あやうく懐柔されるところだった。言っておくがパンツではないぞ」&lt;br /&gt;「し……師匠ともあろうお方が！？　なんですか？　ヌーブラですか！？」&lt;br /&gt;「ヌーブラ！？　なかなかの目の付け所だが、今回は違うぞ」&lt;br /&gt;「いやお前らのその会話はおかしいだろ。どっからヌーブラを装備した猫っていうイメージがわいて来るんだ？」&lt;br /&gt;ゼマルディにビシッと突っ込まれ、センが顎に手を当てて考え込んだ。&lt;br /&gt;「まぁ、ともかくそのドス猫を捕獲、もしくは惨殺すればいいわけですね」&lt;br /&gt;「ああ。まぁお前達にとってはそんなに難しいことではないと思うのだ。だからなるべく人数は多い方がいいと思ったのだが、何か猫化してる奴らがいるな……」&lt;br /&gt;にゃんこ先生が横目で見ると、もはや人語ではないニャンニャンという鳴き声でフィルとリンが会話をしているのが見えた。&lt;br /&gt;猫奥様達と話が大いに盛り上がっているようだ。クヌギも半分ほど理解し始めているらしく、所々で頷いたり相槌を打ったりしている。&lt;br /&gt;「猫語は解読不能の言語と言われていたのだが……末恐ろしい娘どもだ……」&lt;br /&gt;「リンの守護霊が、本人の話によるとお爺様らしいので、その遺伝ではないでしょうか」&lt;br /&gt;「何ィ！？」&lt;br /&gt;ビクッとしたにゃんこ先生は、しかしそこでハタと足を止めた。&lt;br /&gt;大きく欠伸をしながら、浮遊したサラサが口を開く。&lt;br /&gt;「……何か、魚河岸臭くないですか……？」&lt;br /&gt;「何かお言いになりまして？」&lt;br /&gt;アイカが自分の魚尻尾を揺らしてサラサをにらむ。&lt;br /&gt;「いえ、マロンさんの魚臭ではなくて、もっとこう乾物的な……」&lt;br /&gt;「魚臭！？　ちょっと聞き捨てなりませんわよ！？」&lt;br /&gt;「くっ……奴め、やはりあの武器を……」&lt;br /&gt;ガクッと膝を突いてにゃんこ先生が苦しそうに言う。&lt;br /&gt;「し……師匠！？」&lt;br /&gt;師の変貌ぶりに、慌ててセンが彼を抱え上げ青くなった。&lt;br /&gt;「どうかなされたのですか！？」&lt;br /&gt;「わ……わしはいい。若奥様達を……」&lt;br /&gt;プルプル、ハァハァと息が荒くなりながら、にゃんこ先生が、同様にへたり込み始めている猫奥様達を指す。&lt;br /&gt;涎が垂れている。&lt;br /&gt;尋常ではないにゃんこ先生の様子に、慌ててセンが若奥様達の方に振り向いて。&lt;br /&gt;そこで、口元を押さえて、つわりのようなポーズで地面にへたり込んでいるフィルとリンの姿が映った。&lt;br /&gt;「何してんだおめーら！！」&lt;br /&gt;「な……何か変な匂いがするよ……」&lt;br /&gt;「するの……」&lt;br /&gt;くらくらと目を回している彼女達を見て、センは真面目な顔になったアイカ達と共に、にゃんこ先生達を守るように工場の入り口に立った。&lt;br /&gt;そこで始めて彼らは、自分達がおびただしい数の光る目に囲まれていることに気がついた。&lt;br /&gt;同様に血走った眼に涎をたらしている猫達が、ハァハァと息を荒くさせながらこちらを見ている。&lt;br /&gt;「な……なんだ……？」&lt;br /&gt;「気をつけてくださいまし。魔術の類かもしれません！」&lt;br /&gt;アイカがそう言って、自分だけはしっかりとハンカチを口に巻きつける。&lt;br /&gt;「よ……よくわかんないけどにゃんこが倒れるってことは、魔獣駆除委員会に来てもらったほうがいいんじゃないか……？」&lt;br /&gt;ゼマルディがそう言うと、センが一歩前に進み出て、そしてルイの手を引いた。&lt;br /&gt;「その必要はない。近づかずに殺ればいいだけだろ？　いくぞルイ。合体必殺技、ゴンザリックエクスプロージョンだ」&lt;br /&gt;「はい！　ににさま！！」&lt;br /&gt;「やめろ！！　このあたりを灰にするつもりか！　ルイも適当に返事するんじゃねぇぞ！！」&lt;br /&gt;ゼマルディの全力の突っ込みで引き剥がされ、双子がブーブーと牛男を見る。&lt;br /&gt;「何だよしらけるなー……一人だけゴンザリック系の技を使えないくせに」&lt;br /&gt;「じゃあマルディがやればいいじゃないですか」&lt;br /&gt;「そういう不思議技使えないのが俺のいいところなの！！　てか何でお前ら、手からビームとか出たりするわけ！？」&lt;br /&gt;「ビームじゃない。ゴンザリックエクスプロージョンだ」&lt;br /&gt;「どう違うの！？」&lt;br /&gt;ギャーギャー言い合っている彼らを尻目に、一人冷ややかな目で工場の方を見ていたサラサが&lt;br /&gt;「あ、何か出てきましたよ」&lt;br /&gt;と口を開いた。&lt;br /&gt;慌てて生徒会のみなさんが臨戦態勢に移る。&lt;br /&gt;「とりあえず俺がまずＧＣ（ゴンザリックカタストロフィ）を放つ。マロン、ノートランド兄と妹はそれに続け。メルは撃ち漏らしがいたら、容赦なく殺ってくれ。マルディはそのへんにいろ」&lt;br /&gt;プルプルしているフィルを抱えながら、ずい、とクヌギが身を乗り出す。巨体の上で目が真っ赤に光り輝いている。&lt;br /&gt;その前に飛び出て、ゼマルディが慌てて首を振った。&lt;br /&gt;「落ち着け！　この工場まだ稼動してるから！！　中にはまだ人がいるから！！」&lt;br /&gt;「大を救うには多少の犠牲はやむをえまい」&lt;br /&gt;「おめーにとっての大はそれ（フィル一人）だろ！！　くっそぉぉ！！　一人で捌き切れねーぞこのボケの量！！　アークシー早く帰ってきてぇぇ！！」&lt;br /&gt;いない妖精に助けを求め始めたゼマルディの脇で、地面に横たわってプルプルしているにゃんこ先生が、くわっと目を見開いて叫んだ。&lt;br /&gt;「来るぞ！　気をつけろバカども！！」&lt;br /&gt;「ひぃぃ！　何か知らねーけど何か来るぞ！！」&lt;br /&gt;ゼマルディが慌てて生徒会員と工場との射線上から逃れるように脇に転がる。&lt;br /&gt;と、そこで彼は地面でプルプルしていたリンと目が合った。&lt;br /&gt;赤白髪メッシュの女の子は、四つんばいの姿勢でしばらく何かを耐えていたが、ゼマルディの顔を見ると、途端にボッと火がついたように顔を赤くした。&lt;br /&gt;そしてその上気した顔のまま、ポカンとしている彼ににじり寄り、子供とは思えない手つきできゅっ、と抱きつく。&lt;br /&gt;「おじさん……」&lt;br /&gt;「は！？　お、おいリン！？　ぐんふぅぅう！！」&lt;br /&gt;慌てて制止しようとしたが、一瞬遅く、リンはぶっちゅうぅぅとゼマルディに自分の唇をいきなり合わせた。&lt;br /&gt;頬と耳が真っ赤で、完全にこれは……発情している。&lt;br /&gt;あまりにも熱烈なキスで、体中の魔力を容赦なく根こそぎ吸い出され始めたゼマルディの目に、同様に抱いていたフィルにキスで魔力を奪われ、もがいているクヌギの姿が映った。&lt;br /&gt;娘（リン）がゼマルディに抱きついたままゴロンと地面に転がったのを見て、センが青くなって絶叫した。&lt;br /&gt;「何してんのお前らぁぁ！！！」&lt;br /&gt;同様に彼氏と兄の娘の熱烈なディープキスを魔力ででも感知したのか、ルイが頬に手を当てて&lt;br /&gt;「マルディィ！？」&lt;br /&gt;と悲鳴を上げる。&lt;br /&gt;「な……何が……」&lt;br /&gt;ドサリと白目をむいて地面に崩れ落ちたクヌギに、完全に真っ赤に発情して目の色を失ったフィルがまた覆いかぶさったのを見て、じりじりと距離を離しながらアイカが言う。&lt;br /&gt;「くっ……こんなに威力が強くなっているとは……」&lt;br /&gt;にゃんこ先生も涎をたらしながらプルプルし、必死に何かを耐えている。&lt;br /&gt;奥様達は既に白目をむいてビクンビクンと痙攣していた。&lt;br /&gt;リンとゼマルディを引き剥がそうとしているドラゴンの双子を尻目に、アイカは工場の屋根で、何か短剣のようなものをくわえた黒猫が、すっくと背中を伸ばすのを見た。&lt;br /&gt;「奴だ……ドスめ……！！」&lt;br /&gt;にゃんこ先生がそう言って、ブルブルしながら立ち上がった。&lt;br /&gt;「奴が持っているあれは……三百年前の大戦争で、対猫用の決戦兵器として使用された伝説の武器……猫を意のままに操る最強最悪の、封印されたはずの……！！」&lt;br /&gt;「な……何でそんなのをこのあたりのボス猫が装備してるんですか！？」&lt;br /&gt;サラサがヒステリックに声を上げると、にゃんこ先生は頬の汗を拭って続けた。&lt;br /&gt;「ザインフロー美術館に収納されるはずだったのが、少し前に盗まれてな……わしはその捜索も頼まれていたんだが……」&lt;br /&gt;「何なんですの、その対猫用決戦兵器って！？」&lt;br /&gt;「何でリンフロンとフィルレインにも効いているのか分からんが、奴が持っているあれは、一千年前の霊験あらたかな神木から削りだされ、高純度の魔力水にて精製され、地獄の炎によって精錬された……」&lt;br /&gt;カッと目を見開き、にゃんこ先生は叫んだ。&lt;br /&gt;「秘剣、マタタビブレード！！！」&lt;br /&gt;「…………あぁマタタビですか」&lt;br /&gt;ホッと一息つき、アイカはアンニュイな瞳で、動かなくなったクヌギとゼマルディに覆いかぶさっているフィルとリンを見た。&lt;br /&gt;「この子たち、生成されるときに猫の細胞の何かも組み込まれてるらしくて、マタタビに弱いんですよ。文献にも、ホモンクルーズ類を生成するときに、動物のＤＮＡを組み込むと人格形成に役立つとありますし。確かかつおぶしをあげたときもこんな感じになりました。なんですの、にゃんこ。あなた猫ですから、やっぱりマタタビには抗えないんですのね」&lt;br /&gt;「猫ではない……にゃんこ先生だ……！！」&lt;br /&gt;プルプルしながら歩き出したにゃんこ先生を見て、サラサがため息をつく。&lt;br /&gt;「この状況でも自分を猫だと認めようとしないんですね……で、どうするんですかこれ」&lt;br /&gt;「そうですねぇ……」&lt;br /&gt;間をおいて自分に害がないことを確認しながら、上の空でアイカが応える。&lt;br /&gt;その前で、勝ち誇った顔で屋根の上の黒猫は、マタタビブレードをくわえたままニヤリと笑い、ニェニェニェと声を上げた。&lt;br /&gt;イラッとしたのか、アイカがポチッと車椅子の脇のボタンを押す。&lt;br /&gt;途端。座席の一部がガションガションガションと重低音を立てながら変形し、照準装置が彼女の顔の前に回転し、横から射撃用ライフルの銃口がせりあがった。&lt;br /&gt;彼女が覚めた目で、ボタンで照準を調整するのを見て、わなわなとサラサが手を震わせている。&lt;br /&gt;「くっ……わしは……わしはにゃんこ先生だぞ……」&lt;br /&gt;マタタビブレードの魔法の香りに屈しそうになりながらも、二足歩行の太った猫は足を踏み出した。&lt;br /&gt;体中から汗を垂れ流しているため、妙にしっとりしている。プルプルしている様が実にシュールだ。&lt;br /&gt;「伝説の剣豪が……マ……マタタビごときで……マタタビごときでぇぇ！！」&lt;br /&gt;気合で魔香を吹き飛ばしたのか、彼はズンッと空気を揺らして魔力を噴出させ、そして腰の剣を抜き放った。&lt;br /&gt;「ドスよ！　貴様にこのあたりの縄張りは渡さんッ！！」&lt;br /&gt;剣を大上段に構えながら、彼が大きく跳躍する。&lt;br /&gt;周囲の視線がにゃんこ先生に集中し、彼のあまりの跳躍力を予測していなかったのか、ドス猫がポカンとして硬直する。&lt;br /&gt;「あ」&lt;br /&gt;そこでアイカが、しまった、と言った感じで呟いた途端、彼女の車椅子からライフル弾が発射された。&lt;br /&gt;それは丁度にゃんこ先生とドス猫が直線上に重なる位置で、ドズンッとにゃんこ先生の背中にめり込んだ。&lt;br /&gt;「ぶぅぁぁぁああ！！！」&lt;br /&gt;なにやら陰惨な悲鳴を上げながら、銃撃の勢いで空中でぐるんと回転したにゃんこ先生が、そのままドス猫に激突する。&lt;br /&gt;回転している最中に、さすが伝説の剣豪と言ったところか、剣を振りぬき、それがマタタビブレードを両断するのがアイカ達の目に見えた。&lt;br /&gt;そのままライフル弾で空中に跳ね上げられて、伝説の剣豪が工場の裏側に消えていく。&lt;br /&gt;突然のことに呆然と砕けたマタタビブレードを見つめるドス猫と、魔香が消えたのか、周りの猫たちの目の色が元に戻っていく空気を感じながら。&lt;br /&gt;アイカは&lt;br /&gt;「もうっ。余計な根性みせなければすぐ終わりましたのに」&lt;br /&gt;と身も蓋もない怒り方をして、車椅子のライフル銃を収納してから、きびすを返した。&lt;br /&gt;「さて。わたくしは生徒会室に戻って、作業の続きに取り掛かりますわ～」&lt;br /&gt;そのさっぱりした声は、地域がら冬が長いザインフローの空に吸い込まれて消えていった。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　次の日。ロッタのみならず、ゼマルディ、そしてクヌギとにゃんこ先生、フィルとリンがそろって欠席した生徒会で。&lt;br /&gt;センは、深刻な顔で、目の前に山積まれた書類を見ていた。&lt;br /&gt;あれから徹夜でアイカ達が頑張ったのだが、クヌギとゼマルディは根こそぎ魔力を吸い取られ仮死状態、フィルとリンはマタタビブレードの魔力に当てられ、しばらくは発情状態が続くということで病院に隔離。&lt;br /&gt;どうやら彼女達の遺伝子の中で、天敵ともいえる耐性のない、官能を刺激するアルコールのような魔力兵器だったらしい。&lt;br /&gt;ある意味どんな実弾兵器よりも恐ろしい兵器だ。&lt;br /&gt;にゃんこ先生は背中にライフル弾の直撃を受け、ヘルニアが再発したらしかった。&lt;br /&gt;アラリスは生理痛が悪化したロッタの看病で、今日は生徒会室に来ていない。&lt;br /&gt;そんな状況で作業が終わるわけもなく、今日、さらに他の生徒会から決算案が提出され、作業量は昨日の三倍ほどまでに膨れ上がっていた。&lt;br /&gt;真剣な顔で自分を見ている生き残りの生徒会員を見回し、センは目の前の書類を、そっと脇に避けて、息をついた。&lt;br /&gt;今は三時半。四時になったらまた予算案が増えることになる。&lt;br /&gt;「さて……」&lt;br /&gt;彼はそう言って、実にあいまいな顔で笑った。&lt;br /&gt;「帰ろうか」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;結&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>ラルロッザ ショートストーリー</dc:subject>

<dc:creator>マツサガシン</dc:creator>
<dc:date>2009-03-03T21:15:25+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-4134.html">
<title>ラルロッザの学園都市　ＳＳ２８</title>
<link>http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-4134.html</link>
<description>ギャグ編　ＳＳ２８　家政婦は湯煙の向こうに 　下町での買い物を終え、学園寮に戻ろ...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #cc0033;font-size: 1.2em;&quot;&gt;&lt;strong&gt;ギャグ編　ＳＳ２８　家政婦は湯煙の向こうに&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　下町での買い物を終え、学園寮に戻ろうとしていた夏妖精の少女、アルヴァロッタ・アークシーは、沈黙しながら眼下の少女と見詰め合っていた。&lt;br /&gt;自分を殺意を込めた目で見上げているその子は、やけに小さい身体に、お尻の辺りからぴょこんと九本の黄色いふさふさした尻尾を伸ばした女の子だった。&lt;br /&gt;薄汚れた家政婦の服（メイド服）を着ている、見るからに平民だ。&lt;br /&gt;本来なら平民が貴族であるロッタを真正面から、明らかに殺意のこもった瞳で見つめることは許されるべきことではないのだが。&lt;br /&gt;ほぼ治外法権状態のこの学園都市では、まぁ時たま見る光景ではあった。&lt;br /&gt;しかしこの場合、ロッタが戸惑っているのは。&lt;br /&gt;身に覚えがありすぎて対応に困っているということだった。&lt;br /&gt;ドラゴン族の国民アイドル的人気を誇っている生徒会長、センシエスタ・ノートランドと付き合っていて、あまつさえ子供を持っている（いろいろありましたがロッタの子ではないです）彼女は、学園内からもいろいろな勢力から恨みを買っている。&lt;br /&gt;だからというわけではないのだが。目の前にちょこんと仁王立ちになっている小さなメイドを押しのけていくべきなのか、それとも声をかけるべきなのかどうか分かりかねていたのだ。&lt;/p&gt;&lt;p&gt;「……やっと見つけた……」&lt;br /&gt;ボソリ、とそのとき、薄汚れたメイド少女が口を開いた。&lt;br /&gt;金色というよりはキツネ色をした長い髪の家を、地面に引きずるほどのポニーテールにまとめている。&lt;br /&gt;尻尾も合わせると十本のふさふさが揺れている。&lt;br /&gt;わずかに震えるその声に、ロッタはバスケットを持ったまま苦笑いをして、極力刺激しないように言った。&lt;br /&gt;「あ……あのぉ、あたし行っていいかな？　特に用がないなら……ちょっと忙しいんで……」&lt;br /&gt;「黙れこの淫乱妖精！」&lt;br /&gt;明らかに殺意をこめた怒鳴り声が周囲に響き、学生でにぎわっていた通りが、一瞬シン……と静まり返る。&lt;br /&gt;そう呼ばれるのは慣れているので、ロッタはハァ……とため息をついてから口を開きかけた。&lt;br /&gt;それにかぶせるように、キツネのような少女はスカートに手を突っ込んでごそごそやりながら、涙をこんもりとためた目でロッタをにらんだ。&lt;br /&gt;「も……もう逃がさないんだから！！　ここで会ったが百年目やぁあ！！」&lt;br /&gt;「まぁとりあえず落ち着いて。あたしちょっとやそっとじゃ死なないから、滅多なこと言わない方がいいわよ」&lt;br /&gt;「くゥゥゥゥ！　余裕ぶっこいてる！！　ムカつく！！　この女（あま）ァァ！！」&lt;br /&gt;全然迫力がこもっていない子供声で絶叫すると、彼女はスカートのポケットからズルズルズルズルと、なにやら長い、黒光りするものを取り出した。&lt;br /&gt;どこにそれだけの質量が収まっていたのかと思うくらいの、長大な片刃の剣だった。&lt;br /&gt;切れ味が抜群といわれる東方（シェルンクロスト地方）の刀だ。&lt;br /&gt;鞘を抜き放ち、騒然とし始めた周囲をよそに、キツネ少女は&lt;br /&gt;「往生せいやぁぁああ！」&lt;br /&gt;と絶叫して問答無用にロッタに、大上段に斬りかかってきた。&lt;br /&gt;夏妖精はひとつ、ふぅとため息をついてから、大きな胸をそらすようにして、自分に向かって振り下ろされる、渾身の斬撃をやる気がなさそうに見た。&lt;br /&gt;「殺し合いだ！」&lt;br /&gt;「またアークシー様だ！」&lt;br /&gt;「巻き込まれるぞ逃げろ！！」&lt;br /&gt;「魔獣駆除委員会に連絡しろおおお！！」&lt;br /&gt;と阿鼻叫喚の怒号が飛び交うギャラリーを一瞬横目で見てから、ロッタは頭に向かって正確に振り下ろされた刀を、そちらを見もせずにひょい、と左手の人差し指と中指で挟み止めた、&lt;br /&gt;そしてきょとんとしたキツネ娘の手からあっさりと刀をむしりとり、容赦なくアームロックをキメる。&lt;br /&gt;騒然として、何故かカウントをとっている野次馬の中心で、鉄のような目でロッタはニヤリと笑った。&lt;br /&gt;「悪いけどあたし、相当不意討ちには慣れてるから。声をかけずに後ろから殺るべきだったと思うな」&lt;br /&gt;「くっそぉ！！　殺せっぇえ！」&lt;br /&gt;「まあ話はとりあえず、署で聞くから」&lt;br /&gt;コキッと首を軽く横にひねって黙らせてから、ロッタはバスケットを優雅に手で持ち、そして少女を軽々と肩に担ぎ上げた。&lt;br /&gt;そして鼻歌を歌いながら、モーセのようにギャラリーの波を割って学園へと歩き出す。&lt;br /&gt;唖然とした視線を浴びながら、ロッタは手を上げて学園行きの馬車を一つ止め、中に女の子を投げ込んだ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「……で、獲得してきた賊がこれか……」&lt;br /&gt;一連の話を聞いて、深いため息をついて牛角の少年、ゼマルディ・クラウンが頭を押さえる。&lt;br /&gt;西生徒会の第十五生徒会室の隅、その柱に、口にガムテープを貼り付けられ、後ろ手にロープでぐるぐる巻きに固定されたキツネ娘を、ロッタが無表情で見つめていた。&lt;br /&gt;そして隣の椅子にゆっくりと腰を下ろし、ゼマルディの方を見ながら、彼女が持っていた刀を手で弄ぶ。&lt;br /&gt;コツ、コツとむき出しの切っ先が縛られている自分の前で往復するのを、真っ青になりながらキツネ娘が見ている。&lt;br /&gt;「うん。どうする？　とりあえず奥歯から一本ずつイきましょうか」&lt;br /&gt;「やめろよ……まだいたいけな子供じゃないか。見たところメイドみたいだから、奉公先に連絡して引き取ってもらうだけでいいだろ。どーせまたノートランドのファンとかじゃないのか？」&lt;br /&gt;「そうだと思うんだけど、何せ私殺されかけたから、このまま素直に解放するのもどうかと思うのよ」&lt;br /&gt;「目が笑ってねぇぞ！　どうせ殺してもお前、死なないんだからいいじゃねーか！　日ごろ晴らせない鬱憤を小市民に当てようとしてるんじゃねーぞ！！」&lt;br /&gt;「あれ？　何で襲撃されたあたしが非難されてんの……？」&lt;br /&gt;「自白剤の準備は出来ていますけれど、どうしましょう？」&lt;br /&gt;ほんわかした声で、実に優雅な充実した微笑を浮かべながら、奥の仮眠室から車椅子の人魚、アイカ・マロンが出てくる。&lt;br /&gt;湯気の立つ、ボコボコと異臭のする紫色の液体が入ったフラスコを手で持ちながら、にこっと縛られている少女に微笑みかける。&lt;br /&gt;「イチゴ味にしてみました～」&lt;br /&gt;「静脈にいれましょう」&lt;br /&gt;「やめろ！！　何を白状させる気だ！！」&lt;br /&gt;ゼマルディの全力の突っ込みで止められ、不満そうにアイカが頬を膨らませる。&lt;br /&gt;「何ですの。面白みのない男ですわね。折角こう、健康な検体が手に入ったんですから、もっといろいろ普段出来ないあんなこと！　やこんなこと！　をしたいとは思わないんですか？」&lt;br /&gt;「検体じゃない！！　そういうのはノートランドで試せ！！」&lt;br /&gt;ゼマルディがそういった途端、キツネ少女がビクリとして、そして殺気のこもった目を彼に向ける。&lt;br /&gt;なにやら呻いて抗議しているようだが、よく分からない、&lt;br /&gt;その目の前の床を、刀でキキ……ィ……と引っかきながらロッタはかったるそうに言った。&lt;br /&gt;「うーん……じゃ、もうマルディに任せていい？　あたしリンの世話もあるしもう帰りたいんだけどさ……」&lt;br /&gt;「むしろお前ら二人はとっとと帰ってくれ。あとは俺が何とかするから」&lt;br /&gt;「失礼な。ロッタはともかくわたくしを邪魔者扱いするんですの！？　折角作ったんですのよこれ！！」&lt;br /&gt;「クスリから離れろ。だからノートランドか、もしくはにゃんこに飲ませろよ。お前の協力には感謝するよ」&lt;br /&gt;「てゆうか襲われたのあたしなんですけど。刀で。そのへんについてはスルーするわけ？」&lt;br /&gt;「刀くらいで死ぬんなら、お前もうとっくに死んでるんじゃないか？」&lt;br /&gt;そう言ってゼマルディは、何ともいえないアンニュイな目でキツネ少女を見た。&lt;br /&gt;「君も災難だったな……アークシーを殺りにいくんだったら、もうちょっと考えないと。せめてあと二人くらい伏兵がいれば、いいところまでいけたかもしれないのに……」&lt;br /&gt;「いやだから、被害者はあたし。何？　あたしラスボス？」&lt;br /&gt;そこで、ポン、と音がしてエレベーターのドアが開いた。&lt;br /&gt;そしてやる気がなさそうな顔で、大あくびをしながらドラゴンが中に足を踏み入れる。&lt;br /&gt;入ってきたセンは、縛りつけられている女の子と目を合わせると、しばらくポカンとしたあと、手にしていたカバンをボスッ、と床に落とした。&lt;br /&gt;「アラリス！？」&lt;br /&gt;彼の声を聞いて、ぶわっとキツネ少女が目から大粒の涙を溢れさせる。&lt;br /&gt;「ん゛ん゛ん゛っぅ゛！　んぐふ゛ん゛ッ！！！」&lt;br /&gt;「何やってんだお前！？　いや何をされてるんだ！？」&lt;br /&gt;懸命にうなずいている彼女と自分の彼氏を見て、ロッタは大きくため息をついた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　センの背後に隠れて、九本の尻尾を孔雀の羽のように広げ、フーッ、フーッとロッタに威嚇を繰り返しているキツネ少女を見てから、ロッタは重苦しく低い声を発した。&lt;br /&gt;「誰よその女……」&lt;br /&gt;「誤解だ」&lt;br /&gt;即答したセンにゼマルディが首を振る。&lt;br /&gt;「とりあえず怒られたらそう言うという条件反射はやめろ」&lt;br /&gt;ひとまず生徒会員は席についているが、余程恐ろしかったらしく、アラリスと呼ばれたメイドはセンの背後から動こうとしなかった。&lt;br /&gt;体中の毛が逆立って、ブルブルブルブルと震えている。&lt;br /&gt;「あたし殺されかけたんだけどさ……何？　いつの女？　何ヶ月前の女？」&lt;br /&gt;「生々しい話はやめろよ……」&lt;br /&gt;「マルディは黙っててくれない？　これ、家族の問題だから」&lt;br /&gt;「ま……まぁ落ち着けよ。悪気があったわけじゃないんだろうし……」&lt;br /&gt;懸命にロッタをなだめようとしているセンが、別に自分が悪いことをしているわけでもないのに段々と青くなっている。&lt;br /&gt;反面イラつきを押さえようとせずに、ロッタはキリキリと刀の切っ先で床に傷をつけながら、目だけは笑っていない顔で彼を見た。&lt;br /&gt;「悪気ＭＡＸじゃん？」&lt;br /&gt;「いや……え？　何？　お前殺されかけたの？　無理だろ？」&lt;br /&gt;「たとえそれが無理なことだったとしても、やっていいこととやって悪いことがないかしら！？」&lt;br /&gt;ロッタがそう言って、大理石の床に、絨毯ごとズン、と刀を突き刺して周りを見回す。&lt;br /&gt;「あんた達はラスボスがラスボスであるという理由だけで倒しにいく自主性のない勇者であっていいっていうの！？　違うでしょ！！　あたし達はあたし達の意思で生きていかなければいけないのよ！？」&lt;br /&gt;「何言ってんだかわかんねぇよ。てゆうかノートランド、知り合いなのか？」&lt;br /&gt;ゼマルディに聞かれ、センは半歩ほどロッタから距離をとりながらうなずいた。&lt;br /&gt;「あ……ああ。いつの女とか、そういうことじゃなくてだな……」&lt;br /&gt;「他に何の選択肢が残ってるっての」&lt;br /&gt;「いや、俺の屋敷の、まぁつまり、東のフェルンクロストにある、ノートランド本家のメイドだ……」&lt;br /&gt;そこまで言ってセンはポカンとした周囲をよそに、背後で震えているアラリスを見た。&lt;br /&gt;そして呆れたように口を開く。&lt;br /&gt;「……お前、もしかして徒歩で来たの……？　ここまで……？」&lt;br /&gt;「な……長かった……長かった……ものすごい長い道のりでした坊ちゃま！！」&lt;br /&gt;バッ、とセンの首に抱きつき、アラリスは両の目からものすごい勢いで涙をこぼし始めた。&lt;br /&gt;「ひもじくてひもじくて死ぬかと……死ぬかと思いました！！」&lt;br /&gt;「てゆうかマジで殺されかけてたような……」&lt;br /&gt;「坊ちゃま！！　アラリーが来たからにはもう安心です。奴ですか？　奴が悪いんですね！？」&lt;br /&gt;横柄に指を指され、ロッタがピクリと鼻の脇の筋肉を痙攣させる。&lt;br /&gt;その視線におびえるようにセンの背後に隠れ、アラリスはガクガク震えながら続けた。&lt;br /&gt;「もう安心してください！！　今お助けします！！」&lt;br /&gt;「メイドって、明らかにこれ、初等部くらいの子供じゃんか。フィルといい勝負だろ」&lt;br /&gt;その様子をボーッと見つつ突っ込んだゼマルディに、センが腰を浮かしかけているロッタからアラリスを庇いながら言った。&lt;br /&gt;「いや……ノートランド家のメイドは家督制で、こいつは本家本元の、由緒正しきメイドの分家の、その分家の子供だ。一応、生まれた女の子は５歳くらいから既にメイドの教育をされてるから……」&lt;br /&gt;「お前何歳の時にその子にツバつけたんだ……？　それ、年齢詐称（フィル）じゃなくて、モノホンの一桁……」&lt;br /&gt;「刺激を誘う台詞を吐くな！　アークシーを止めろ！！」&lt;br /&gt;刀をずるっと床から抜き放ち、目を赤く発光させはじめたロッタを見てセンが絶叫する。&lt;br /&gt;「え？　何？　俺なんか悪いことした！？」&lt;br /&gt;「頑張ってください坊ちゃま！　アラリーはここで、渾身渾命坊ちゃまを応援しています！！」&lt;br /&gt;両手を脇で固め、背後でしっかりとうなずいたアラリスにセンは激しく首を振った。&lt;br /&gt;「いやいやいや何で戦う流れになってんの！？　お前俺のこと助けに来たんじゃなかったの！？」&lt;br /&gt;「無理です坊ちゃま！！」&lt;br /&gt;「しっかりと諦めましたわね……」&lt;br /&gt;アイカが頬に指を当て、ふぅとため息をつく。&lt;br /&gt;「何ですの……ノートランド本家のメイドさんですか。詰まりませんわ」&lt;br /&gt;「これ以上面白い獲物はいないと思うけどな……」&lt;br /&gt;ロッタがガタリと椅子から立ち上がって、刀を杖にセンを見下ろす。&lt;br /&gt;「まぁ殺す前にもう少し釈明させてもいいんじゃないでしょうか？　チャンスをあげましょうよ。ロッタ」&lt;br /&gt;「殺すの！？　お前何したんだ！？」&lt;br /&gt;状況を把握できていないセンがビクッとする。&lt;br /&gt;「アラリーは坊ちゃまを惑わす淫乱妖精を征伐に来たのです！！　みんなで奴だけは殺すと決めたのです！！」&lt;br /&gt;センをぐいぐいと前に押しやりながらアラリスが、子供とは思えない危険な台詞を連発する。&lt;br /&gt;「じゃあお前が戦えよ！！」&lt;br /&gt;「アラリーはまだ死にたくはありません！！」&lt;br /&gt;「意味わかんねぇぇ！！　何？　俺この状況でどういう行動を取れば正解なの！？」&lt;br /&gt;「なんかもうなりふりかまわなくて、見てるこっちが申し訳なくなってくるな」&lt;br /&gt;「ええ」&lt;br /&gt;ゼマルディとアイカの前で、しかし刀を振り上げかけていたロッタは、寸前のところで沈静したのか、額を押さえてまた椅子に座りなおした。&lt;br /&gt;そして大きくため息をついてアラリスを見る。&lt;br /&gt;「……子供だから結界も問題なくすり抜けてきたのね……親御さんが心配してるわよ。早く帰りなさい」&lt;br /&gt;「うるさぁい！　知ったような口をきくな！！」&lt;br /&gt;キャンと言葉で噛み付かれ、ロッタはしかし、それで完全に対抗する気を失ったのか、興味がなさそうに腕組みをして彼女を見下ろした。&lt;br /&gt;「ノートランドも。本家から来たんでしょ？　はやいところ送り返さなきゃ。ただでさえあたし達は今、何かもうとてつもなく危うい橋に乗っかってるんだから、これ以上の面倒ごとはごめんよ？」&lt;br /&gt;「いや、送りかえすつっても……そもそも、お前なんでここに来れたんだ？　徒歩でも一ヶ月はかかるだろ。他のメイドは止めなかったのか？　金は？」&lt;br /&gt;センに聞かれ、アラリスはロッタの視線からじりじりと身体を離しながら答えた。&lt;br /&gt;「お金は、みんなで少しずつ出したのです。でも、二週間目になくなって、それから何も食べてませんです」&lt;br /&gt;そう言ってから初めて、彼女は自分が今、ものすごい空腹のさなかにいることを思い出したらしかった。&lt;br /&gt;よく見れば目にクマが浮いていて、ただでさえ小さい頬がこけている。&lt;br /&gt;ハッとしておなかを抑え、ヘナヘナとその場にしゃがみこむ。&lt;br /&gt;「そういえば……おなかがすきました……」&lt;br /&gt;「おい、大丈夫か？　何かお前、ものすごく魔力が小さくなってるな。どのくらい飯食ってないんだよ」&lt;br /&gt;「ひいふうみい…………ななつの三倍ですから、そろそろ三週間くらいになります……」&lt;br /&gt;「救急馬車呼べぇえ！！」&lt;br /&gt;慌ててセンが声を張り上げる。&lt;br /&gt;ポカンとしてゼマルディとアイカが、また顔を見合わせた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　アラリスがザインフローに来ようと決意をしたのは、たまたま魔導テレビの特番でやっていた、学園都市の温泉めぐりの番組に、ロッタが学生アイドルの代表として出ていたのを見たかららしかった。&lt;br /&gt;「あぁアレ……」&lt;br /&gt;頭を押さえてロッタはまた深くため息をついた。&lt;br /&gt;第一病院に搬送したアラリスは、今のところ点滴をされて眠っている。&lt;br /&gt;なんだかいろいろ麻痺していて自分でも分からなくなっていたようだが、医者はこれだけの消耗の中、動いていたこと自体が奇跡だと言っていた。&lt;br /&gt;結構魔力の格式が高い種族らしく、体内の魔力が多かったため死には至らなかったようだが、普通の魔族が三週間も断食したら、普通死ぬ。&lt;br /&gt;眠っているアラリスを見下ろして、センは困ったように頭をガシガシと掻いて口を開いた。&lt;br /&gt;「で、お前の乳があまりにもでかかったから、みんなでお前を殺すことを決めたらしい」&lt;br /&gt;「そこからそう繋がる思考の流れをもっと詳しく聞きたいわね」&lt;br /&gt;「本人に聞けよ……てゆうか、ノートランド家の中じゃお前相当有名人だから、テレビに普通に出てるのとか、結構ヤバいのかもしれないな……」&lt;br /&gt;ザインフロー学園の第一貴族生徒会となると、美貌や才能、魔力や格式をかね揃えている者が大半を占める。&lt;br /&gt;今日は来ていないが、怪鳥族のクヌギ・トランスが世界の陸上大会で優勝成績を残しているのが、その最たる例だ。&lt;br /&gt;センやロッタは、特に身分などに気をつけるようなそぶりも気分もないため、最近は学業の傍ら近くのテレビ局にレギュラーとして出演していることが多かった。&lt;br /&gt;ロッタは副収入が増えると喜んでいたが、そう楽観もしていられないようだった。&lt;br /&gt;「でもあの番組って、この地域にしか電波は飛ばされてないんじゃなかった？　あたし、そう聞いたから出てって脱いだのよ」&lt;br /&gt;「いまだに、俺もその『出て→脱ぐ』のプロセスに至るまでの思考の流れがわかんねぇよ」&lt;br /&gt;「いーじゃない別に。バスタオルはしてたんだから。いまさら失うものは何もないわよ。あれでバカなカモ（男）がつれるんだったらいい撒き餌よ。この前写真集だって出たんだから、宣伝するに越したことはないじゃない」&lt;br /&gt;「すっかり何か業界に染まったアイドルになりやがった……いや、まぁそれはいいんだけどさ……まぁ多分魔法だろうな。こいつら、俺のことが気になったか何だかで勝手にこっちの電波調べてたんだ。普通メイドは、屋敷の外には出れないからさ」&lt;br /&gt;そこまで言ったところで、アイカが息をついて、指を顔の前でくるくると回した。&lt;br /&gt;「でも、一応は格式があるメイドなんでしょう？　いなくなって気づかれないってことはあるんですか？　いくらなんでも分かりそうなものですけど」&lt;br /&gt;「こいつは孤児だ。俺が拾ってきた」&lt;br /&gt;センがそう言うと、ロッタが発しかけていた言葉を飲み込んだ。&lt;br /&gt;「分家の下に、そういう子を連れてきて放り込んでおいたんだけど、どうも、俺がいなくなってから監督が上手く行き届いてないみたいだな……ぶっちゃけ、庭師に近いから、別にいなくなっても困ることはない」&lt;br /&gt;「そういうことね……」&lt;br /&gt;「じゃ、金を出し合ったってのは、その分家の下のメイドがみんなでってことか？」&lt;br /&gt;ゼマルディが聞くと、センは少し考えてからうなずいた。&lt;br /&gt;「まぁ……そうだろうなぁ。よほどアークシーの乳が逆鱗に触れたらしい」&lt;br /&gt;「分かったわよ……もうあたし番組で脱がない……めんどくさい世界ね……」&lt;br /&gt;「そういう問題ではないと思いますけど……」&lt;br /&gt;「どうすんだよ？　送り返せないのか？」&lt;br /&gt;「つっても、俺は今実家とは断絶状態だから、無理だな。逆に俺があっちに接触したら、大問題必至だ。一応ルイに言って、連絡してもらってはみる。でも、そもそも俺たちはここに逃げ込んだ形だから、期待は出来ないぞ」&lt;br /&gt;携帯を取り出し、センがボタンを押しながら病室を出て行く。&lt;br /&gt;息をついてロッタが、鞘に収めた刀に寄りかかるようにして壁に背をつく。&lt;br /&gt;「はるばるあたしを殺しにねぇ……ハタ迷惑な話だわ。自分が死に掛けてりゃ世話ないじゃない」&lt;br /&gt;「お前はもう少し子供を大切にしろよ……」&lt;br /&gt;「いっそ殺されてあげれば納得するんじゃありませんこと？」&lt;br /&gt;「何でひとごとだと思ってそう面倒くさがるかな！？」&lt;br /&gt;疲れたように彼女が息をついたとき、首を振りながらセンが入ってきた。&lt;br /&gt;「ルイがここに来るらしい。でも無理だって言ってヒステリってたぞ」&lt;br /&gt;「じゃあ無理だな。あぁ、にゃんこに聞いてみろよ」&lt;br /&gt;「電話が繋がんねぇ」&lt;br /&gt;「またおっぱいパブじゃないですか？　地下だから携帯の電波が届かないんですのよ」&lt;br /&gt;「使えねぇ伝説の剣豪……」&lt;br /&gt;ゼマルディがぼやいた時、軽く呻いてアラリスが目を開けた。&lt;br /&gt;そして自分を見下ろしているセンを見上げ、ほっと安心したような顔になる。&lt;br /&gt;「坊ちゃま……」&lt;br /&gt;「今魔力の濃縮液を点滴してるから、しばらくそのままでいろよ」&lt;br /&gt;「うう……お助けしようと馳せ参じたのに、無様な限りです……」&lt;br /&gt;「何？　お前ら俺が乳で圧死するとでも思ったの……？」&lt;br /&gt;「おのぞみなら殺すわよノートランド」&lt;br /&gt;「ひぃっ！　奴がいる！！」&lt;br /&gt;ガタンと起き上がろうとしたアラリスの頭を枕に戻し、センがまぁまぁと二人をなだめる。&lt;br /&gt;「坊ちゃま。アラリーはみんなに託されたこの想いを、坊ちゃまに託します。必ずや奴を……奴を討ち倒してください……」&lt;br /&gt;ガッとセンの手を握ったアラリスに、思わずゼマルディが突っ込んだ。&lt;br /&gt;「助ける対象にゆだねてどうすんの？」&lt;br /&gt;「アラリーの力が至らないばかりに……」&lt;br /&gt;「…………お前何しに来たの……？」&lt;br /&gt;「彼女奴の処刑をば……」&lt;br /&gt;「あぁ、もういいしゃべるな……」&lt;br /&gt;ビクビクとしながらセンがそう言って、横目でロッタを見る。&lt;br /&gt;それに呆れたように&lt;br /&gt;「怒らないわよ」&lt;br /&gt;と言ってから、夏妖精はキツネ娘を見た。&lt;br /&gt;「まぁ、殺されてあげるわけにはいかないけど、見逃してあげるくらいなら別にいいわ」&lt;br /&gt;両手で柄ごと刀を持ち、メキメキメキとへし折って、ガランと床に投げ捨ててからロッタは目を細めて笑った。&lt;br /&gt;「そういうことで仲直りしない？」&lt;br /&gt;「命だけは……」&lt;br /&gt;へし折れた刀と共に心もへし折れたらしく、アラリスがプルプル震えながら命乞いを始める。&lt;br /&gt;それに寛大にうなずいてみせてから、ロッタはセンを見た。&lt;br /&gt;「じゃーどうすんの？　この子。てかマジで何しに来たの？　マジであたしのこと殺しにはるばる来たの？」&lt;br /&gt;「それが半分、これが半分です……」&lt;br /&gt;よろよろしながら上半身を起こし、アラリスは壁にかけてあった汚れたメイド服のポケットに手を入れた。&lt;br /&gt;「半分はちょっと無理っぽいですけれど、半分は達成できました……」&lt;br /&gt;そして中から、くしゃくしゃに歪んだ小さな箱を取り出す。&lt;br /&gt;安っぽい装飾が施された小箱だった。&lt;br /&gt;それをセンに差し出して、彼女は疲れた顔で言った。&lt;br /&gt;「みんなからです……坊ちゃまお帰りにならないので、アラリーがお渡しに来ました……」&lt;br /&gt;「俺に？」&lt;br /&gt;そこで、察したらしくセンはそっと小箱を受け取った。&lt;br /&gt;「ほんとは先輩達は全員止めました……でも、こっそり出てきたんです……本当はみんなで来たかった」&lt;br /&gt;そう言って、アラリスは口をつぐんでしまった。&lt;br /&gt;センは箱の紙を破かないように慎重に開け、蓋を少し開いて中を見た。&lt;br /&gt;そしてすぐ閉め、ポンとアラリスの頭に手を置く。&lt;br /&gt;「……ありがとうなぁ。わざわざ高かっただろう」&lt;br /&gt;そう言って彼は、周りにみせることもせずに、すぐに胸ポケットの奥にそれをしまった。&lt;br /&gt;「みんなで半年お給金ためたのです。それで……それで……」&lt;br /&gt;ひっく、とそこで気がゆるんだのか、アラリスはまた目からボロボロと涙をこぼし始めた。&lt;br /&gt;その頭を撫でてやりながら、センが軽く息をつく。&lt;br /&gt;そして顔を覆って泣き出してしまったアラリスに、そっと言った。&lt;br /&gt;「無理することなかったんだぞ。俺の方こそ、ずっと何の連絡もなくて悪かった」&lt;br /&gt;「……坊ちゃまは……悪くないです……悪いのは……」&lt;br /&gt;そこで彼は、慌ててアラリスの口を軽く手でふさいだ。&lt;br /&gt;そして背後で少し青くなったロッタと目配せをする。&lt;br /&gt;ロッタは、察したのか病室を出て行こうとしていたゼマルディとアイカの背後に続き、そして病室を締めた。&lt;br /&gt;エレベーターで階下に下りながら、ロッタがボソ、と言った。&lt;br /&gt;「ごめんね。でもあれ以上は聞かないほうがいいと思う」&lt;br /&gt;それを受け、少し考えてアイカが口を開く。&lt;br /&gt;「何ですの？　あの子、何を渡したんですの？」&lt;br /&gt;「魔宝石だったわ。蓄音機能があるタイプのね」&lt;br /&gt;ロッタはそう言って、呆れたように大きく伸びをした。&lt;br /&gt;「みんなとやらの声が詰まってるんでしょうよ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「それで、あの子はどうなりましたの？」&lt;br /&gt;数日後。休日明けにアイカに聞かれ、ロッタは登校途中の道、一瞬きょとんとしたあと、肩に担いでいたカバンを担ぎなおした。&lt;br /&gt;「え？　あぁ、あのキツネ？　うん。役に立ってるわよ。意外といい拾い物したわ」&lt;br /&gt;「使ってるんですか……」&lt;br /&gt;「リンと精神年齢がほぼ同じだから、いい感じにあの子を操れる家政婦が手に入ったわ。何かいいわね、メイドって……」&lt;br /&gt;アンニュイに言ってから、ロッタはわき道から合流したセンの膝裏に&lt;br /&gt;「おはよう」&lt;br /&gt;と挨拶代わりに皮靴のつま先をめり込ませながら言った。&lt;br /&gt;そして悶絶している彼に聞く。&lt;br /&gt;「キツネは？」&lt;br /&gt;「あー、やっぱダメだ。ルイにノートランド家に連絡とってもらったけど、それだって裏ルートの連絡だし。表立って送り出すことも受け入れることも無理。脱走扱いだな」&lt;br /&gt;「じゃやっぱり飼うしかないわねぇ……」&lt;br /&gt;「ペット扱いですか……」&lt;br /&gt;「いいんじゃない？　実力差も分かったみたいだし、適当にあしらっておけば、素直に家事もこなすし、いい子よ」&lt;br /&gt;そう言ってロッタは、ふとカバンの取っ手に違和感を感じたのか動きをとめた。&lt;br /&gt;そしてちょいちょい、と弄ってから立ち止まり、カバンを地面に置いてからおもむろに蓋を開ける。&lt;br /&gt;バシュンと軽い音がして何かが中から、ロッタの顔面めがけて飛び出した。&lt;br /&gt;それを軽々と指先で白羽取りをして、彼女はカバンの蓋を閉め、唖然としている二人を尻目に、鼻歌交じりで歩き出した。&lt;br /&gt;指先に摘んだ小型ナイフがベキ、とへし折られる。&lt;br /&gt;どうにも、蓋にスプリングをとりつけて飛び出すように細工されていたらしい。&lt;br /&gt;「あぁ。またダメだったか」&lt;br /&gt;センがそう呟いて歩き出す。&lt;br /&gt;アイカはしばらく何かを考え込んでいたが。&lt;br /&gt;やがてニッコリと微笑んで、彼の袖を引っ張り。&lt;br /&gt;「今度あの子と、もっと効果的な人間の苦しめ方について話をしたいんですけれど……」&lt;br /&gt;「何でだよ……」&lt;br /&gt;「最近のロッタは強くなりすぎていますので、別の方面から攻めようかと……そうしたらもっと違うロッタの顔が見れるんじゃないかと……」&lt;br /&gt;「自分でやりなさいよ……」&lt;br /&gt;ああおくびをしてセンが歩き出す。&lt;br /&gt;その胸には、ペンダントヘッドに挟み込まれた赤い魔宝石がかけられていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;結&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>ラルロッザ ショートストーリー</dc:subject>

<dc:creator>マツサガシン</dc:creator>
<dc:date>2009-02-22T02:22:28+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-a75d.html">
<title>ラルロッザの学園都市　ＳＳ２７</title>
<link>http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-a75d.html</link>
<description>ギャグ編　ＳＳ２７　怪盗馬ヘッド 　厳戒態勢が敷かれているザインフロー魔導学園の...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #cc0033;font-size: 1.2em;&quot;&gt;&lt;strong&gt;ギャグ編　ＳＳ２７　怪盗馬ヘッド&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　厳戒態勢が敷かれているザインフロー魔導学園の入り口で、第十五生徒会員達は、反面うきうきした顔で正面城門を見つめている小さな吸血鬼、フィルレイン・ラインシュタインを見ていた。&lt;br /&gt;当のフィルは、青い顔をしている仲間達とは裏腹に、うきうきを前面に出した顔で、今か今かと城門の向こうを見つめている。&lt;br /&gt;しばらくして、軍隊が城門周りや外に配置された中で、音を立てて跳ね門が開いた。&lt;br /&gt;「アーンガット！！」&lt;br /&gt;大声で執事の名前を呼んで、フィルがちょこちょこと走り出す。&lt;br /&gt;入ってきた馬車から降りてきたのは、体長二メートルは超えるかというほどの巨大な、黒色の毛並みをした犬だった。&lt;br /&gt;彼……動物の姿をした魔獣、ヘロケルンである執事、アーンガットはフィルを見ると、その緋色の目を金色に輝かせて駆け寄ってきた。&lt;br /&gt;「おじょぉさまああぁあ！」&lt;br /&gt;「アーンガット！　会いたかったよ！　すごく会いたかったよ！！」&lt;/p&gt;&lt;p&gt;彼の首に抱きつき、フィルが何度もほお擦りする。その主の頬をペロペロと舐めながら、アーンガットは言った。&lt;br /&gt;「いや、大きくなられましたな。見違えましたぞ。すっかり大人っぽくなられて……爺は感激でございます。主さまも、今のお嬢様の姿を見たら、感動のあまり卒倒しかねないほどです」&lt;br /&gt;「アーンガットは全然変わりないね！　相変わらずすごく毛並みもいい！」&lt;br /&gt;「ふっははっはっは！！　そう言っていただけると老体に鞭いってここまで来た意味もあろうというものです。サト殿に前回は譲りましたがな。今回ばかりは爺が、お嬢様のお顔を一目でも拝見したくて参りました」&lt;br /&gt;そこでぼってん、ぼってんと腹を揺らしながら……マントを羽織った二足歩行の、太った猫が近づいてきた。&lt;br /&gt;そして両手を広げてアーンガットに向けて大声を張り上げる。&lt;br /&gt;「トラレス！！！　久しぶりではないか！！！」&lt;br /&gt;「その声はシュマルケン！？　何故お前がここにおる！！！」&lt;br /&gt;目を丸くして、黒色の大犬は太った猫を見下ろした。彼、にゃんこ先生は太った腹を突き出しながら、懐かしそうにアーンガットの鼻先を肉球で撫でた。&lt;br /&gt;「いやぁはやぁ、五十年ぶりか？　相変わらず変わらんなぁぁ！」&lt;br /&gt;「そういうお前は少し太ったのではないか？　いや、しかしお前に会えるとは思ってもおらぬかったぞ」&lt;br /&gt;そこまでアーンガットが言ったところで、ぬっ、とフィルの背後に立っていた巨大な影が動いた。&lt;br /&gt;小山のような大きさだが、山ではない。&lt;br /&gt;巨人族の学園理事長、ルバロンである。彼は、やはり巨大な車輪つき点滴台をガラガラと動かしながら、彼らに近づいて身をかがめた。&lt;br /&gt;「お久しぶりですな、アーンガット卿」&lt;br /&gt;「おお。ルバロン理事。失礼。お嬢様があまりにもまぶしゅうて、挨拶を失念しておりました」&lt;br /&gt;「無理もないことです。さて、さっそくですが本題に移りましょうかな。皆、少しばかり会議堂に集まってはいただけないでしょうか？」&lt;br /&gt;丁寧に言われ、にゃんこ先生とアーンガットが顔を見合わせる。&lt;br /&gt;黒色の犬は、背中にフィルを乗せると、のっしのっしと歩き始めた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「さて、今回アーンガット卿にお越しいただいたのには訳がありましてな」&lt;br /&gt;そう言って、壇上に立ち、背景のホワイトスクリーンに教鞭を向けながら、巨人であるルバロン理事が口を開いた。&lt;br /&gt;第五会議堂には、東西南北の四エリアの、それぞれ上級生徒会が集められている。&lt;br /&gt;壇上の席の脇にはにゃんこ先生とアーンガット、そしてフィルの席まで作られていた。&lt;br /&gt;ルバロンが合図をすると、魔導プロジェクターが動き出し、カラカラという音を立てながらスクリーンに画像が映し出された。&lt;br /&gt;囚人が収監される時に取られる写真だ。&lt;br /&gt;……頭部が馬の男性、年齢は十代前半だろうか。それがやる気のない表情で映し出されている。&lt;br /&gt;ハンケンという、結構な権力を持つ魔族だったはずだ。&lt;br /&gt;その写真を教鞭でパン、と叩いて、ルバロンは上級生徒会の全メンバーを見回して言った。&lt;br /&gt;「つい昨日ほどに、西のサバルカンダ魔導刑務所から連絡が入りましてな。知っている者もいるかもしれないですが、この『怪盗馬ヘッド』がこの学園、ザインフローに入り込んだというのじゃ」&lt;br /&gt;それを聞いた途端、ざわざわと会議堂内にざわめきが広がった。&lt;br /&gt;前の方の座席に座っていた西生徒会の生徒会長、ドラゴン族のセンシエスタ・ノートランドが呆れた顔で呟く。&lt;br /&gt;「……ンだよまた逃がしたのか、馬ヘッド」&lt;br /&gt;「何それ？　馬ヘッド？　見たとおりだけどさ……」&lt;br /&gt;隣の夏妖精、彼の彼女であるアルヴァロッタ・アークシーが言う。彼女の脇には十歳児ほどの少女、娘（非認知）のリンフロン・ノートランド・チェルサーが深々と椅子に腰掛けて寝息を立てていた。飽きたらしい。&lt;br /&gt;ロッタの隣で興味がなさそうに欠伸をしてから、車椅子に乗った人魚、アイカ・マロンが口を開いた。&lt;br /&gt;「知らないのですか？　西のサバルカンダ地方では結構有名な怪盗で、貴族の女の子限定で盗みを働く不届き者ですわ。神出鬼没の魔法を使うとか何とか」&lt;br /&gt;「女の子限定……？　何か嫌な予感がしてきた……何盗むのよ、その馬ヘッドは」&lt;br /&gt;「何でも、狙いを定めた女の子にまず白い薔薇を送りつけるらしいです。そしてその娘の身につけているもの……まあつまり、下着を、いかなる手段を用いても追いはぎっていく、つまるところ変態ですわ」&lt;br /&gt;「同じようなのが壇上にいるじゃん！？」&lt;br /&gt;ステージ上のにゃんこ先生を指差し（第十九話参照）ロッタが声を荒げる。&lt;br /&gt;「厄介な性癖の変態がこれ以上増えて、どうなるのよこの世界！」&lt;br /&gt;「まぁまぁ。あなたが狙われてるわけじゃありませんし……余罪は百五十を下りませんわ。逮捕回数も五十回を超えるのですが、そのたびに何故か脱走して、そして下着ドロを繰り返してまた捕まるという、どうしようもない変態らしいです」&lt;br /&gt;「正真正銘の悪魔だわ……」&lt;br /&gt;「一ヶ月くらい前に、西の魔導警察がとっ捕まえて五十九回目の収監をしたって聞いたんだけどな……やっぱまた逃げたか……」&lt;br /&gt;センが呟いてため息をつく。&lt;br /&gt;「てゆうか何でこの学園に……？」&lt;br /&gt;そう言った牛男、ゼマルディ・クラウンの言葉をさえぎるように、ルバロンはパンパンと馬ヘッドの写真を教鞭で叩いてから言った。&lt;br /&gt;「昨日未明、この馬ヘッドから、我がザインフロー学園の生徒である、このフィルレイン・ラインシュタイン嬢に予告上が届きましてな」&lt;br /&gt;懐から白い薔薇と、何か妙な馬の刻印がついている封蝋がされたメッセージカードを取り出し、彼はひらひらと振った。&lt;br /&gt;「このようなものが彼女の寮のポストに届けられたんじゃ。たまたまわしが居合わせましてな。全校生徒には秘密で、今現在この学園内は特Ａ級の厳戒態勢が敷かれておる」&lt;br /&gt;「はぁ……？　ラインシュタインの下着なんて手に入れてどうするつもりなんでしょう？」&lt;br /&gt;ゼマルディの隣に座っていた盲目のドラゴン、ルイシエンタ・ノートランドがそう言うと、隣で興味がなさそうに本を読んでいた幽霊、サラサ・メルがぼんやりと答えた。&lt;br /&gt;「あー……何か、馬ヘッドってアレです。あのロリコン友の会（ＳＳ第十三話参照）の重鎮らしいですよ。今回アークシー様はそんなに警戒しないで大丈夫ですよ。多分ツルペタしか狙われませんから」&lt;br /&gt;「何それ！？　ロリコンの下着ドロ！？　最悪じゃん！？」&lt;br /&gt;騒いでいる西生徒会を尻目に、ルバロンは一つ咳をすると、壇上のアーンガットに目をやった。&lt;br /&gt;「皆も知っての通り、ラインシュタイン嬢は西の大魔王メルヘドス卿の娘であられる。もし万が一のことが起こっては大変なため、空間跳躍の秘法（禁呪です）で、アーンガット卿に急遽お越し願ったわけじゃ。生徒会の諸君には、馬ヘッドを捕獲するための手伝いをして欲しいわけでな」&lt;br /&gt;コホンと喉を鳴らし、黒色の大型犬、アーンガットが口を開く。&lt;br /&gt;「お初にお目にかかりまする。ラインシュタインファミリーの執事をしております、アーンガット・トラレスと申します」&lt;br /&gt;彼の太い響く声を聞いて、さすがに生徒会員達がシーン……と静まり返る。&lt;br /&gt;それはそうだ。全魔王中最強といわれる西大魔王、メルヘドス・ラインシュタインの執事。&lt;br /&gt;つまるところ、実質的最強マフィアのナンバー２だ。&lt;br /&gt;「今回はラインシュタインファミリーが総力を挙げ、馬ヘッド撃滅……拿捕に向けて助力をいたす運びになりました。至らないところも多々あるかと思いますが、皆様のご協力を仰ぎたく存じます」&lt;br /&gt;「今さりげなく撃滅とか言ったぞ……」&lt;br /&gt;ひそひそとセンが、反対側の脇で小さく縮こまっていた怪鳥族の大男、クヌギ・トランスに囁く。&lt;br /&gt;それを煩わしそうに右手で振り払い、クヌギはさらに背中を丸めて小さくなった。&lt;br /&gt;心なしかこちらを見て、アーンガットがピカーンと目を赤く光らせているような気もする。&lt;br /&gt;（フィルと付き合っているクヌギは、西のラインシュタインファミリーから命を狙われています）&lt;br /&gt;「……でも空間跳躍の秘法って、一年に一度しか使えないんでしょ？　こりゃラインシュタインファミリー、本気だね……」&lt;br /&gt;ロッタが頬に指を当てて考え込む。そして彼女は右手をあげて、声を出した。&lt;br /&gt;「あ、一つ質問よろしいですか？」&lt;br /&gt;「おお、アルヴァロッタ嬢！　お久しゅうございまする」&lt;br /&gt;アーンガットに礼儀正しく挨拶され、会釈を返してからロッタは立ち上がった。&lt;br /&gt;そしてスクリーンの馬ヘッドを見上げながら、軽く首をかしげる。&lt;br /&gt;「手伝うって言ったって、何すればいいんですか？」&lt;br /&gt;「ええ。今回はラインシュタインファミリーに喧嘩を売るというのがどういうことなのかを、身に染みて世に知らしめるために、彼奴を生け捕りにするのが最大の目的です。Dead or Aliveでありませんので、ご注意ください。半殺しにすることは構いませんが、後の拷問はこちらで行いますゆえ、皆さんにはこちらの道具を配布させていただきます」&lt;br /&gt;「今何か、さらりと恐ろしいこと仰いませんでした？」&lt;br /&gt;ロッタの問いかけが聞こえなかったのか、アーンガットは、ルバロンの指示でカートを引いてきた生徒にうなずき、山盛りに盛られたカプセル型のものを持たせた。&lt;br /&gt;「特製魔導爆弾です。まあ、口で言うよりも実演して見せた方が早いでしょう」&lt;br /&gt;そう言って彼が、隣のにゃんこ先生と目配せをする。&lt;br /&gt;うむ、とうなずいて、二足歩行の猫はステージ上をでっぷんでっぷんと歩いて、魔導爆弾を一つ生徒から受け取った。&lt;br /&gt;それを&lt;br /&gt;「受け取れフリンス！！」&lt;br /&gt;と気合を入れて、いきなりセンに向けて投げつける。&lt;br /&gt;「へぁ！？」&lt;br /&gt;突然のことに対応できずに、センは一瞬ポカンとしたあと、その弾を受け取り――。&lt;br /&gt;瞬間&lt;br /&gt;「あばばばばばばばば！！」&lt;br /&gt;と絶叫してから、体中から電気の火花を放電させた。&lt;br /&gt;数秒後、唖然としている東西南北の生徒会員の前で、感電したドラゴンが、体中の穴から白い煙をたなびかせながら、ドサリとその場に倒れこむ。&lt;br /&gt;「と、まあこういうものです。死にはしませんが、死の一歩手前くらいまでに追い詰め、相手の戦力を一気に無効化できる特製弾です。射擲用のボウガンもお付けしますので、非力な女性でも十分使えます。皆様に配布しますので、とにかく怪しいと思ったら一発ぶち込んでください」&lt;br /&gt;アーンガットが、黒焦げになった夫（仮）に&lt;br /&gt;「ノートランド！？　返事をしてノートランド！！」&lt;br /&gt;と言って揺さぶっているロッタを無視して言う。&lt;br /&gt;そこで慌ててアーンガットを制止し、ルバロンが言った。&lt;br /&gt;「ま……まあ、あくまで保険のようなものじゃ。犯行予告時間は、今日の午前零時となっておる。パニックになるのを避けたかったため皆には今まで言わんでおったが、今が午後の六時なので、あと六時間ほどしかない。生徒会の皆にはそれぞれ街の警備についてもらうことにする。何せ急なことじゃったために、人手が足りんでな……あと、学園の結界を解除する時間がないのじゃ。そういうわけで、宜しくたのむ」&lt;br /&gt;ルバロンが軽く頭を下げる。&lt;br /&gt;その奥で怪しく瞳を光らせながら、アーンガットがクヌギを見てニヤリと笑った。&lt;br /&gt;彼の魔力でコントロールされているのか、ふわりと、三つほど感電弾が空中に浮いた。&lt;br /&gt;「ちなみに」&lt;br /&gt;感電したセンを見捨て、一目散に出口に全力疾走していたクヌギに、矢のようにそれらが突き刺さる。&lt;br /&gt;ドラゴン族の親友と全く同じリアクションで&lt;br /&gt;「あばばばばばばばば！！！」&lt;br /&gt;と絶叫し、黒焦げになって崩れ落ちたクヌギを見て、会議堂内が静まり返る。&lt;br /&gt;「二個以上は、このように致死量になりますので、気をつけてくだされ」&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「そんなことになってるなら、相談してくれればよかったのに」&lt;br /&gt;ロッタが頬を膨らませながら、申し訳がなさそうな顔をしているフィルに言う。言われた金髪の吸血鬼は、苦笑いしてから、傍らのアーンガットを見た。&lt;br /&gt;「最初何のことだか分からなくて。丁度近くに理事長先生がいたからお話したら、こんなおおごとになっちゃったの。でもアーンガットが来てくれるなんて、馬ヘッドさんにお礼をいわなきゃいけないね！！」&lt;br /&gt;力強く宣言されて、ずるりとアイカが車椅子から滑り落ちそうになる。&lt;br /&gt;「やっぱり何も理解していませんでしたわね……」&lt;br /&gt;電気球の実験で黒焦げになったクヌギとセンは、今保健室に運び込まれている。&lt;br /&gt;クヌギは相変わらずのタフさ加減で死にはしなかったらしい。&lt;br /&gt;ゼマルディは、これ以上厄介なことになると困るために、リンフロンを連れて一足先に寮に帰っていた。&lt;br /&gt;いきなり男手がゼロになった西生徒会の面々は、困ったように、目の前に鎮座しているアーンガットを見下ろした。&lt;br /&gt;とりあえず東、南、北の生徒会員達は捕獲用電気玉とボウガンを持って、それぞれ学園の警備に当たることになっている。&lt;br /&gt;フィルが入っている西生徒会の面々は、ここ、第五会議堂で夜を明かすことになった。&lt;br /&gt;一応は魔獣駆除委員会も出動しているのだが、何せザインフローの敷地は膨大な広さだ。とてもカバーしきれる者ではないらしい。&lt;br /&gt;本来ならば、警察総出でフィルを守るべきなのだが、今回に限ってはそれが出来なかった。&lt;br /&gt;というのも、ザインフローは特殊な魔力防護壁で球体に覆われており、一定以上の魔力を持つ者の出入りは出来ないように制限されている。それを解除するためには、やはり総合警察や政府、軍隊に出動をかけて学園の地空海を全て覆ってからでなければ出来ず、馬ヘッドの犯行予告は今日の朝方発見されたため、対処ができないということがあったからだった。&lt;br /&gt;確証も何もない、いたずらかもしれないことでいちいち結界を解除していては、他の、危険な魔族の侵入を許してしまう事だってありえる。&lt;br /&gt;苦肉の策でルバロンがとったのは、エネルギーの充填に一年はかかる禁呪、大陸間の大移動が可能な瞬間転移の魔方陣を使用して、フィルの実家に応援を求めるというものだった。&lt;br /&gt;アーンガットやにゃんこ先生のようなケロヘルン（動物のような見た目ですが、人語を解する高等魔獣です）は結界に左右されない。一度に一人しか転移できないため、一番迅速にことに当たれそうなアーンガットを召還したというわけだ。&lt;br /&gt;馬ヘッドも魔族である以上、ザインフローの結界をそうやすやすと突破は出来ないはずなのだが、予告状が届いたのは事実だった。&lt;br /&gt;「とにかく、お嬢様の下着を盗もうなどと破廉恥千万。重罪きわまりない。不愉快指数がＭＡＸを振り切れておりまする。主様の御前に引きずり出して、裏を吐かせねばなりませぬ」&lt;br /&gt;「まったく破廉恥極まりない」&lt;br /&gt;うむ、とうなずいたにゃんこ先生の首筋をむんずと捕まえて引っ張り上げ、ロッタは三白眼のような目で彼を見た。&lt;br /&gt;「そうね……破廉恥極まりないわよね……」&lt;br /&gt;「しかし、ロリコン友の会もついに大々的に動き出してきたか……離せアークシー、先生に対してなんだその態度は」&lt;br /&gt;なにやら言っているにゃんこ先生を前後に振りつつ、ロッタはアーンガットを見下ろした。&lt;br /&gt;「んー……でも、こう言っちゃなんですけど、いたずらじゃないんですか？　本物って確証もないんでしょう？」&lt;br /&gt;「まあ、いたずらならその方がいいですな。しかし、以前にもお嬢様がロリコン友の会の標的にされたことがあったという話を聞きまして、引っかかりましてな。それに、予告状まで出されて何もせんだっては、ラインシュタインファミリーきっての名折れでございますゆえに」&lt;br /&gt;「あはは……ま、まあ、ここ戦場にしないでくださいよ……」&lt;br /&gt;「出来るだけ穏便に事を運ぶつもりでございます。いざとなれば殺りますので、ご安心を。令嬢方にご迷惑はおかけしませぬ」&lt;br /&gt;「今なんか聞いちゃいけない台詞を聞いた気がしますけど……」&lt;br /&gt;「でもアーンガット、本当に久しぶりだね。私ね、アーンガットと一杯お話したいことがあったんだよ！」&lt;br /&gt;あっけらかんと笑ったフィルの顔を見て、黒犬の険しい目が和らぐ。&lt;br /&gt;彼はヘッ、ヘッと舌を出して息をし、彼女に頭を顎を掻いてもらいながら言った。&lt;br /&gt;「お久しぶりでございまする。では馬ヘッドが現れるまで、いろいろお話でもいたしましょうか」&lt;br /&gt;「うん！　一杯遊ぼうね！！」&lt;br /&gt;「誰かあの子に状況を説明してあげて……」&lt;br /&gt;ロッタが頭を押さえて周りを見回す。&lt;br /&gt;それに無言で首を振り、アイカが顔の前で指をくるくると回した。&lt;br /&gt;「てゆうか、何かもう面倒くさいので下着くらいあげればいいじゃないですか……いいじゃないですか、命の危険があるわけじゃありませんし…………」&lt;br /&gt;「あんたはもう、すぐそうやって、自分に実害がないと面倒くさがる！」&lt;br /&gt;呆れた声を発したロッタを見て、隣で幽霊少女、サラサが肩をすくめた。&lt;br /&gt;「でも、下着くらいであたふたする段階は、とっくの昔に通り過ぎてるような……」&lt;br /&gt;「いろいろありましたからね……」&lt;br /&gt;遠い目をしたルイをため息とともに見て、ロッタは彼女達を車座に引き寄せてからしゃがみ込んだ。&lt;br /&gt;そしてバン、と手で床を叩く。&lt;br /&gt;「こういうときこそ原点に回帰しなきゃいけないのよ。あたし達から恥じらいを取ったら一体何が残るっての？　いい？　下着は女の命よ。しかもその、生脱ぎ以外集めないっていうド変態が挑戦状を突きつけてるんじゃない。とっ捕まえて懲らしめようって気にならないの！？」&lt;br /&gt;「どうしてでしょう、何かいまいちインパクトに欠けるような……どうでもいいような……」&lt;br /&gt;アイカがそう言って、ふぅ、とアンニュイなため息をついた。&lt;br /&gt;そしてロッタのことをぼんやりと見る。&lt;br /&gt;「あなたの存在自体が既にイレギュラーすぎて、下着ドロの怪盗くらいで揺らぐシチュエーションじゃなくなっちゃってるんですのよ」&lt;br /&gt;「あたしの存在から否定しないでくれる！？　望んでこんな状況になってるんじゃないわよ！！」&lt;br /&gt;「でも、馬ヘッドは、今回はどうやってラインシュタインから下着を剥ぎ取るつもりなんでしょう？」&lt;br /&gt;そう言ってルイが軽く首をかしげた。&lt;br /&gt;「今までも何百人と下着を剥ぎ取られてますけど、いずれもピッタリ犯行予告の時間に眠らされたり催眠術にかけられたりして、下着をＧＥＴされていますが……」&lt;br /&gt;「ラインシュタインなら、知らずの間に逆襲しておしまいじゃないですか？」&lt;br /&gt;サラサが興味なさそうに言ってから、大きく欠伸をした。&lt;br /&gt;「……私もう寝たいんですけど……」&lt;br /&gt;「じゃあ交替で休みましょうか。ロッタ、わたくしたちはそこら辺で寝てますのであとは宜しく」&lt;br /&gt;「ぶん殴りたくなるほどの危機感のなさねあんたたち……」&lt;br /&gt;「だって、フィルちゃんが黙って下着を剥ぎ取られるイメージが一ミリたりとも湧かないんですもの……」&lt;br /&gt;そうアイカが言った時だった。&lt;br /&gt;フィルと話をしていたアーンガットが、足を踏み出して四人の輪の中に入った。&lt;br /&gt;そして不思議そうに言う。&lt;br /&gt;「男子どもはどうなされた？　お嬢様の一大事というのに、姿がみえませぬな」&lt;br /&gt;「二人はもうじき目が覚めて戻ってくると思いますよ。もう一人は、ちょっと厄介なのが一人いるんで、そっちを担当してもらいました」&lt;br /&gt;ロッタが軽く肩をすくめて答える。&lt;br /&gt;そこで黒犬は、盲目のドラゴンに目をやって、口を開いた。&lt;br /&gt;「おお。そなたはもしやノートランドの妹君ではあられぬか？」&lt;br /&gt;聞かれ、きょとんとしてルイが&lt;br /&gt;「ええ」&lt;br /&gt;とうなずく。アーンガットは次々にアイカやサラサの名前を呼び&lt;br /&gt;「お嬢様がいつもお世話になっております。いつもお電話にて、お話をお聞きしております」&lt;br /&gt;と礼儀正しく頭を下げた。&lt;br /&gt;彼の背にまたがりながら。フィルが嬉しそうに首筋を掻いてやっている。&lt;br /&gt;「とにかく、お嬢様のお下着はこの老体、命に代えても守ってみせまする。ご友人方々、安心してお任せくだされ！！」&lt;br /&gt;胸を張った黒犬に、生徒会女性陣が困ったように半笑いでうなずく。&lt;br /&gt;少ししてロッタが、軽く首をひねってから言った。&lt;br /&gt;「でも、アーンガットさんが出てくるって事は、あながちいたずらの可能性だって線はないんですか？」&lt;br /&gt;「そうだといいのですが……馬ヘッドが収監されていた監獄から脱走したのは事実でする。あの封蝋も偽とは思いがたいですし……」&lt;br /&gt;「うーん……でも、万が一本物でも。まあ正直な話、あたしもフィルフィルが下着をはぎとられるとは思えないんですけど……」&lt;br /&gt;そこまでロッタが言った時、フィルがきょとんとして彼女に返した。&lt;br /&gt;「下着？　私今日履いてないよ」&lt;br /&gt;その瞬間、場の空気が止まった。&lt;br /&gt;近づいてきていたにゃんこ先生までもが停止し、ましてやフィルにまたがられているアーンガットもカチン、と動きを止める。&lt;br /&gt;ロッタが何度か呼吸してから、制服姿のフィルを上から下まで見て、そして言った。&lt;br /&gt;「……パンツ、履いてないの？」&lt;br /&gt;「うん。今日は、何だか理事長先生が危険だって言うから下は水着を着てきたの」&lt;br /&gt;ペラリとスカートをめくったフィルがスクール水着を着ているのを確認し、四人は顔を見合わせた。&lt;br /&gt;「むしろロリコンにはそっちの方が望ましいんじゃないでしょうか？」&lt;br /&gt;ルイに言われ、フィルが怪訝そうにそれに返す。&lt;br /&gt;「えー？　だって、盗むものがなければ諦めて帰ってくんじゃないかなあ？」&lt;br /&gt;「危険は増したと思うわ。いい？　フィルフィル、狙われてるのよ？　そのへん自覚してる？」&lt;br /&gt;ロッタに呆れたように言われ、フィルは軽く考え込んでからうなずいた。&lt;br /&gt;「うん。でも日常茶飯事だしねえ。命（タマ）の取り合いはねえ」&lt;br /&gt;「お嬢様……お強くなられて……」&lt;br /&gt;アーンガットが涙を呑んでいる。&lt;br /&gt;「タマとか言わない。ああもう。こうなったら、フィルフィルが丸裸にされる前に、あたしらが馬ヘッドを捕まえるのよ。分かったら返事」&lt;br /&gt;「出来れば捕まえるのは丸裸になったあとにして欲しい」&lt;br /&gt;真面目な顔で、ダンディな声を発したにゃんこ先生の頭をガッと掴んで、ロッタは全員を見回した。&lt;br /&gt;「いいわね？」&lt;br /&gt;「サー、イエッサー」&lt;br /&gt;やる気がなさそうに女性陣が唱和する。&lt;br /&gt;「にゃんこは何か心当たりはないの？　あの馬ヘッドにさ。同類でしょ？」&lt;br /&gt;「人を下等な下着ドロと同レベルに扱うな！！　しかし、さきほどトラレスとも話をしたのだが、あながち心当たりがないわけではない」&lt;br /&gt;「何か知ってんの？」&lt;br /&gt;「奴は、『おうま先生』の末裔だ」&lt;br /&gt;その場が少しの間静まり返った。&lt;br /&gt;「……おうま先生……？」&lt;br /&gt;サラサがそう言うと、大真面目ににゃんこ先生とアーンガットがうなずく。&lt;br /&gt;「世界に十二しかいない、ケロヘルンの一種族ですな。流派・真拳ひづめを使う伝説の魔獣の末裔です。つまり、我らの仲間ですな……恥さらしなことに……」&lt;br /&gt;吐き捨てるように言ったアーンガットに、三白眼のような顔でロッタが返した。&lt;br /&gt;「何で伝説の魔獣の末裔、下着ドロになってるんですか……？」「分かりませぬが、強敵であることに間違いはありませぬ。気を引き締めてかからぬと……」&lt;br /&gt;「説得は無理だな。とりあえずお前達、身を守るだけの準備はしておけ」&lt;br /&gt;にゃんこ先生に言われ、女子達は顔を見合わせた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　それから六時間、ほぼ何事もなく時間が過ぎ、ロッタは椅子に腰掛けて寝息を立てている生徒会の仲間たちを、呆れた顔で見回した。&lt;br /&gt;今現在この第五会議堂で起きているのは、彼女とアーンガット、にゃんこ先生だけだ。&lt;br /&gt;ルバロンや他の生徒会員、魔獣駆除委員会は建物の外などの敬語に当たっているため、中は静かなものだった。&lt;br /&gt;残り五分ほどで午前零時になるというところで、ロッタは大きく欠伸をして、アーンガットの背中で寝息を立てているフィルの頭を撫でた。&lt;br /&gt;そしてボソリと呟く。&lt;br /&gt;「……何この状況……」&lt;br /&gt;「全員、胆力が凄まじいというか何と言うか……」&lt;br /&gt;アーンガットも呆れたように呟く。&lt;br /&gt;そこで彼女の携帯が着信音を鳴らし、ロッタは慌ててそれをとった。&lt;br /&gt;「はい。何か用？」&lt;br /&gt;『ああ、アークシーか。今病院から連絡があったんだけど、ノートランドとトランスはまだしばらく起き上がれないらしい』&lt;br /&gt;聞こえてきたゼマルディの声に、ロッタは諦めた声を返した。&lt;br /&gt;「まあ、期待はしてなかったからいいわよ。てゆうか今更こられても間に合わないわ」&lt;br /&gt;『馬ヘッドはまだ現れてないのか？』&lt;br /&gt;「ガセなんじゃないの？　それかいたずらとか……静かなもんよ。狙われてる本人寝てるし」&lt;br /&gt;『万が一のこともあるから、とにかく十二時過ぎたあたりでもう一回電話くれ。リンも寝たし、もしもの時は俺もそっち行くから』&lt;br /&gt;「分かった。もう頼りになるのはあんただけよ……」&lt;br /&gt;アンニュイに言ってから電話を切る。&lt;br /&gt;彼女を見て、葉巻の煙をぷっかぁ……と吐きながらにゃんこ先生が口を開く。&lt;br /&gt;「何だ？　フリンス共はまだ回復せんのか？」&lt;br /&gt;「自分で感電させといてよく言うわね……予想外に重症っぽいわよ」&lt;br /&gt;「生きているのですか……チッ、手加減するんではありませんでしたな……」&lt;br /&gt;アーンガットが聞こえないように吐き捨てる。&lt;br /&gt;ロッタはまた大きく欠伸をして、そして車椅子で小さく寝息を立てている人魚の方を見た。&lt;br /&gt;「とりあえず、こいつら起こします？　もうちょっとで十二時ですし。いざという時は弾除けくらいにはなりますから」&lt;br /&gt;「そうですな。とにもかくにも、危険なことになったら離れてもらわねば。申し訳ありませんが、起こして差し上げましょう」&lt;br /&gt;アーンガットがうなずいた時だった。&lt;br /&gt;ポーンと音がして、会議堂の時計が午前零時を指した。&lt;br /&gt;その場が静まり返り、しばらくロッタたちが硬直して静止する。&lt;br /&gt;「……何よ、何もおきないじゃない」&lt;br /&gt;彼女がそう言った時だった。&lt;br /&gt;不意に、ズンッという音がして会議堂のステージ中央の空間、重力そのものが大きく歪んだ。&lt;br /&gt;その衝撃で周囲の空気が大きく揺れ溜まらず小さな悲鳴をあげ、ロッタがその場にしりもちをつく。&lt;br /&gt;眠っていたほかの生徒会員達も、慌てて目を開けた。&lt;br /&gt;重力が歪んでいる場所に、金色に輝く魔方陣が広がった。それは床や空中に回転しながら伸びていくと、やがてピタリと静止する。&lt;br /&gt;「な……何これ……」&lt;br /&gt;呟いたロッタを守るように、アーンガットとにゃんこ先生が低く腰を落とした。&lt;br /&gt;慌てて、目を擦りながらアイカが、眠っているフィルを受け取って声を上げる。&lt;br /&gt;「何がありましたの！？　馬ヘッドですか！？」&lt;br /&gt;「トラレス、これは……」&lt;br /&gt;にゃんこ先生が腰から剣を抜き放ち、苦々しげに言う。&lt;br /&gt;「うむ……第九禁呪だ。皆の衆、危険ですじゃ。わしらの後ろに下がってくだされ」&lt;br /&gt;「禁呪……？　禁呪ですって！？」&lt;br /&gt;アイカが素っ頓狂な声を上げる。&lt;br /&gt;そちらを見てうなずき、黒犬は体中の毛を逆立てた。&lt;br /&gt;「本来大陸間の移動など、空間跳躍の魔法はそれ相応のリスクを負うものですが、我らケロヘルンの間で、自由自在にその魔法を操る種族がおるのです。私も見るのは初めてですが……とにかく、応援を呼んできてくだされ」&lt;br /&gt;「わ……わかりまひた！」&lt;br /&gt;今目が覚めたところなのか、サラサがうなずいて出口まで飛んでいき……そしてべしゃり、と、扉をすり抜けることが出来ずに衝突し、目を回してその場に崩れ落ちた。&lt;br /&gt;「何じゃと……！？」&lt;br /&gt;低い声を上げたにゃんこ先生にかぶせるように。&lt;br /&gt;そこで、甲高い笑い声が響いてきた。&lt;br /&gt;「ハァーッハッハッハッハッハッハ！！」&lt;br /&gt;「……何かデジャヴしか感じないんですけど……」&lt;br /&gt;呟いたロッタたちの目の前、大きく広がった魔法陣の中から、腕組みをして胸が大きく開いたタキシードを着た人影がゆっくりとせりあがってくる。&lt;br /&gt;どうやら、その空間転移の禁呪魔法で、直接ここに飛んできたらしい。&lt;br /&gt;「無駄さ！　この建物はもう僕の封印魔法の中にある！！」&lt;br /&gt;さわやかな声とともに、魔方陣からでてきた人影……。&lt;br /&gt;白馬の頭部をした男性は、フワッサァ！　とたてがみを揺らして、勝ち誇った声を発した。&lt;br /&gt;「うわぁ本当に来ましたね……」&lt;br /&gt;特に大したリアクションもなく、アイカがぼんやりと呟く。&lt;br /&gt;圧倒的にテンションが低いギャラリーの前で、馬ヘッドはタキシードの裾をピン、と延ばすと大きくポーズを作って見せた。そして手に持っていた白い薔薇を周囲に振りまき、パチン、と指を鳴らす。&lt;br /&gt;服のどこかに魔法録音機でも仕込んであるらしく、そこで激しい第九の音楽が流れ出した。&lt;br /&gt;「フハーッハハハハハ！！　怪盗！　馬ッ！　ヘッドッ！！　ここに見ッ！　参！！」&lt;br /&gt;虚しく鳴り響く音楽の中、静まり返って馬ヘッドを見る女性陣とヘロケルン二匹を見回し、彼は特にリアクションがないことに気づいたのか、無言で首もとのスイッチを押した。&lt;br /&gt;音楽が止まり、数秒間静寂があたりを包む。&lt;br /&gt;「…………あれ？　出てくるとこ間違えたかな…………」&lt;br /&gt;呟いた馬ヘッドに、ルイが大きく欠伸をしながら、興味がなさそうに言った。&lt;br /&gt;「いえ、まあおおむね合ってますよ。てゆうか、禁呪まで使って何しに来たんですか？」&lt;br /&gt;いきなりフレンドリーに話しかけられ、素になったのか、馬ヘッドは少しの間停止し……そして人魚に抱えられて眠っているフィルを見つけ、パチンッと指を鳴らした。&lt;br /&gt;「我が愛しの姫君よ！！　さぁ今宵も楽しい宴の始ま」&lt;br /&gt;「死ねええ！！」&lt;br /&gt;彼のセリフを中断する勢いで、にゃんこ先生が手に持ったボウガンの引き金を引く。&lt;br /&gt;バヒュン、と飛んだ電機玉は寸分たがわず馬ヘッドの股間に突き刺さり、次の瞬間彼は&lt;br /&gt;「あばばばばばばばばば！！！」&lt;br /&gt;と激しく痙攣し、股間を押さえてその場に崩れ落ちた。&lt;br /&gt;思わずアーンガットが目をそむける。&lt;br /&gt;まだビクンビクンとうごめいている馬頭のタキシード男を見ながら、アイカがポツリと言った。&lt;br /&gt;「……あの……何しに来たんですか？」&lt;br /&gt;「もう二、三発ブチ込んでおくか……？」&lt;br /&gt;女性陣の醒めた口調とは裏腹に、脂汗を浮かべながらにゃんこ先生が言う。&lt;br /&gt;興味を失ったのか立とうとしたルイに&lt;br /&gt;「お待ちくだされ！」&lt;br /&gt;と慌てて声を発し、アーンガットはにゃんこ先生を背に乗せて、魔力を集中し始めた。&lt;br /&gt;「来ますぞ！！」&lt;br /&gt;「え？　来るって、何が？」&lt;br /&gt;きょとんとしたロッタの目に、股間を押さえながら、妙に内股で、ブルブル震えつつ馬ヘッドが立ち上がるのが見える。&lt;br /&gt;彼は青ざめた顔でにゃんこ先生とアーンガットをにらみつけると、震える声を発した。&lt;br /&gt;「……な……何をする……」&lt;br /&gt;「黙れヘロケルンの面汚しめ！！　神妙に縛につけ！！」&lt;br /&gt;アーンガットに怒鳴られ、震えながら、しかし不適に、ニヤリと馬ヘッドは笑った。&lt;br /&gt;「ふふ……誰かと思えばにゃんこ一族とわんこ一族のおじさん達じゃないか……そんなコケ脅しの電気玉で僕のこの情熱を止められるとでも思ってるのかい？」&lt;br /&gt;「おもっきし喰らってなかった？」&lt;br /&gt;ロッタの突っ込みを無視し、回復したのか、彼はタキシードを翻して、その場に両腕を広げてポーズを作ってみせた。&lt;br /&gt;「この会議堂は僕の魔法で外界とシャットアウトさせてもらった！！　おとなしくパンツを指しだせば命まではとらない！！　抵抗するとためにならないぞ！！」&lt;br /&gt;脱力満点のセリフを吐きながら、彼は、パンッと両手を胸の前で打ち合わせた。&lt;br /&gt;そして魔力を集中する。&lt;br /&gt;「出でよ馬ヘッドラバーズ！！」&lt;br /&gt;彼を包んでいた魔方陣が大きく横に広がり……そして、その光に包まれた椅子や教壇が粘度細工のように歪んだ。&lt;br /&gt;次いでどろりと溶け、次々に馬頭の白いマネキン人形のように変化していく。&lt;br /&gt;数にして二十を超える馬ヘッドマネキンは一斉に拳を天に突き上げた。&lt;br /&gt;「ゴ……ゴーレム……（魔法で生成する動くドロ人形のことです）こんな短時間で！？」&lt;br /&gt;そこでやっと危機的状況を理解したのか、アイカが頬に手を当てて声を上げる。&lt;br /&gt;「ふはははははは！　ゆけい馬ヘッドラバーズ！！　令嬢のパンツを奪ってくるのだ！！」&lt;br /&gt;馬ヘッドの声を受け、ゴーレム馬ヘッド達がばらばらとこちらに駆け出してくるのが見えた。&lt;br /&gt;「……くっ！　性懲りもないことに貴重な禁呪を使いおいって……」&lt;br /&gt;にゃんこ先生が、襲い掛かるゴーレムを見ながら呟く。&lt;br /&gt;「人のこといえないと思うな……」&lt;br /&gt;ロッタの呟きを無視し、彼は自分が乗っているアーンガットに言った。&lt;br /&gt;「仕方ない！　久しぶりにやるぞ、トラレス！」&lt;br /&gt;「うむ。『キャットアンドドッグ』だ！！」&lt;br /&gt;意味不明の叫び声を上げ、二匹が魔力を前方に集中する。&lt;br /&gt;アーンガットの背中で両拳を腰の脇で固め、にゃんこ先生が体中に力を込めた。&lt;br /&gt;「日輪の力を借りてェェ！！　今！　必殺の！！」&lt;br /&gt;アーンガットが口を開き、次いでその口中に、高周音を立てながら、何か空気の渦……魔力の塊のようなものが集まっていく。&lt;br /&gt;彼はにゃんこ先生の声を受けて、大声を上げた。&lt;br /&gt;「合体にゃんわん真拳！！」&lt;br /&gt;「「キャットアンドドッグ！！」」&lt;br /&gt;二匹の声が見事にシンクロし、アーンガットの口中に集まった、にゃんこ先生の力もプラスされた魔力の渦が、竜巻のように噴出される。&lt;br /&gt;それは周囲の座席やステージの一部を大きく削り飛ばしながら、襲い掛かる馬ヘッドラバーズを全て巻き込み、粉々に破砕しながら突き進み、壇上でポカンとしていた馬ヘッドに突き刺さった。&lt;br /&gt;「ぶぅぁぁあああ！！」&lt;br /&gt;悲鳴を上げて吹き飛ばされた馬ヘッドが、回転しながら、第五会議堂の壁……地面から十メートルほどの地点にべしゃりと突き刺さる。&lt;br /&gt;そしてそのまま、二匹のケロヘルンによって放たれた魔力は、馬ヘッドごと、結界に覆われた会議堂の壁を貫通して向こう側に抜けた。&lt;br /&gt;しばらくして、パラパラと瓦礫が降り注ぐ会議堂の中で。&lt;br /&gt;くりから白い煙を吐き出しながら、アーンガットが軽くうなり声を上げる。&lt;br /&gt;「だめか……来るぞ！　シュマルケン！！」&lt;br /&gt;状況についていけずにポカンとしている生徒会員達の前で、にゃんこ先生が腰の剣を抜き構える。&lt;br /&gt;と、そこで彼らの後方、その空中に魔方陣が浮かび上がり、にょきっ、と黒焦げになった馬ヘッドが現れた。彼もタキシードの腰に差した剣を抜き放ち、魔方陣から転がり落ちがてら大声を上げる。&lt;br /&gt;「ひづめ真拳奥義ィィ！！　斬馬刀ォォ！　二の太刀！」&lt;br /&gt;見て分かるほどに多量の魔力が込められた片刃の長剣が、迷いなく、馬ヘッドの全体重とともににゃんこ先生に襲い掛かる。&lt;br /&gt;しかし二足歩行の太った猫は、振り向きざまに跳躍し、自分の剣でそれを受け止めた。&lt;br /&gt;ゴゥッ！　という音がして周囲に魔力衝突による突風が巻き起こる。&lt;br /&gt;「ぐぅぅぅ！」&lt;br /&gt;数秒間歯をかみ締めていたが、やがてにゃんこ先生と馬ヘッドは、互いに逆方向に弾き飛ばされ、空中を何度か回ってから、数メートルずつスライドしつつ着地した。&lt;br /&gt;「なんてバカ力じゃ……」&lt;br /&gt;肩で大きく息をつきながらにゃんこ先生が呟く。&lt;br /&gt;それを見て、ニヤリと馬ヘッドは笑った。&lt;br /&gt;「……まさか斬馬刀が止められるとは……さすが伝説の剣豪の名は伊達じゃないな……しかし今回の目的はあなたたちではな――あばばばばばばばば！！！」&lt;br /&gt;カッコいいセリフを言っていたような気がするが、そこで馬ヘッドは硬直して、目を見開き、ビクンビクンと痙攣し、絶叫した。&lt;br /&gt;わき腹に電気玉が突き刺さっている。&lt;br /&gt;少し離れたところで、無表情でボウガンを構えている車椅子の人魚が、隣のルイから次弾を受け取り、ボウガンに装てんした。&lt;br /&gt;そして感電している馬ヘッドにもう一発打ち込む。&lt;br /&gt;「ぎゃばばばばばばばば！！！！！」&lt;br /&gt;二発わき腹に喰らって、馬頭の青年が黒焦げになって、悲鳴を上げながらその場に膝をつく。&lt;br /&gt;アイカは無表情でもう一発打ち込み&lt;br /&gt;「あばびゃ！」&lt;br /&gt;さらにもう一発打ち込み&lt;br /&gt;「……ッッ！！！！！」&lt;br /&gt;ついでに悲鳴が聞こえなくなったのを確認してもう一発トドメに打ち込んでから。&lt;br /&gt;「……………………」&lt;br /&gt;ものすごくさっぱりした顔で、ボウガンを脇に投げ出した。&lt;br /&gt;そして唖然としている周囲を見回して、きょとんとした声を発する。&lt;br /&gt;「……あら？　何をしているんですの？　早く捕まえませんと」&lt;br /&gt;「いや、死んだんじゃないこれ……？」&lt;br /&gt;ロッタが恐る恐る、消し炭のようになって転がっている馬ヘッドに近づき、ツンツンと指でつつく。&lt;br /&gt;反応がない。&lt;br /&gt;「ここまでやることはないんじゃないかな……」&lt;br /&gt;彼女があわれみをこめた声でそう言った時だった。&lt;br /&gt;「残念！　それは私の影分身さ！！」&lt;br /&gt;元気のいい声が聞こえてきて、周囲の時が止まった。&lt;br /&gt;タキシードを抜ぎすて、フンドシ一丁になった馬ヘッドが、体中に鳥肌を立てながら、眠っているフィルを抱いてポーズを決めていた。&lt;br /&gt;寒いらしい。&lt;br /&gt;とても気持ちが悪い光景だった。&lt;br /&gt;「し……しまったァァ！！」&lt;br /&gt;アーンガットの絶叫を聞いてほくそえみ、馬ヘッドはパチンと指を鳴らした。黒焦げになっていた方が、途端にボロリと土の塊に崩れ落ちる。どうやら途中からゴーレムにタキシードを着せて入れ替わっていたらしい。&lt;br /&gt;「おっと動かないでください。君たちはそこで己が無力をかみ締めながら、僕がパンツをいただく姿を見ていてもらおうか！！」&lt;br /&gt;まだ眠りこけているフィルのスカートに、好都合とばかりに馬ヘッドが手をかける。&lt;br /&gt;「おじょおぉさまあああ！！」&lt;br /&gt;アーンガットが絶望的な声を上げた時だった。&lt;br /&gt;「ふふふ……西の魔王の愛娘、フィルレイン・ラインシュタイン嬢のパンツがついに我が……我らが手の中に！！！　手の中にィィィ！！　あばばばばばばばば！！！！」&lt;br /&gt;途端に今度は、正真正銘の悲鳴をあげ、彼女のスカートを握ったまま馬ヘッドがガクガクとその場に硬直する。&lt;br /&gt;ファスナーの部分、つまりスカートのポケットにあたる部分に電気玉が詰め込まれていて、それを掴んでしまったらしかった。&lt;br /&gt;思いっきり感電している馬ヘッドに抱かれていて、しかしその状況でも大きく欠伸をし&lt;br /&gt;「……なんかピリッとするよお……」&lt;br /&gt;と呟き、フィルが目を覚ます。&lt;br /&gt;そして、体中の穴から白い煙を噴出しながら、ガクリと膝を突いた馬ヘッドの手から抜け出し、不思議そうに首をかしげた。&lt;br /&gt;「……あ、馬ヘッドさんだ！」&lt;br /&gt;まだ彼女のポケットに入った電気玉は放電を続けている。&lt;br /&gt;フィル自身は知らずに肌の周りに張り巡らせている魔力の層で、感電には至っていないらしい。&lt;br /&gt;「こんにちは！　今回は楽しかったよ！！　ありがとう！！」&lt;br /&gt;屈託のない笑顔でそう言い。&lt;br /&gt;フィルはバチバチと帯電しながら、崩れ落ちた馬ヘッドの両手をガッシリと握り締めた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「結局なんだったのかしら……何しにきたのかしらあの人……」&lt;br /&gt;魔獣駆除委員会に連行されていった馬ヘッドを見ながら、ロッタが唖然と呟く。&lt;br /&gt;「フィルちゃんの回復力と魔力なら大丈夫だと思って、万が一の時のためにポケットに入れておいてよかったですわ」&lt;br /&gt;アイカが大あくびをしながらそう言い、床に伸びていたサラサをたすけ起こした。&lt;br /&gt;「吸血鬼は雷に強いという話を前に聞いたことがありまして。魔力が雷の性質に似ているらしいのです。本当だったみたいですわね」&lt;br /&gt;「ひどいことするわね、あんた……」&lt;br /&gt;呆れたような親友の声を聞きながら、彼女はアーンガットに心配そうに質問を投げかけられているフィルに視線をやった。&lt;br /&gt;「お嬢様！　何もされませんでしたか？　大丈夫ですか！？」&lt;br /&gt;「うん。何か馬ヘッドさん、具合が悪かったみたいだね！」&lt;br /&gt;「爺の寿命は三百年ほど縮まりましたぞ……」&lt;br /&gt;そのほほえましい光景を見ながら、アイカが傍らのボウガンを椅子において、大きくまた欠伸をした。&lt;br /&gt;「とりあえず、どうすんのよこれ……」&lt;br /&gt;白い薔薇と第五会議堂の屋根に空いた大穴、崩れ去った室内を見回してロッタがため息をつく。&lt;br /&gt;車椅子の人魚はそれをぐるりと見回し。&lt;br /&gt;そして、軽く息をついてから、肩をすくめた。&lt;br /&gt;「まあ……とりあえずもう、夜遅いですから。寝て、明日考えましょう。いいんじゃないですか？　実害はなかったんですから」&lt;br /&gt;その声は、夜風吹きすさぶ建物の残骸の中で、淡々と響いて消えた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;結&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>ラルロッザ ショートストーリー</dc:subject>

<dc:creator>マツサガシン</dc:creator>
<dc:date>2009-02-13T19:51:15+09:00</dc:date>
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<title>ラルロッザの学園都市　ＳＳ２６</title>
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<description>ギャグ編　ＳＳ２６　セントバレンタイン 　「よし、塔の中に女どもはいないな」 生...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #cc0033;font-size: 1.2em;&quot;&gt;&lt;strong&gt;ギャグ編　ＳＳ２６　セントバレンタイン&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「よし、塔の中に女どもはいないな」&lt;br /&gt;生徒会室の脇にある仮眠所の墨にしゃがんだセドラゴン族の生徒会長、センシエスタ・ノートランドが小さな声で言う。&lt;br /&gt;それにうなずき、隣にしゃがんでいた……それでも座高一メートルは超えている怪鳥族の大男、クヌギ・トランスがひそひそ声で応えた。&lt;br /&gt;「今のところは……大丈夫なはずだ」&lt;br /&gt;「クラウン、そっちはどうだ？」&lt;br /&gt;聞かれ、窓のほうにしゃがんでいた牛角の少年、ゼマルディ・クラウンがそっと顔を窓の外に向け、慌ててまたしゃがみ込んだ。&lt;br /&gt;外の方から一団と大きくなった女の子のもののような歓声が聞こえる。&lt;br /&gt;「だめだ。畜生、完全に包囲されてる……」&lt;br /&gt;「誰だよここに隠れればいいって言ったのは……」&lt;br /&gt;「ノートランド、お前がここに逃げ込んだのが悪いんだぞ。とっとと行って全員分の愛を受け取って来い」&lt;br /&gt;クヌギに言われ、センはブンブンと首を振って答えた。&lt;br /&gt;「殺されるわ！　生徒じゃねえ奴らも混じってんじゃねーか！」&lt;/p&gt;&lt;p&gt;いまやこの、西生徒会塔はおびただしい数の女の子に包囲されていた。先ほどエレベーターの動力パイプは切断し、裏口に通じる出口も、内側から封印魔法で封鎖したため、誰も昇ってこれず、しかし引くこともできないという異様な状況になっている。&lt;br /&gt;塔を包囲している女の子たちは、少なく見積もっても三百人は超えている。&lt;br /&gt;一、二学年分を合わせても足りないくらいの人数だ。中には生徒ではない、ＯＬなどと思われる人も混じっている。&lt;br /&gt;全員手になにやらの紙包みや紙バックを持っていた。&lt;br /&gt;阿鼻叫喚の地獄絵図だ。&lt;br /&gt;全員が塔の最頂点にいるはずのセンやクヌギの名前を呼んでいる。&lt;br /&gt;「てゆうか俺、関係ないのになんでこんなことになってるんだろう……」&lt;br /&gt;ボソリとゼマルディが呟き、イラついたように二人の学園アイドルをにらみつけた。&lt;br /&gt;「トランスもひとごとみてーな顔してるんじゃないぞ！　お前らのことを呼んでるんだから、いいから下行って収集つけてこいよ！」&lt;br /&gt;「断る！　殺されるだろうが！」&lt;br /&gt;センと全く同じリアクションをした大男を呆れたように見て、そして牛男は息をついた。&lt;br /&gt;「このままほっといたら、魔獣駆除委員会が出動する羽目になるかもしれないぞ」&lt;br /&gt;「むしろ駆除してほしいんだが……」&lt;br /&gt;「今回ばかりはお前の存在感のなさがうらやましいぞ、マルディ」&lt;br /&gt;「うるせーよ！」&lt;br /&gt;言われて、ゼマルディは頭を押さえて、そしてまた窓の外をチラリと見た。&lt;br /&gt;続々と女の子達が集結してきている。&lt;br /&gt;「まあ確かに……ハゲになるなこれ……」&lt;br /&gt;今年のバレンタインデーがこんなことになったのは、ひとえに今女の子の間で流行っている情報誌『ＣＡＮＣＡＴ』に、有名らしい占い師が、結ばれるためのある方法を載せたことが原因だった。&lt;br /&gt;その方法とは、バレンタインデーに、自分の髪の毛を一本入れたチョコレートを好きな相手に渡し、逆に相手の髪の毛を一本もらってお守りにするというものだ。&lt;br /&gt;何か既に呪術の方面に行っているような気もするが、この年頃の女の子は感化されやすい。&lt;br /&gt;普段は女子に対してめったに邪険にすることはないセンと、数週間前に騎馬戦の全国大会で優勝を飾ったクヌギの二大アイドルがその標的にされるまでに、さほど時間はかからなかった。&lt;br /&gt;というか、今週号のＣＡＮＣＡＴの表紙が二人だったのだ。レモンを持って笑っている二人の写真と、中にはインタビューまで載っている。あおり文句は&lt;br /&gt;『僕らはみんなの愛を受け止めます！』&lt;br /&gt;とあった。勝手に書かれたらしい。&lt;br /&gt;「お前ら両方とも彼女がいるだろ！　厄介なのが二匹！　責任とってこいって！　俺を巻き込むな！」&lt;br /&gt;バシーンと手の中のＣＡＮＣＡＴを床に叩きつけてゼマルディが怒鳴る。&lt;br /&gt;「そんな冷たいこというなよ」&lt;br /&gt;「数少ない仲間じゃないか」&lt;br /&gt;センとクヌギに言われ、ゼマルディは彼らの手を叩き落しながら携帯を取り出した。&lt;br /&gt;「触んなバカ共！　もうルイに連絡してどうにかしてもらうぞ」&lt;br /&gt;「そうだな……そろそろこの建物は限界が近いだろうし……」&lt;br /&gt;クヌギがうなずき、センを見る。&lt;br /&gt;「ルイシエンタに暴れてもらって（変身してもらって）、その隙に逃げよう。適度に手加減できる戦力があいつくらいしかいないし……ちょっとさすがに、逃げないと、今回は殺されかねんぞ。女子たちは、俺たちの髪をむしろうと必死だ……」&lt;br /&gt;「やむを得ないな……これ、どうしようもないな……」&lt;br /&gt;彼らがうなずきあったところで、センの携帯が着信音を鳴らした。ビクッとして彼がそれを手に取り、蓋を開き、青くなった。&lt;br /&gt;「誰から？」&lt;br /&gt;ゼマルディに聞かれ、彼は真っ青な顔のままそれに答えた。&lt;br /&gt;「……ロッタからだ……」&lt;br /&gt;「……とれよ……」&lt;br /&gt;「…………ああ…………」&lt;br /&gt;うなずいて、センがボタンを押し、携帯を耳に近づける。&lt;br /&gt;そして彼は少し息を吸い、素直な声で言った。&lt;br /&gt;「ごめんなさい」&lt;br /&gt;『御託はいいわよ！　何これどうなってんの！　生徒会室に近づけさえもしないじゃない！』&lt;br /&gt;ヒステリックな声が向こう側から聞こえてくる。&lt;br /&gt;「俺たちが聞きたいよ……ＣＡＮＣＡＴが、どうやら、好きな相手の髪をお守りにすると願いが成就するとか書きやがって、で、俺たちは今殺されかけている。どこにいんだよお前」&lt;br /&gt;『噴水のとこよ。てゆうかどんなバレンタインデーよ！　何でそこから死に繋がるの！？』&lt;br /&gt;「お前ＣＡＮＣＡＴ読んでないの……？」&lt;br /&gt;『あたしが読むのは新聞と織り込みチラシだけよ！』&lt;br /&gt;「ああ、そうなんだ……まあいいから。ちょっとルイに蹴散らしてもらって、避難するから。よけいなことすんなよ？　分かったな？　できればみんなにもよけいないことすんなって伝えてくれ。お前らに任せると絶対死人が出る」&lt;br /&gt;『うぇ？　何よく聞こえない！　あ、ちょっとこら！』&lt;br /&gt;電話の向こうでロッタが声を荒げ、そこで電話が奪われたのか、向こう側から甲高い大声が響いてきた。&lt;br /&gt;『パパさま！　バレンタインのチョコを山ほど買ってきたの！』&lt;br /&gt;「お前ら耳をふさげ！！」&lt;br /&gt;娘の声を聞くなり、センが携帯を放り出して、慌てて両手で耳をふさぐ。&lt;br /&gt;クヌギとゼマルディも慌てて身体を丸めて衝撃に備えた。&lt;br /&gt;『でも、愚民共が邪魔なの。パパさままっててくださいなの。お姉ちゃんの手を煩わせるまでもなく私が障害を排除するの！！』&lt;br /&gt;『そうよパパッとやっちゃいなさい！』&lt;br /&gt;『了解なの！！』&lt;br /&gt;次の瞬間、周囲の空気がズンッと音を立てて揺れた。&lt;br /&gt;震度七強の地震が襲ってきたように、建物と空気、地面がビリビリと音を立ててブレる。&lt;br /&gt;脳や内蔵全てがシェイクされたかのように揺れ、パンパンパンと音を立てて強化ガラスやシャンデリアが次々に破裂し。&lt;br /&gt;数十秒後。&lt;br /&gt;その高周波のような音は収まっていき、代わりに周囲は沈黙に包まれた。&lt;br /&gt;生徒会室の中は、建物内だったため音が反響し、増幅されて壁や床に放射状にひびが入っている。&lt;br /&gt;男子三人はその隅に無造作に転がって白目をむいていた。&lt;br /&gt;塔の外では、噴水の端に腕組みをして、冷たい目で前を見下ろしている女の子が一人いた。&lt;br /&gt;大きな胸をそらし、背中に四枚のトンボ羽を広げている夏妖精の少女、アルヴァロッタ・アークシーだった。&lt;br /&gt;耳には魔力封印がなされた耳栓が嵌められている、&lt;br /&gt;その足元で、口から白い蒸気を噴出しながら、目をらんらんと赤く輝かせた、、白赤メッシュの髪の毛をした、七歳児ほどの女の子がすっくと立ち上がった。&lt;br /&gt;そして軽く息をつき、傍らの母（仮）を見上げてニッコリ笑ってみせる。それに笑い返し、さっぱりした笑顔でロッタはうなずいた。&lt;br /&gt;耳栓を外して彼女はいった。&lt;br /&gt;「すっきりしたわね。行くわよリン」&lt;br /&gt;「はいなの！！」&lt;br /&gt;三百人以上の女の子達全員が、折り重なって死屍累々と倒れている。&lt;br /&gt;その間を縫って歩きながら、母娘（仮）は、実にすっきりした笑顔で塔の階段に手をかけた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「何をするんだお前たちは……」&lt;br /&gt;ソファーに背中を丸めて腰掛けながら、センは呻くように言った。&lt;br /&gt;額に氷嚢を当てているが、先ほどのリン……つまり彼の娘であるマンドルゴラの叫び声の直撃を浴びたため、まだ目の前がグルグルと回っている。&lt;br /&gt;同様に隣のソファーではクヌギが背中を丸めて座っていた。&lt;br /&gt;ゼマルディが深いため息をつき、同様に頭に氷嚢を当てながら、粉々に砕け散っている生徒会室と、ヒビが走った壁を見ていった。&lt;br /&gt;「殺す気か……」&lt;br /&gt;「結果としては死人は出なかったんだからいいじゃない」&lt;br /&gt;ケロリとして言ったロッタに牛男は首を振って言った。&lt;br /&gt;「大惨事じゃないか。今頃第一病院はフル回転してるぞ」&lt;br /&gt;「明日の朝刊の見出しは、またお前の写真が一面掲載されるんじゃないか……？」&lt;br /&gt;「いいのよ。そのためにちゃんとポーズ作って噴水に登ってきたから。最近その路線で行こうと、ふと思い始めてきたの」&lt;br /&gt;「開き直りやがった……リン、お前、あれだけ人ゴミの中で叫んじゃいけないって言ったじゃないか……」&lt;br /&gt;ゼマルディに言われ、センと南の大魔族、カランフロンの子供（禁呪で勝手に生成された娘です）であるリンフロンは、自分で買ってきたチョコの包みを開けてバリバリと食べながら、きょとんとしてゼマルディを見た。&lt;br /&gt;「ちゃんと手加減したの。愚民共にはあのくらいやらないと、ちゃんとした略取はできないの。九十パーセントの恐怖と十パーセントの希望が支配のコツなの」&lt;br /&gt;「ママの言っていることをよく理解しているようね、リン。いい子よ」&lt;br /&gt;「はいなの！」&lt;br /&gt;「どんな手なづけ方してんだおめーは！　ほら、パパさまなんとかいってやんなさい！　娘が悪の道に突き進んでるぞ！」&lt;br /&gt;ゼマルディに背中を押され、センは顔を上げ、そして冷たい目で自分を見下ろしている彼女をチラリと見てから、頭を降ろした。&lt;br /&gt;「……ごめんなさい……」&lt;br /&gt;「分かればいいのよ」&lt;br /&gt;「何一つとしてわかんねーよ！　もうほんと、お前らの関係って一体なんなんだよ！」&lt;br /&gt;ゼマルディに激しく突っ込まれながら、ロッタは軽く首の骨を鳴らして、そして懐をガサゴソと漁りながら言った。&lt;br /&gt;「……だからＣＡＮＣＡＴの取材なんて断りなさいってあれほど言ったじゃない。ちゃんとあんた、貞操は守り通したでしょうね……」&lt;br /&gt;「一個ももらってないよ……」&lt;br /&gt;「よろしい。ほんと、毎年毎年大変ね……だけど今年からは、あんたには他の女には指一本触れさせないわ。理解したら返事しなさい」&lt;br /&gt;「理解しました」&lt;br /&gt;「すんなよ。落ち着けアークシー。たかがバレンタインに何で殺気ＭＡＸなんだお前？　そこまで本気になるものじゃないだろ。殺す殺さないはもう」&lt;br /&gt;「マルディ、これは家族の間の問題なの。ちょっとだまっててくれる？」&lt;br /&gt;冷たく言われ、ゼマルディが&lt;br /&gt;「はい……」&lt;br /&gt;といって口をつぐむ。&lt;br /&gt;「こいつは目を離すとすぐ他の女に走るからね……これからはあたし達で管理することにしたのよ……」&lt;br /&gt;「何があったんだ、お前らの間に……」&lt;br /&gt;「一昨日師匠と一緒におっぱいパブに行っただけだよ……」&lt;br /&gt;ボソリとセンが呟く。&lt;br /&gt;「いいじゃないか……俺だって揉みたいときがあるんだよ……」&lt;br /&gt;「お前それはまずいだろ……」&lt;br /&gt;「最低だなノートランド」&lt;br /&gt;男子二人から非難の声を浴びせかけられ、センはバンッとテーブルを叩いて開き直った。&lt;br /&gt;「ああそうさ最低さ！　だが最低であるがゆえに俺は一定期間ごとにおっぱいを揉まないとやっていけない人間なんだよ！！」&lt;br /&gt;「黙りなさい。その件を許した覚えはないわ」&lt;br /&gt;「はい……」&lt;br /&gt;素直にセンが、尻尾を垂れ下げて服従の姿勢を示す。&lt;br /&gt;一昨日彼女たちの間に何があったのかは想像するだに恐ろしい。&lt;br /&gt;そういえば昨日、センの寮の方で爆発騒ぎがあったな……と何となく思い出しながら、ゼマルディはため息をついた。&lt;br /&gt;「そんなにノートランドの浮気が心配なら、お前のバカでかい胸でも揉ませてやれば解決だろ」&lt;br /&gt;「あたしの胸はあたしだけの胸よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」&lt;br /&gt;「もう既に言ってる意味が分からないな……」&lt;br /&gt;「とにかく。今年のバレンタインはこいつに近づく女子はすべて排除することにしたの。浮気する対象がいなければ仕様がないでしょ……」&lt;br /&gt;「くそ……いっそ殺せ……」&lt;br /&gt;「何か言った？」&lt;br /&gt;「いえ、何も言っていません」&lt;br /&gt;「分かればいいのよ。分かれば。まあそういうわけだから、こいつは持って帰るわ。いくわよセン。立ちなさい」&lt;br /&gt;ロッタに命令され、コクリとうなずいてドラゴンが立ち上がる。&lt;br /&gt;そこで、上空にプロペラの音が響き渡った。&lt;br /&gt;大きなプロペラを回転させた飛行船の、気球部の上にやはりプロペラがいくつもついている。&lt;br /&gt;小型のプロペラ飛行船は、学園都市の結界に触れるギリギリの位置で、静止した。&lt;br /&gt;その窓から何か小さな人影が身を乗り出して、バタバタと手を振っている。&lt;br /&gt;しばらくして、拡声器で声を大きくしているのか、周囲に大声が響き渡った。&lt;br /&gt;「センシエスタ様ァァ!　チョコをお持ちしましたあああ！」&lt;br /&gt;次いで、飛行船の下部が開いてバラバラと何かが投下された。一抱えほどの段ボールはあるそれには、一つ一つパラシュートがついていて、次々に学園に降り注いでいく。&lt;br /&gt;「ひいい！　何か落としたぞ！」&lt;br /&gt;「あれカランフロンじゃないのか！？」&lt;br /&gt;パニックになっているゼマルディとクヌギを一瞥し、ロッタはきわめて冷静な動作で、テーブル脇のペンスタンドに立ててあったハッタヤ鉛筆（ＳＳ２１話参照）を一本抜き&lt;br /&gt;「ふんっ！！」&lt;br /&gt;と気合を入れてありったけの魔力を注ぎ込んだ。それを振りかぶった右手で、飛行船に向けて投げつける。&lt;br /&gt;一本の光の矢のようになった鉛筆は、あっさりと壁と、空の上の飛行船を貫通すると。&lt;br /&gt;次の瞬間、船が――轟音を立てて破裂した。&lt;br /&gt;機関部を狙って投げたらしい。&lt;br /&gt;上空十五メートルほどできのこ雲を上げている残骸を唖然と見て停止している夫（仮）の首根っこをむんずと捕まえると、ロッタはくいっとリンのほうを見て、親指で出口を指した。&lt;br /&gt;「帰るわよ」&lt;br /&gt;「はいなの！！」&lt;br /&gt;ずるずると引きずられていくセンを見ながら、クヌギとゼマルディは顔を見合わせた。&lt;br /&gt;彼の助けを求める視線が非常階段に消えたのを確認し、ボソリとクヌギが呟いた。&lt;br /&gt;「あいつと付き合わなくてよかったな……」&lt;br /&gt;「迷いや躊躇がないもんな……」&lt;br /&gt;「とりあえずここから離れよう。またいつ髪を抜きに民衆が押し寄せてくるやも分からん」&lt;br /&gt;「ああ。乗せてってくれ」&lt;br /&gt;「任せろ」&lt;br /&gt;もう半ば倒壊している生徒会塔の中で、クヌギが巨大鳥に変身を始める。&lt;br /&gt;その首につかまり、周囲の惨状と、飛行船の残骸が落っこちたらしく、燃えている街の隅を見て、深いため息をついた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「そんな大変なことがあったんだねえ」&lt;br /&gt;制服にエプロンをつけた金髪の少女――吸血鬼のフィルレイン・ラインシュタインに言われ、クヌギは深く息をついて肩をすくめた。&lt;br /&gt;「髪がなくなるかと思った。というかお前たちは何も気づかなかったのか？」&lt;br /&gt;「私たちはずっとここでチョコ煮込んでたしねえ」　&lt;br /&gt;女子寮のフィルの部屋に何とか入り込んで身を隠して少し時間がたつ。追っ手は何とか撒けたようだ。&lt;br /&gt;フィルはキッチンに立っている盲目のドラゴン、ルイシエンタ・ノートランドの方を見た。&lt;br /&gt;「ねえ、妹さん？」&lt;br /&gt;「ええ。私たちは、授業が終わったらすぐにチョコを作りに来ましたから。それにしてもににさまはおモテになりますから、今回のＣＡＮＣＡＴも、ずいぶんと軽率なことを書きますねぇ」&lt;br /&gt;ひとごとのように言っている。&lt;br /&gt;部屋の隅に設置された魔導テレビから、ニュースキャスターの声が聞こえてきた。&lt;br /&gt;「夕方五時になりました。ニュースをお伝えします。午後四時付近に、ザインフロー魔導学園の敷地内で、何らかの魔法の暴発と思われる炸裂があり、少なくとも三百人に及ぶ民間人、および学生が巻き込まれました。現在第一、第二病院で治療が行われておりますが、重症者、死者は出ていないとのことです。また、同時刻に学園敷地上で一機の飛行船が謎の爆発を起こしました。乗っていた運転手を含めて二人は、現在敷地外の病院に収容されています。命に別状はないとのことです。それでは魔獣駆除委員会の会見ＶＴＲをごらんください」&lt;br /&gt;「カランフロンはあれで死ななかったのか……」&lt;br /&gt;ゼマルディがそう言って、そしてキッチンでチョコの鍋をかき混ぜている彼女……ルイに言った。&lt;br /&gt;「何か悪いなぁ。わざわざ作ってくれてたのか」&lt;br /&gt;「ええ。ラインシュタインに教えてもらってはいますが。しかしマルディ、そんな大変な状況になっているなら、早めに私を読んでくれればよかったのに」&lt;br /&gt;「呼ぼうとしたんだけど、アークシーが襲撃してきてどうしようもなかったんだ……」&lt;br /&gt;「で、二人ともチョコもらったの？」&lt;br /&gt;ニコニコしながらフィルが言う。&lt;br /&gt;クヌギは息をついて、カバンの中から何個か包みを引っ張り出した。&lt;br /&gt;「下駄箱に入っていた。どうしたものかと思ってな……」&lt;br /&gt;「もらったんだ」&lt;br /&gt;ふーん……とうなずいて、フィルは笑顔のままその包みを抱え上げ、めしゃりと握りつぶした。&lt;br /&gt;そして脇に置いてから、唖然としているクヌギに言う。&lt;br /&gt;「他には？」&lt;br /&gt;「ま……待て。アークシーだけじゃなかったのか……？」&lt;br /&gt;「ああ、マルディ。もしやと思いますけど、今日、チョコもらってきていませんよね？」&lt;br /&gt;くるりと振り向いて、笑顔のままルイが言った。&lt;br /&gt;ビクッとしてゼマルディがカバンを背後に隠す。&lt;br /&gt;「な……なんだよいきなり」&lt;br /&gt;「あら？　ちゃんとＣＡＮＣＡＴの記事を読んでいないんですか？」&lt;br /&gt;不思議そうに言って、ルイは続けた。&lt;br /&gt;「あのチョコ生成法は呪術の類で、雑誌の通りに作ると、食べた相手に一時的に魅了の魔法がかかってしまうんです」&lt;br /&gt;「危なかったよー」&lt;br /&gt;フィルが息をついて、そしてゼマルディの方を向いた。&lt;br /&gt;「マルディも早く出して。髪の毛を入れてトルコンドの粉を入れたチョコを食べると、鳥の魔法がかかっちゃうらしいの。始めて見た異性を好きになっちゃうんだって。ＣＡＮＣＡＴ、今週号回収騒ぎになってるんだよ？」&lt;br /&gt;「だからアークシーがあんなに必死だったのか……」&lt;br /&gt;牛男がうなずき、カバンを手に取ろうとして、そこに何もないことに気がつききょとんとした。&lt;br /&gt;「あれ……？」&lt;br /&gt;ポカンとして振り返る。&lt;br /&gt;そこで、彼は硬直した。&lt;br /&gt;バリバリと音を立てて、何か巨大なものがゼマルディのカバンを食い破り、包みごと、チョコをむさぼっている。&lt;br /&gt;彼も下校間際に靴箱に入っていたのを持ってきていたのだ。&lt;br /&gt;大きい。&lt;br /&gt;全長四メートルは超えているだろうか。&lt;br /&gt;フィルの部屋は寝室などかなりの大きさに分かれており、本棚も多いため今まで分からなかったのだが。&lt;br /&gt;『それ』は、ズン、と足を踏み出し、チロチロと舌を震わせた。&lt;br /&gt;「あー、ダメだよー。怪しいもの食べちゃだめだってばー！」&lt;br /&gt;フィルがそう言って駆け寄る。&lt;br /&gt;クヌギが振り返り、そして呆れた声を発した。&lt;br /&gt;「おいおい洋室に入れておけって言ったじゃないか」&lt;br /&gt;「あんな狭いところに入れてたらかわいそうだよお」&lt;br /&gt;「な……なんだこれ……」&lt;br /&gt;震えつつ立ち上がった彼を見上げ、フィルはあっけらかんと言った。&lt;br /&gt;「カフカグルンスルザだよ」&lt;br /&gt;確か半年ほど前（ＳＳ１話、２話、８話参照）フィルの頭に乗るくらいの大きさだったはずの、ヘビトカゲ……石化の魔目を持つ魔獣、カフカグ・ルンスルザが――半生体になったらしい、全長四メートルを超える巨大な白い爬虫類がそこにいた。&lt;br /&gt;唖然としている彼の前で、フィルが&lt;br /&gt;「あっ」&lt;br /&gt;と声を上げて口元を押さえる。&lt;br /&gt;ルンスルザがチョコを食べてしまったのに気がついたらしい。&lt;br /&gt;ポカンとしている彼の前で、白いヘビトカゲはしばらくの間、ゼマルディをじっと見つめた。&lt;br /&gt;その肌が段々ピンク色に変色してきて――。&lt;br /&gt;やがて、ルンスルザは目にも留まらない速度で牛男に襲い掛かると、その太い胴体で彼をからめとった。&lt;br /&gt;「ひいい！　何か襲ってきた！」&lt;br /&gt;「まずいな……鳥の魔法がかかったか……」&lt;br /&gt;クヌギがボリボリと頭を掻きながら息をついた。&lt;br /&gt;フィルが、強くゼマルディを締め付けているルンスルザを慌てて止めようとしている。&lt;br /&gt;しかし飼い主の言うことを聞かずに、完璧にピンク色に肌を変色させた魔獣は、チロチロと舌で彼の頬を舐めていた。&lt;br /&gt;どうやら求愛の行動らしい。&lt;br /&gt;「てゆうかこれ…………メスだったのか…………」&lt;br /&gt;苦しげな声がゼマルディの口から漏れ。&lt;br /&gt;そして、チョコの匂いにまぎれて消えた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;結&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>ラルロッザ ショートストーリー</dc:subject>

<dc:creator>マツサガシン</dc:creator>
<dc:date>2009-02-07T21:47:34+09:00</dc:date>
</item>
<item rdf:about="http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-f983.html">
<title>ラルロッザの学園都市　Ｑ＆Ａ</title>
<link>http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-f983.html</link>
<description>ウィットにとんだ質問を数点いただいてるので、お答えしておきます ★ ラルロッザの...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;&lt;strong&gt;&lt;span style=&quot;color: #cc0033;font-size: 1.2em;&quot;&gt;ウィットにとんだ質問を数点いただいてるので、お答えしておきます&lt;/span&gt;&lt;/strong&gt;&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;font-size: 1.2em;&quot;&gt;&lt;strong&gt;★ ラルロッザの学園都市 Ｑ＆Ａ 第一回 ★&lt;/strong&gt;&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．鳥の人はロリコンが犯罪であることを理解しているのですか？&lt;br /&gt;　→ Ａ．してないとおもいますけど、幸せならそれでいいんじゃないでしょうか&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．やはりアイカ様は洗っていない水槽の臭いがするんでしょうか&lt;br /&gt;　→ Ａ．少なくとも陸揚げされた魚類の臭いはすると思います&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．ゴンザレスが最後どうなったのか気になります&lt;br /&gt;　→ Ａ．最終回で、敵異星人ブッシュの放ったダークマターと共に亜空間に消えました&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．ぶっちゃけＳＳよりもゴンザレスを書いてください&lt;br /&gt;　→ Ａ．正直な話、作者（ぼく）、観てないんでよくわかんないです&lt;/p&gt;&lt;p&gt;Ｑ，淫乱妖精と女垂らしは週何回の割合ですか？&lt;br /&gt;　→ Ａ．誰もが勘違いしてますけど、二十四時間体制で白い妹が監視してるので無理です&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．おっぱい出せるようになる薬を作らせて、彼女に投薬実験する話を書いてください&lt;br /&gt;　→ Ａ．分かってないですね……出たら何か違うんですよ。出ないのがいいんですよ&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．ほんとスパロボ好きですね&lt;br /&gt;　→ Ａ．どうしてもにゃんこにはリアクターボルキャットを撃たせたいんですけど、タイミングが……&lt;br /&gt;　　　　 でも近いうちに、フィル執事の犬との合体技 「 キャットアンドドッグ 」 は使う予定です。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．つぼやきにされたハムスターはどうなったんですか？&lt;br /&gt;　→ Ａ．そのあとスタッフにより美味しく××され、知らなかったセンシエスタに××されました&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．ドラゴンの尻尾って薬膳効果すごそうだな……&lt;br /&gt;　→ Ａ．アルヴァロッタがよくちぎって日干しにしてます。男性のビッグサンをひねりきるほどの痛みらしいです。&lt;br /&gt;　　　　　風邪をはじめ体力低下などへの滋養強壮にとてもよく、闇ルートにて高額に販売されます。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．カフカグルンスルザってどこにいったんですか？？&lt;br /&gt;　→ Ａ．知らない方がいいことって世の中に沢山あるよな、と鳥が申しておりました。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．ラルロッザが吸収した砂糖はどこに保存されるのでしょう&lt;br /&gt;　→ Ａ．彼女の体内に、まるでブラックホールのように圧縮され無限に吸い込まれていきます。悪夢です&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．二人目と三人目のにゃんこを出す予定はあるですか？&lt;br /&gt;　→ Ａ.どうしましょうね。コードネームはルドルフとイッパイアッテナというんですが、出オチですよね。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．ポディマハッタヤさんをもう少しプッシュするわけにはいかないでしょうか&lt;br /&gt;　→ Ａ．いずれゴンザレス編やりますので、そのときに出てきますよ。&lt;br /&gt;　　　　 基本的にポディマハッタヤさんには「Ｙｅｓ！」と「Ｇｏｏｄ Ｌｕｃｋ！」しか喋らせない予定ですけど。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．本編の時点でセンとロッタが付き合ってないような気がするんですが&lt;br /&gt;　→ Ａ．ＳＳの十七と十八話であらましがあります。&lt;br /&gt;　　　　 奴らは大分長いこと別れてました。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．ＳＳで、五年前にセンが出てったと言ってましたが、直後のセリフが二年間無視したとなってます&lt;br /&gt;　　おかしいような。そうではないような&lt;br /&gt;　→ Ａ．その辺の書いてたころの記憶が錯綜してるので、多分作者のミスだと思います。&lt;br /&gt;　　　　 実際はｖｓタルスヘルンから三年しか経ってません。作者を存分に「豚野郎め！」と罵ってください。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．ＳＳＳ２話の四人って、現在の大魔王ですか？&lt;br /&gt;　→ Ａ．そです。いろいろあったんです&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;Ｑ．キャラがイメージしづらいです&lt;br /&gt;　→ Ａ．センシエスタが情けないＤＡＩＧＯで、アルヴァロッタがちっちゃいロリ風のＹＯＵです。&lt;br /&gt;　　　　　テュテがギャル曽根だと思ってください。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;他にも何かあればメッセージ他などで連絡ください&lt;br /&gt;あと、本編の更新は気長に待っててください。いずれやります&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>ラルロッザ ショートストーリー</dc:subject>

<dc:creator>マツサガシン</dc:creator>
<dc:date>2009-01-12T16:25:52+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-fd4b.html">
<title>ラルロッザの学園都市　登場人物</title>
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<description>ラルロッザの学園都市　登場人物紹介　本編一部～ＳＳ新年編まで　修正版 ★しかしこ...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;&lt;strong&gt;&lt;span style=&quot;color: #cc0033;font-size: 1.2em;&quot;&gt;ラルロッザの学園都市　登場人物紹介　本編一部～ＳＳ新年編まで　修正版&lt;/span&gt;&lt;/strong&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;strong&gt;&lt;span style=&quot;color: #006699;&quot;&gt;★しかしこう見ると、ずいぶん複雑な人間関係になってる……書いてる人もまとめてて驚きました&lt;/span&gt;&lt;/strong&gt;&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■フィルレイン・ラインシュタイン（本編より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　身長１３２センチ。体重３１キロ。クヌギとつきあっている。&lt;br /&gt;西の大魔王メルヘドス．ラインシュタインと天使族の娘ラルロッザ・ノーエンガーブの娘。&lt;br /&gt;　禁呪七号により精製された人造生命体ホモンクルーズで、吸血鬼と天使のデュアルハーフ。&lt;br /&gt;　彼女の唾、血には解呪解毒滅菌の効果がある。&lt;br /&gt;また、彼女自身も四肢をバラバラにされても復活するほどの再生力を持つ。&lt;br /&gt;好きな人の血を飲むと、一時的にだが成長する。逆に嫌いな人の血を飲むと幼児退行を起こす。&lt;br /&gt;　天才的な知能と計算力を持つが、精神年齢が幼く、会話を成り立たせるのが困難。&lt;br /&gt;　変なもの、キモいもの、グロいもの、父親が好き。&lt;/p&gt;&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■センシエスタ・ノートランド（本編より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　身長百八十三センチ。体重七十九キロ。アルヴァロッタとつきあっている。&lt;br /&gt;　東の大魔王、かつ大マフィアであるタルスヘルン・ノートランドの三番目の子供。&lt;br /&gt;　禁呪五号の核の一つを持っており、結界内でも数十秒時間を止める程の、超強力な魔法を使える。&lt;br /&gt;　容姿端麗で運動神経も抜群だが、基本的に不真面目でいい加減。女好き。&lt;br /&gt;　自ら自覚しているドＭであり、何だかんだ言いながら肉体的、精神的苦痛を進んで受ける変態。&lt;br /&gt;　そこそこ頭はいいが、生徒会の中では一番悪い。そのへんは臨機応変に乗り切っているらしい。&lt;br /&gt;　二重人格的な面があり、父の話になると冷徹になる。&lt;br /&gt;　甘いものが好き。超再生能力のため、よく生徒会員の実験台にされる。&lt;br /&gt;　その昔、飼っていたハムスターをつぼ焼きにされたトラウマで小動物が触れない。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■クヌギ・トランス（本編より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　身長二百十五センチ。体重九十五キロ。フィルレインと付き合っている。&lt;br /&gt;　第一貴族ではないのに加え、実はあまり社会的身分が高くない、怪鳥族（ビワーフ）の大男。&lt;br /&gt;　実家が貴族用大規模ホストクラブの元締めであることと、規格外の魔力を持つことで生徒会にいる。&lt;br /&gt;　運動神経は抜群で、大陸オリンピックのいくつかの競技に、五度の優勝経験を持つ。&lt;br /&gt;　センと並ぶアイドル的存在として人気を誇る、パーフェクトで寡黙な優しい天才児。&lt;br /&gt;　そう思われていたが、実は極度のロリコンであることが判明。実家のみなさんが常に心配している。&lt;br /&gt;　また、特撮ロボットドラマ『宇宙勇者シャイニングゴンザレスΔ』の熱狂的信者。&lt;br /&gt;　フィルレインの実家であるラインシュタインファミリーに命を狙われている。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■アルヴァロッタ・アークシー（本編より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　身長百五十二センチ。体重四十一キロ。センシエスタとつきあっている。&lt;br /&gt;　背中に四枚のトンボ羽がある、夏妖精。ドＳ。&lt;br /&gt;　大陸大財閥のアークシー一族だが、死去した妾の子であり、本家からつらい扱いを受けていた。&lt;br /&gt;　夏妖精は骨格が他の種族よりも細く小さいため、通常換算すると、実は相当な巨乳。&lt;br /&gt;　胸にコンプレックスがあり、常に小さくなりたいと思っている。&lt;br /&gt;　それくらいしか弱みがないため、よく生徒会員にそれをネタにいじめられている。&lt;br /&gt;　気が強く、面倒見がいい。女生徒とレズビアンのみなさんから人気がある。&lt;br /&gt;　頭はよく、また容姿もいいため、ちょくちょくテレビ局のオファーを受けて出演している。&lt;br /&gt;　いろいろなところから命や貞操を狙われる不憫な子。&lt;br /&gt;　遂には子供も産んでいないのにママにさせられた。おばさん化が著しいが、実は華の十七歳。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■アイカマロン・スマスバル（本編より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　身長百七十四センチ。体重四十五キロ。&lt;br /&gt;　人魚の都市エステオーエン大統領の娘。アルヴァロッタを超える巨乳。&lt;br /&gt;　物腰は柔らかく人づらはいいので、とてもよくもてる。内心では自分の利益しか考えていない。&lt;br /&gt;　武装した車椅子で校内を移動している。&lt;br /&gt;　法律を破るのと人権を無視するのが大好きで、自分の命のためならためらいなく友を見捨てる人。&lt;br /&gt;　実家は錬金術師の家系で、怪しく危険な薬を作る外道人魚。&lt;br /&gt;　好きな言葉は「無駄な抵抗」&lt;br /&gt;　現在の父とは血のつながりがなく、彼女自身は重度のファザコン。&lt;br /&gt;　年上のように見られているが、実は生徒会の中で一番若い十五歳。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■ルイシエンタ・ノートランド（本編より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　身長百七十八センチ。体重四十キロ。センシエスタの双子の妹。&lt;br /&gt;　先天性魔力過多という病気にかかっており、封印していないと、無尽蔵に魔力を発散してしまう。&lt;br /&gt;　そのせいで視力がほとんどなく、かろうじて物体を流れる魔力を感じ取ることができる。&lt;br /&gt;　普段はしとやかに振る舞っているが、メンバーの中で一番残酷で冷酷なひどい人。&lt;br /&gt;　キレると口調が変わり、とてつもなくガラが悪くなる。&lt;br /&gt;　貧乳であることのコンプレックスがものすごく、ロッタとことあるごとに骨肉の争いをしている。&lt;br /&gt;　小さいころから仲が良かったゼマルディとつきあっている。&lt;br /&gt;　彼の分まで、何故かお小遣い他生活費をすべて管理している。&lt;br /&gt;　いまだにロッタが兄をそそのかしたと考えており、実のところ彼女をこころよくは思っていない。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■ゼマルディ・クラウン（本編より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　身長百九十センチ、体重八十七キロ。ルイシエンタと付き合っている。&lt;br /&gt;　実はクラウンカンパニーという世界的玩具企業の御曹司。&lt;br /&gt;　本人はいたって真面目で、かつ存在感が薄いが、成績はさりげなくトップクラスな人。&lt;br /&gt;　でも誰も気づかないほど、あまり存在感がない。&lt;br /&gt;　何でもオーソドックスにこなし、困った時は生徒会員は全てを彼に投げる。&lt;br /&gt;　彼ら牛男バイシクルの角は、伴侶しか触ってはいけないものなのだが、皆に触りまくられている。&lt;br /&gt;　セン以外でルイに言うことを聞かせられる数少ない生き物。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■サラサ・メル（本編より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　身長百六十二センチ。体重二十グラム。&lt;br /&gt;　幽霊である気体種族シーパーの娘。センとルイのいとこで、シーパーの皇女。&lt;br /&gt;　面倒事には極力関わらない主義で、危ないことがあるとテレポートですぐ逃げてしまう。&lt;br /&gt;　相当ひどい人だが、周りがもっと酷いので、相対的に突っ込みをしていることがよくある。&lt;br /&gt;　客観的に一言、時たま恐ろしいことをいう娘。&lt;br /&gt;　レズっ気があり、ロッタのことが好き。&lt;br /&gt;　また、変態的なところもあり、時たま泣きそうになっているロッタを見ながら興奮している。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■サト（本編、ＳＳ第六話登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　フィルレインの屋敷のメイドさん。外見は大きな目をした美少女だが、やはり残酷冷徹な人。&lt;br /&gt;　特に本編にて自分を負かしたセンには殺人的な恨みを抱いている。&lt;br /&gt;　屋敷の生活で、彼女がフィルレインを甘やかしまくったことにより現在こんなことになっている。&lt;br /&gt;　人間ではなく、先々代大魔王によって大昔に作られた人型ロボット。&lt;br /&gt;　禁呪十三号で精製された最後のオートマータで、一人で二十万の敵と互角に戦える。&lt;br /&gt;　時間を巻き戻す魔法をかけられており、体内の反動力エンジンにより、半永久稼働する。&lt;br /&gt;　対象物の時間を巻き戻し、物質の存在から消滅させることのできる力を持つ。&lt;br /&gt;　加えて、たとえ破壊されたとしても、体の時間が戻り即座に修復する。&lt;br /&gt;　また、体内にミト、キトという姉の人格がいる。&lt;br /&gt;　二十四時間フル稼働で、人格を入れ替えながら動作しているため、睡眠対策もバッチリな狂気。&lt;br /&gt;　・ミト／最古参のメイド。自分を「婆」と呼ぶ。冷静沈着で感情が少ない。&lt;br /&gt;　・キト／二番目のメイド。戦闘担当の人格で、口数は少ないが、解放できる魔力が桁違い。姉系&lt;br /&gt;　・サト／最も若いメイド。話し方が変。姉と比べるといまだ、あまり性能は高くない&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■メルヘドス・ラインシュタイン（本編、SS第十四話登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　歴代最強と言われる、現、西の大魔王。五十年前の戦争を起こした張本人。フィルの父。&lt;br /&gt;　ラインシュタインファミリーは他のマフィアのように展開はしていなく、彼を顔は知られていない。&lt;br /&gt;　世界でただ一人の、最後の純正吸血鬼。姿かたちを自由に変える力を持つ。&lt;br /&gt;　若いころは「狂気のロリコン」と呼ばれていた。&lt;br /&gt;　禁呪七号という、全ての禁呪の中で最も危険だといわれる魔法を使う。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■タルスヘルン・ノートランド（SS第十七話登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　四大マフィア一派のノートランドファミリー首領。センシエスタとルイシエンタの父。&lt;br /&gt;　悪虐非道で知られている、現、東の大魔王。&lt;br /&gt;　時を止める禁呪五号を持っている。&lt;br /&gt;　三年前に、家を出ようとしたセンシエスタを衆人環境の元で半殺しにした。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■サナフロン・チェルサー（SS第二十話登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　女性しか産まれない、毒を持つ樹木妖精にして、現、南の大魔王。&lt;br /&gt;　禁呪八号をもっている。&lt;br /&gt;&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■カランフロン・チェルサー（SS第七話、第二十話登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　南の大魔王サナフロンの娘。生まれつき魔力の毒素が強く、セン以外の男と触れ合えない。&lt;br /&gt;　アルヴァロッタを超えるサディストで、好きな人の精神を破壊するのが趣味。&lt;br /&gt;　残酷な性格をしていて、乙女趣味の割に異常な独占欲を持つ。&lt;br /&gt;　アルヴァロッタを本気で殺害しようとするが、すんでのところで逆襲にあり一時的に幼児退行。&lt;br /&gt;　それ以降、アルヴァロッタによりトラウマを刻み込まれ、何故かバリカンに異常な恐怖を示す。&lt;br /&gt;　南のサザンノーンに送り返されたが、嫉妬のあまり、無断で禁呪に手を染める。&lt;br /&gt;　その結果、自分とセンシエスタの細胞から、伝説の魔獣マンドルゴラを生成。&lt;br /&gt;　アルヴァロッタに送りつけることで間接的に嫌がらせをしようとするが、その行動が予想外の事態を引き起こす。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■リンフロン・ノートランド・チェルサー（ＳＳ第十六話より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　カランがセンの細胞と自分の細胞を使って作り出した魔導生物。&lt;br /&gt;　実質的に、フィルに続く二人目の人工生命体。&lt;br /&gt;　送りつけたカランは、どうせすぐ死ぬと思っていたようだが、予想に反して、保護した生徒会によりすくすく成長。&lt;br /&gt;　実年齢は生後半年（現在）だが、五歳ほどにまで成長した。&lt;br /&gt;　フィル以上に甘やかされてきたので、とてつもなくわがまま。&lt;br /&gt;　仮の母であるアルヴァロッタのスパルタ教育で、彼女だけは恐れている。&lt;br /&gt;　魔力も知能もケタ違いで、既に知能は父をはるかに凌駕している。&lt;br /&gt;　種族的には、マンドルゴラという樹木魔獣。&lt;br /&gt;　だが、その本来持つ力に加え、センシエスタのドラゴンの力も継承している。&lt;br /&gt;　本人さえ分かっていないが、現在、魔界最強生物の一人。&lt;br /&gt;　毒舌。計算で言っているらしい。乳酸菌飲料を常に飲んでいるほど好き。&lt;br /&gt;　&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■にゃんこ先生（ＳＳ第十九話より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　センシエスタとルイシエンタの師匠。本名はガゼルバデッツァー・シュマルケン。&lt;br /&gt;　正式な世界総括軍の特務大佐であり、世界が認める伝説の剣豪。別名ダルタニャン。&lt;br /&gt;　しかしどう見ても二足歩行の太った猫（ヘロケルンという魔力が高い動物）&lt;br /&gt;　にゃんこ先生というのは、彼が学会を脅して無理やり認めさせた種族の名前。&lt;br /&gt;　大陸には他に『ルドルフ』『イッパイアッテナ』というにゃんこ先生が存在している。&lt;br /&gt;　反物質を作り出す魔法を使え、その攻撃は強力極まりない。&lt;br /&gt;　しかしエロく、おっぱいが大好き。&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;　&lt;br /&gt;■アーンガット・トラレス（本編より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　西の大魔王メルヘドスの屋敷にいるフィルの執事。見た目は黒色の大型犬（ケロヘルン）&lt;br /&gt;　にゃんこ先生とは旧友らしい。&lt;br /&gt;　エロくはないが、彼がフィルを甘やかしまくったためこんなことになっている。&lt;br /&gt;　&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■テュテ・ラン・ラルカ（ＳＳ二十三話より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　リンが病院で仲良くなった兎耳の亜種獣人。貴族ではない。&lt;br /&gt;　ざっくばらんな性格で、実は第一貴族が心底嫌い。&lt;br /&gt;　リンに限っては、先入観がないときに遭遇したのでそうではないらしい。&lt;br /&gt;　フィルが転校してきた時（本編）で彼女に暴力を振るったのは実はこの子。&lt;br /&gt;　心は優しいのだが、子供に接する時以外はやさぐれている。&lt;br /&gt;　タバコも酒も何でもやる不良少女。&lt;br /&gt;　&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■ラルロッザ・ノーエンガーブ（ＳＳ十四話登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　五十年前にメルヘドスが保護した天使族の少女。フィルレインの母親&lt;br /&gt;　人の悪意を感じることができない、能天気が過ぎた性格をしていた&lt;br /&gt;　基本的に何をされても人のことを信じてしまうので、結果それが彼女の寿命を縮めることになった&lt;br /&gt;　魔力ではなく生命活動に聖力が必要&lt;br /&gt;　魔界ではそれを摂取できなかったので、オーラがすべて糖分になるほどの大量の砂糖を摂取する&lt;br /&gt;　その砂糖オーラは抱きついたメルヘドスが一瞬で飴化するほどだった&lt;br /&gt;　当時のザインフローでは第五までのシュガーショックが起こり、砂糖の値段が超高騰&lt;br /&gt;　そのせいで大陸付近から糖分が欠如する事態が発生し、当時の人はそのことを語ろうとしない&lt;br /&gt;　&lt;br /&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■ルバロン（本編より登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　メルヘドスたちがザインフローにいた頃から教師をしている巨人。&lt;br /&gt;　ラルロッザのことも知っていた。&lt;br /&gt;　フィルレインのことは孫娘のように思っており、やさしく接している。&lt;br /&gt;　チェスゲームが好きで大陸一の腕を持っていたが、フィルに現在八十五連敗中。&lt;br /&gt;　実は甘党。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■アブソバル（本編に登場）&lt;/span&gt;&lt;br /&gt;　メルヘドスが残した禁呪の一つ。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;■ポディマハッタヤさん（ＳＳ第二十二話登場）&lt;br /&gt;&lt;/span&gt;　魔界の国民的ロボットドラマ『宇宙勇者シャイニングゴンザレスΔ』の主要登場人物。&lt;br /&gt;　本名で、ドラマ終了後もタレントなどの活動をしている石の精。&lt;br /&gt;　魔界で初めて鉛筆を考案し、自伝「一本の鉛筆の向こうに」は五百万部を売り上げた。&lt;br /&gt;　ドラマ中では、ゴンザレス、チャールズと共にハッタヤフラッシャーで合体。&lt;br /&gt;　宇宙勇者ゴンザレスとなり、謎の敵ブッシュと戦っていた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;以下続刊です&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>ラルロッザ ショートストーリー</dc:subject>

<dc:creator>マツサガシン</dc:creator>
<dc:date>2009-01-08T23:19:40+09:00</dc:date>
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<item rdf:about="http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-c6f7.html">
<title>ラルロッザの学園都市　ＳＳ２５</title>
<link>http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-c6f7.html</link>
<description>ギャグ編　SS２５　ハッピーニューイヤー 　「正月は普通に開催されてよかったな」...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;&lt;strong&gt;&lt;span style=&quot;color: #cc0033;font-size: 1.2em;&quot;&gt;ギャグ編　SS２５　ハッピーニューイヤー&lt;/span&gt;&lt;/strong&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　「正月は普通に開催されてよかったな」&lt;br /&gt;怪鳥族の大男、クヌギ・トランスの指先を掴んで歩きながら、小さな金髪の少女――吸血鬼のフィルレイン・ラインシュタインがニコニコ笑顔でうなずいた。&lt;br /&gt;「そうだねえ」&lt;br /&gt;身長差が一メートルほどもあるため、まともに手を繋ぐことができない状況であるがゆえ、やはりとてもカップルには見えない。&lt;br /&gt;学園都市ザインフローの大通りには、新年を迎える飾りが並べられ、そして同時に各地で大道芸や屋台などが見受けられた。&lt;br /&gt;さすがにクリスマスのインフルエンザショックで、活気は例年よりも少ないものの（第二十四話参照）学園の理事会が外から商人を呼び寄せ、急遽ニューイヤーの祭を開催したのだ。&lt;br /&gt;もとよりウィルスの対抗魔導ワクチンはすぐに用意されたので、今では殆どの市民が全快している。&lt;br /&gt;特に子供の回復力は尋常ではなく、元旦の朝早くだというのに、沢山の学生でにぎわっていた。&lt;/p&gt;&lt;p&gt;その中から頭一つだけ飛びぬけているクヌギは、一応サングラスとニット帽子、襟を立てたコートで顔を隠しているが、先ほどから周囲の女の子達から写真をとりまくられている。&lt;br /&gt;フィルも同じようにサングラスをかけさせられてはいたが、もこもこのコートに埋もれている様はいつもと変わらない。&lt;br /&gt;彼女自身は、何だか自分達を取り巻いている男達（ロリコン友の会）にやはり写真をとりまくられながらも、全く気にしていないのか、近くの屋台で足を止めた。&lt;br /&gt;ふたりとも異常に周囲を気にかけない性格のため、ほぼアイドルのツーショットをパパラッチに追跡されている状態にもかかわらず、何事もないかのように正月祭を満喫している。&lt;br /&gt;「何であいつらはあんなにリラックスしていられるんだ……？」&lt;br /&gt;少し離れた場所で、人ごみに見付からないように隠れながら、ドラゴン族の生徒会長、センシエスタ・ノートランドが呟く。&lt;br /&gt;その隣で、真ん中に彼の娘（第十六話参照）のリンフロンを、捕まえた宇宙人のようにふたりで手を引きながら、彼女である夏妖精のアルヴァロッタ・アークシーが口を開く。&lt;br /&gt;「さあ……分かってないだけだと思うけど……」&lt;br /&gt;「すごい報道陣の量なの」&lt;br /&gt;コートに埋もれながらリンフロンが言うと、彼らの目に、一団から飛び出たカメラを持った、テレビ局の人間と思われる人がクヌギに近づくのが見えた。&lt;br /&gt;それに一言二言返し、クヌギとフィルがすたすたと次の屋台に向かって歩いていく。&lt;br /&gt;自然体過ぎる。&lt;br /&gt;「ねえクヌギくん、これは何かな？」&lt;br /&gt;フィルに聞かれ、大男は隣の屋台を覗き込んだ。&lt;br /&gt;中のテキ屋の親父が、ふたりが引き連れてきた報道陣とパパラッチの量に言葉を失っている。&lt;br /&gt;おびただしいフラッシュの中、彼は台の上に乗っていたコルク銃を持ち上げた。&lt;br /&gt;「ああ、この地方の祭でよく見かける遊びだ。あそこに、いろいろ景品が並んでいるだろう？」&lt;br /&gt;指を差した先に、段々になった五メートルほど離れた場所に、いろいろな景品が並べられている。&lt;br /&gt;貴族が多い街ということもあり、ブランド品のバッグやコート、高そうなモデルガンなどもちらほら混じっていた。&lt;br /&gt;コルク銃などでとれはしないのだが、まあそのへんは遊びだし、もし何かの偶然が起きて撃ち落せればもうけものだ。&lt;br /&gt;「この玩具の銃で欲しいものを撃って、後ろに倒せればもらえるんだ」&lt;br /&gt;「ふーん」&lt;br /&gt;フィルはそういって、しげしげとコルク銃を眺めた。&lt;br /&gt;クヌギが懐からコインを取り出して店のおやじに渡す。&lt;br /&gt;「こうやるんだ」&lt;br /&gt;震える手から五発コルク弾を受け取り、クヌギはそれを銃に詰めてから&lt;br /&gt;「ふんッ！」&lt;br /&gt;と気合を入れて銃に魔力を込めた。&lt;br /&gt;少し離れたところから見ていたセンとロッタが、あわわわ……と青くなる。&lt;br /&gt;案の定彼は、一瞬ピカーンと目を光らせ。&lt;br /&gt;次いで、片手でしっかりとコルク銃を構え、魔力で補正してライフル弾ほどの威力に上昇しているその引き金を絞った。&lt;br /&gt;ズキュンというコルク銃ならざる音が響き渡り、チュイン……と風を切って、弾が近くにあった、フィルほどの大きさの巨大なくまのぬいぐるみ。&lt;br /&gt;その額を貫通し、向こう側の壁にバスッと突き刺さる。&lt;br /&gt;煙を上げているぬいぐるみを、周囲の報道陣とパパラッチ、店の親父が静まり返って見る。&lt;br /&gt;あまりに空気圧を魔力で圧縮しすぎたため、あるていどの重さがあるぬいぐるみは穴が開いただけで倒れはしなかった。&lt;br /&gt;そちらの方が脅威なのだが、クヌギがふむ、と呟いて残念そうに言う。&lt;br /&gt;「なかなかうまくはいかんな」&lt;br /&gt;「私もやるよ！」&lt;br /&gt;元気にそう言って、フィルが銃を受け取る。そしてコルクをこめ、瞳を真っ赤に発光させながら、小さな身体で銃を構えた。&lt;br /&gt;その銃口に、ウィンウィンウィンウィンという、空気が圧縮される音が響きながら、ありえない量の膨大な魔力が集中されていく。&lt;br /&gt;「誰かあのアホを止めろ……」&lt;br /&gt;センが口元をわななかせながら呟く。&lt;br /&gt;フィルは、先ほどクヌギが狙っていたぬいぐるみに銃を向けると、ためらいもなく引き金を引き。&lt;br /&gt;ズバンッ！　というショットガンのような音が響き渡ったのに驚いたのか&lt;br /&gt;「きゃっ！」&lt;br /&gt;と悲鳴を上げてしりもちをついた。&lt;br /&gt;発射されたコルク弾は高速に回転していた。&lt;br /&gt;それどころか、銃口から出るときの摩擦熱で、火がついている。&lt;br /&gt;それは高速でぬいぐるみの頭に突き刺さると、パンッ！　という軽い音を立てて、簡単にその頭を吹き飛ばした。&lt;br /&gt;それでも飽き足らず、コルク弾はそのまま背後の壁を貫通し、後ろのカフェのガラスを轟音とともに打ち砕き、そのカフェのシャンデリアも貫通し、天井を突き抜けてから一直線に空のかなたに消えていった。&lt;br /&gt;少し離れた場所から、ガシャンガシャンとガラスがくだけ落ちる音が聞こえる。&lt;br /&gt;「ふぁ……いたい……」&lt;br /&gt;「大丈夫かフィル？」&lt;br /&gt;何事もなかったかのようにフィルをたすけおこし、クヌギが彼女のコートをパンパンと叩いてやる。&lt;br /&gt;「びっくりしたよ」&lt;br /&gt;「ふむ。力を入れすぎだ。でも初めてにしては上出来だぞ。見ろ、ちゃんと落ちてる」&lt;br /&gt;くいっと親指で彼が店の中を指す。頭部がきれいに消滅したくまのぬいぐるみが床に転がっていた。&lt;br /&gt;「わあ！　やったよー！」&lt;br /&gt;「よし、次はあっちのぬいぐるみを狙うぞ。吹き飛ばしたら、もって帰ることはできない。その辺の力加減が難しいな」&lt;br /&gt;「うん！　頑張って！」&lt;br /&gt;ヒートアップしているカップルをよそに、初めてそこで我に返ったのか、パパラッチと報道陣の一団が悲鳴を上げて散りぢりに退避を始める。&lt;br /&gt;「ママさま、あれやりたいの」&lt;br /&gt;彼らの方を指さして言ったリンフロンをひょい、と抱き上げてセンがものすごい量の汗をたらしながら逆の方向を向いた。&lt;br /&gt;ロッタが絶妙なタイミングで、もっていたカバンの中から&lt;br /&gt;「リン、これ飲んでいいわよ」&lt;br /&gt;と言ってピルクルを取り出す。&lt;br /&gt;「マジなの！？」&lt;br /&gt;「お正月だからもう一本あるわよ」&lt;br /&gt;「もらうの！」&lt;br /&gt;そのままリンを抱っこして、足早に夫妻が商店街を抜けていく。&lt;br /&gt;ものすごい量の汗をかきながら、ロッタがセンに耳打ちした。&lt;br /&gt;「危険よ。あのバカ二人はマルディに連絡してどうにかさせるわ」&lt;br /&gt;「まさか寮を出て、二十分でピルクルを使う羽目になるとはな……」&lt;br /&gt;「どうすんのよ……あたしら、テレビ行かなきゃ……こんなに早くリンフロンの集中力が切れるとは思わなかったわ」&lt;br /&gt;「収録を遅らせるわけにはいかないのか……？」&lt;br /&gt;「だめだっつってんでしょバカ！　生放送どうやって遅らせんのよ！？　最悪でも三時間前にスタジオに入らなきゃ……」&lt;br /&gt;「でもリンに何とかして正月を体験させなきゃ何が起こるか……」&lt;br /&gt;「もういっそこの子スタジオに連れて行くのは……？」&lt;br /&gt;「やめてくれ……全国放送だぞ。今度こそ本当に戦争が起こる……」&lt;br /&gt;「でもあのバカ二人をどうにかできるのはマルディくらいよ……」&lt;br /&gt;「リンをどうにかできるのもマルディくらいだ」&lt;br /&gt;「どうすんのよ！？　あいつ引き裂いて二つにする！？」&lt;br /&gt;「……いやそれは、やっぱり衝動的にやっちゃったら死ぬんじゃないかな……」&lt;br /&gt;「それ以外にあたしたちにどういう選択肢が残されてるのよ！？」&lt;br /&gt;「マロンにその件はちゃんと相談したから……」&lt;br /&gt;「あの人魚何の役にも立たないじゃない！　帰省したわよあいつ我先にと！」&lt;br /&gt;「やめろ俺に八つ当たりすんな……」&lt;br /&gt;ガッと頭を掴まれ、センがプルプルしながら続ける。&lt;br /&gt;「とにかく、お前は、いいからマルディに連絡して即刻来させろ……それとトランスの実家のアレ、ほら、アレだ。あのバカホストどもに来てもらって。頼むから。奴らを回収させて。頼むから」&lt;br /&gt;また背後でドゴンという爆発音が聞こえる。&lt;br /&gt;その方向を向こうとしたリンの頭をくいっと前に向け、ロッタがもう一本ピルクルを取り出して渡す。&lt;br /&gt;「ありがとうなの！」&lt;br /&gt;元気に言って二本目を幸せそうに飲みだした娘（仮）を見てから、ロッタが無言でセンの尻尾をひねり上げた。&lt;br /&gt;「急ぎなさい……一本目が切れたわ。とりあえず最終手段よ。封印してきて。幸運を祈るわ」&lt;br /&gt;「分かった。任せろ」&lt;br /&gt;そう言って、悶絶している夫（仮）を置いて、彼女はさりげなくわき道の家と家の隙間に入り込んだ。そしてしゃがんで携帯を取り出し、耳に当てる。&lt;br /&gt;なるべくリンに気づかれないように、センはスタスタスタとものすごい速度で寮に向かって戻り始めた。&lt;br /&gt;彼らは、新年のバラエティー番組に、ザインフロー学園代表生徒ということで出演が決定している。&lt;br /&gt;年末のごたごたで、その間リンをどうするか、その打ち合わせをすることができなかったのだ。&lt;br /&gt;そうこうしているうちに年が明けてしまい、バカな人たちを残して、他の生徒が帰省してしまった。&lt;br /&gt;気づいた時には、リンが正月を満喫したいと騒ぎ出し、かといってテレビに出すわけにもいかず（国際問題になります）にっちもさっちもいかなくなっていたのだ。&lt;br /&gt;寮を破壊される前に外に連れ出してきて今に至る。&lt;br /&gt;実の娘（仮）を、テレビに出演している間だけでも静かにしてもらいたく。&lt;br /&gt;夫婦（仮）が選んだ最後の手段は、封印だった。&lt;br /&gt;リンは何気に魔力の含有総量が天文学的な単位になっているので、気絶薬が効かない。&lt;br /&gt;とりあえず人気がない場所に移動して、さりげなく封印しよう……。&lt;br /&gt;できるかな……。&lt;br /&gt;不安な目でセンが、手の中でピルクルを飲んでいるリンを見下ろす。&lt;br /&gt;最悪、ロッタ一人でテレビに出てもらうか……。&lt;br /&gt;抵抗されたら大変なことになる……。&lt;br /&gt;深いため息をついた父を見上げ、ハーフの子が首をかしげる。&lt;br /&gt;「パパさま、方向が逆なの。おまつりに行くの」&lt;br /&gt;気づかれたか……。&lt;br /&gt;青い顔で彼は、無理やり笑顔を作って答えた。&lt;br /&gt;「なあリン、相談なんだけど……」&lt;br /&gt;「嫌なの」&lt;br /&gt;「まだ何も言ってねえ……」&lt;br /&gt;「パパさまとママさまは、今日は私と一緒にお祭に行くの。異論はいっさいみとめないの」&lt;br /&gt;「異論とか、お前難しい言葉知ってるな……」&lt;br /&gt;「そういえばママさまがいないの」&lt;br /&gt;「気のせいさ。それよりリン、相談なんだが……」&lt;br /&gt;「もう一本ピルクルがほしいの」&lt;br /&gt;空になった二本の五百ミリペットボトルを父に渡し、大きな目を細めて笑う。&lt;br /&gt;「お正月なの！」&lt;br /&gt;「話を聞け……」&lt;br /&gt;「クリスマスが中止になったから、お正月は遊ぶって約束なの（前回参照）」&lt;br /&gt;「くそ……そんな約束をしたな……ああしたさ……」&lt;br /&gt;「じゃ戻るの。ターンライトなの」&lt;br /&gt;「あ、リンあれ何だ！？」&lt;br /&gt;「え？」&lt;br /&gt;そこでセンが、突然大声を上げて彼女の背後を指差した。&lt;br /&gt;古典的な手に引っかかり、伝説の魔獣がぐるんと振り返る。&lt;br /&gt;その隙に、センは目を光らせ、ポケットから封印瓶を取り出して振りかぶった。&lt;br /&gt;「悪く思うなよ」&lt;br /&gt;ニヤリと笑った彼（父）の手の中で、しかしリンはパッと顔を輝かせた。&lt;br /&gt;「あ！　えーと……えーと……えー……うさぎ！　うさぎー！」&lt;br /&gt;意味不明な単語を口走り、彼女は自分を抱いている父を、ネコがやるように後ろ足で踏み台にして、ぴょんと地面に降り立った。&lt;br /&gt;不意のその行動にも魔力がこもっていたのか、センが石畳の地面に轟音を立てて後頭部から突き刺さる。&lt;br /&gt;頭を抑え、ごろごろとその場をころがっている父を見捨て、リンがピヨピヨと子供用靴を鳴らしながら走り出す。&lt;br /&gt;封印瓶は衝突の瞬間に砕けたのか、その場に粉々になって散らばっていた。&lt;br /&gt;「うさぎー！」&lt;br /&gt;大声で呼ばれ、振袖を着ていた兎耳の獣人が立ち止まって振り返った。&lt;br /&gt;周りがざわざわとして、種族の外見を呼びながら走ってきたドラゴンの娘と、呼ばれたらしい兎娘を目で追っている。&lt;br /&gt;普通衆人環境の中で種族の名前を呼ぶことはしない。差別に繋がることもあるからだ。&lt;br /&gt;案の定、兎耳の娘の周りに取り巻きのようになっていた、ガラの悪そうな女の子達が、顔をしかめてリンを見た。&lt;br /&gt;息を切らせて前でとまったドラゴンハーフの娘を見て、兎耳の娘だけは、少し離れた場所でころがっている学園のアイドルらしき人物に気づいたらしかった。&lt;br /&gt;「うさぎ！　久しぶりなの！」&lt;br /&gt;名前を忘れているらしい。&lt;br /&gt;口の周りをピルクルでベトベトにしながら、小さな子供が親しげに話しかけている。&lt;br /&gt;取り巻きの女の子の一人が、鼻の脇をピクリと歪ませてからリンの前にしゃがみ込み、威嚇をするようにその顔を覗きこんだ。&lt;br /&gt;「何？　このガキ？」&lt;br /&gt;「邪魔なの」&lt;br /&gt;出足払いの要領で、小さな子供が、自分よりもはるかに大きな鳥羽の子の腰をおし、足を払って脇に放り投げた。&lt;br /&gt;ズバンと地面に転がった彼女が目を回してその場に崩れ落ちる。&lt;br /&gt;「ん何だこの子供おお！」&lt;br /&gt;「ナメてんのかああ！？」&lt;br /&gt;「誰の子だこれはあ！」&lt;br /&gt;ガラの悪い女の子達が、一人視線が泳いでいる兎耳の子の前に進み出る。&lt;br /&gt;そのうちの一人に、着ていた振袖の襟元を掴みかけられ、しかしリンは下駄で起用にくるりと回ってから、今度はその手を掴んで、片手でひょい、と背中越しに投げ飛ばした。&lt;br /&gt;続いて、ポカンとした残りの二人にすり足で接近し、目を光らせた後に、パンパンと、その顎に掌底を叩き込む。&lt;br /&gt;白目をむいて女の子達が崩れ落ちた。&lt;br /&gt;手の平の埃を払い、リンは呆然としている周りの人たちを見回し。&lt;br /&gt;振袖服の裾を摘んで、ちょい、とポーズをとってみせた。&lt;br /&gt;何らかのアトラクションだと思われたらしく、一人がパチパチパチパチと拍手をし始め、次いでその場を歓声とクラッピングの音が包み込む。&lt;br /&gt;地面に死屍累々となった友人達を見下ろし、兎耳の娘、テュテは頭を押さえて深いため息をついた。&lt;br /&gt;「何だこの状況……」&lt;br /&gt;「久しぶりなの、うさぎ」&lt;br /&gt;「うさぎっつうな。また出たよ変な子供……」&lt;br /&gt;「うさぎ、ピルクル持ってないの？　ヤクルトでもこの際いいの」&lt;br /&gt;「持ってること前提！？　持ってきてるわけねーだろ！」&lt;br /&gt;「じゃあ買いに行くの。どこに売ってるか、案内して欲しいの。パパさまは頼りにならないの」&lt;br /&gt;「てめー……パシらせるつもり全開だな。いや、まあいいや……お前そこ動くな。分かったか？　分かったら返事」&lt;br /&gt;「じゃあ一分だけ待ってあげるの」&lt;br /&gt;「随分立場が上だな！？　ま、まあいいから絶対そこ動くなよ！」&lt;br /&gt;言い残し、慌ててテュテは目を回している仲間達を揺り起こし、ボソボソと状況を説明し始めた。&lt;br /&gt;車座になっていたガラの悪い子たちが、一拍後、目を丸くしてリンを見る。&lt;br /&gt;「ちょ、どうすんのリーダー？」&lt;br /&gt;「てか何でそんなのがこんなところにいるわけ？　超意味わかんないんですけど」&lt;br /&gt;「おれだって意味わかんねーよ！　とにかく、ここで騒ぎを起こすのは不味いわ。あんたらは先に教会にいきな。おれはあのチビどうにかするわ。何か気に入られて、わけわかんねーんだよ」&lt;br /&gt;「確かあれって、三年に何故かいるアレでしょ……？」&lt;br /&gt;「そうそう。あの淫乱妖精の……」&lt;br /&gt;「ああ、あの乳の……」&lt;br /&gt;「乳がでけーならせめてバカであれってな……」&lt;br /&gt;「マジ！？　超しんじらんないんですけど？　子持ち！？」&lt;br /&gt;「うるっせーな早く行きなっつってんだよ！」&lt;br /&gt;女の子達を手で追い散らしたテュテを見上げ、自分の脈拍を測っていたリンが、口を開いた。&lt;br /&gt;「一分経ったの」&lt;br /&gt;「恐ろしい測り方してんじゃねーよ！　ほんと突っ込みどころしかねーなお前！」&lt;br /&gt;「うさぎは突っ込んでくれるからいいの。ママさまたちは放置するから、正直つらいの」&lt;br /&gt;「放置とかおまえ難しい言葉知ってるな……」&lt;br /&gt;「ほら、いいからとりまきはさっさと散りなさいなの。チャラチャラチャラチャラめざわりなの」&lt;br /&gt;さりげなくひどいことを言い放ち、天使のような笑顔でリンがテュテの手を引いた。&lt;br /&gt;「リーダー、この小さいの、一発ぶん殴ってっていいですか？」&lt;br /&gt;仲間に言われ、テュテはまたため息をついて、ひらひらと手を振って彼女達を脇に押し出した。&lt;br /&gt;「耐えな。あとでセンシエスタ様からサインもらってきてやんよ」&lt;br /&gt;「聞かなかったことにするの」&lt;br /&gt;「だから何でお前そんなに強気なの！？」&lt;br /&gt;ぶつくさ言っている仲間達を見送り、テュテは野次馬に囲まれている、いまだに後頭部を押さえてころがっているセンを一瞥した。&lt;br /&gt;誰もあの無様な姿が、学園のアイドルだとは思わないだろう。&lt;br /&gt;現にしゃがみ込んで「救急馬車（救急車のようなものです）！　早く！」&lt;br /&gt;とか叫んでいる野次馬も、全く気づいていない。&lt;br /&gt;地面に放射状に五、六メートルほどひびが入っている。中心部にはべっとり血がついていた。&lt;br /&gt;「お前、正月早々パパさまに何したんだ……」&lt;br /&gt;テュテにボソリと聞かれ、そこで初めてリンは父が瀕死になっていることに気づいたらしかった。&lt;br /&gt;「……」&lt;br /&gt;「唖然とすんな。お前以外アレができる奴はいねーだろ」&lt;br /&gt;「リアルな話、私は今とても動揺しているの」&lt;br /&gt;「動揺してんのか……難しい言葉知ってるんだな……」&lt;br /&gt;「非常事態だから、ちょっとママさまを呼ぶの」&lt;br /&gt;下げていたポーチから、卵形のお子様携帯を取り出し。&lt;br /&gt;五歳児ほどの彼女が、冷静に耳に当てる。&lt;br /&gt;「慣れてんなお前……」&lt;br /&gt;「ママさま？　あのね、パパさまが今にも死にそうなの」&lt;br /&gt;電話の向こうから、悲鳴が聞こえた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　脳の大事な部分が傷ついたらしく、なかなか復活しないセンが救急馬車に詰め込まれていく。&lt;br /&gt;青白い顔をしながら、ロッタが深く重いため息をついた。&lt;br /&gt;そして野次馬の中でピルクルを飲んでいるリンの頭をガッと掴んで、恐ろしい目で覗き込む。&lt;br /&gt;当のリンは頭蓋骨をミシミシ言わせながら、両手でピルクルの瓶をつかんだ姿勢で硬直していた。&lt;br /&gt;「状況を説明しなさい……」&lt;br /&gt;「未失の故意なの………………」&lt;br /&gt;「難しい言葉でごまかそうとするんじゃないわよ……」&lt;br /&gt;「…………正直ごめんなさいなの…………」&lt;br /&gt;「素直に謝れるようになったわね……パパさまは脆いから気をつけるようにって、あれほど言ってるじゃない……」&lt;br /&gt;「つい、こう力が入ったの……」&lt;br /&gt;「お正月から何やってんのよ……！！」&lt;br /&gt;「頭が…………！」&lt;br /&gt;プルプルしているリンとロッタを交互に見て、テュテが控えめに口を開いた。&lt;br /&gt;「あー……ええと……アルヴァロッタさん？」&lt;br /&gt;「部外者は黙っててください。今ちょっと教育の途中ですから」&lt;br /&gt;「いや、馬車行っちまいますけど……」&lt;br /&gt;指差された方向の、センが詰め込まれた馬車が走り出そうとしているのを見て、ロッタは慌てて&lt;br /&gt;「ちょ、待ってください！　あたし親族です！」&lt;br /&gt;と庶民感溢れる声を張り上げた。&lt;br /&gt;そしてリンから手を離し、頭を押さえてしばらくその場をぐるぐると歩き回る。&lt;br /&gt;「あーもう。これ以上ママの胃には穴が開く部分がないわよ！　もういい！　そんなにわがまま言いたいなら、一人で勝手に遊んでなさい！」&lt;br /&gt;叱り飛ばされて、リンがビクッとして縮こまる。&lt;br /&gt;その目に少しずつ涙が盛り上がり、彼女はぐっ、と息を詰まらせた。&lt;br /&gt;「私も行くの……」&lt;br /&gt;「お尻ひっぱたかれないだけましだと思いなさい。ママはほとほと呆れ返ったわ。お金ならほら、渡すから、勝手に遊んで勝手に帰ってきなさい。もう知らないから」&lt;br /&gt;結論は見事なまでの放置だった。&lt;br /&gt;リンの手にカードを押し込み、ロッタはパタパタと馬車に走っていってしまった。&lt;br /&gt;突っ込むこともできずに、テュテとリンが取り残される。&lt;br /&gt;馬車がガラガラと音を立てて走り出す。&lt;br /&gt;俯いて、ハーフの子がしゃっくりを上げる。&lt;br /&gt;その頭をポン、と撫でてテュテがため息をついた。&lt;br /&gt;「まあ、後で謝れよお前……ついに置き捨てられたか……」&lt;br /&gt;「どうしてこんなことに……」&lt;br /&gt;「全力で自分の責任じゃね！？　理解してないよこの子！　何かもう不憫すぎてあの妖精に何もいえなかったじゃねーかよ！　畜生！」&lt;br /&gt;「家族で遊ぶのお゛おぉ゛……」&lt;br /&gt;去っていく馬車を見ながら、ボロボロとリンが泣き出す。&lt;br /&gt;それを慌てて脇のほうに引っ張っていき、兎娘はハンカチで顔を拭いてやりながらあきれた声を発した。&lt;br /&gt;「家族でって……一人消したの自分だろ……」&lt;br /&gt;「うあ゛ぁ゛あぁぁ゛……」&lt;br /&gt;「泣くな。分かった。何だかよくわかんねーけど分かったことにしてやる。パパさまは死にゃしねーよ」&lt;br /&gt;「びぃぃ゛ぃぃ……」&lt;br /&gt;「泣くなっつーの。うっ゛！　何かここ重力が……おも……っ゛！」&lt;br /&gt;ズンッ！　とリンを中心にして半径三メートルほどの地面が、綺麗に、五十センチほどの深さに、円形に陥没した。&lt;br /&gt;周囲の家の窓ガラスが、パンパンパンパンパンと次々に粉々に割れていく。&lt;br /&gt;次いで周囲を津波のような空気の微振動が包み込んだ。&lt;br /&gt;ガラスや金属類に、周囲五百メートル半径ほどのエリアすべてヒビが走り始める。&lt;br /&gt;野次馬全体が、鼓膜を振るわせる高周波のような音に気づいたらしく、おのおの悲鳴を上げて耳をふさぎ始めた。&lt;br /&gt;音密度が凄まじいことになっている中、テュテがリンの魔力により地面にめり込んでいく。&lt;br /&gt;「ちょっ……し、しぬ……」&lt;br /&gt;慌てて兎娘は、プルプルしながら這っていき。&lt;br /&gt;そして、泣いているリンの足をガッと掴んだ。&lt;br /&gt;「おちつけ……お、おれ……おれが一緒に回ってや……やるから………………」&lt;br /&gt;ひっくひっくとしゃっくりを上げながら、リンがテュテを見下ろす。&lt;br /&gt;「…………」&lt;br /&gt;「ま…………まつりいくぞ…………だ、だから泣くな…………」&lt;br /&gt;「うさ゛ぎぃ゛……」&lt;br /&gt;フッ、と重力の力場が消えた。&lt;br /&gt;リンがしゃがみ込んで兎娘の首に抱きつく。&lt;br /&gt;はー……はー……と息をつきながら、真っ赤な目でとりあえず。&lt;br /&gt;テュテは、倒れている通行人達の間を縫って、リンを抱き上げ、急ぎ路地向こうへと駆け出した。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;　数分後、ピンピンしているリンの手を引き、げっそりとしたテュテが、遠くで鳴り響いている救急馬車のサイレンを聞きながら天を仰いだ。 &lt;br /&gt;「あー……不吉な正月だ……」 &lt;br /&gt;「とりあえずヤクルトの屋台を探すの」 &lt;br /&gt;「どんだけ乳酸菌に餓えてんだてめー！　もう乳酸菌そのまま水に溶かして摂れよ！」 &lt;br /&gt;「……あなたは何を言っているの？　乳酸菌はヤクルトじゃない。それはただの乳酸汁よ……」 &lt;br /&gt;「いやそもそもヤクルトって………………あれ？　ちょ、今おまっ、あれ！？　何か今、標準語が聞こえたんだけど！？」 &lt;br /&gt;「何も言っていないのなのー」 &lt;br /&gt;「可愛い顔でごまかしてんじゃねーぞ！　何だァその目はァ！　憐れみを込めんな！」 &lt;br /&gt;「うさぎ、知ってる？　ママさまはよくテレビに出てるけどね、写真集の握手会とかの後には、必ず手を洗ってアルコールで除菌してるの。一時間くらい」 &lt;br /&gt;「聞いてねえし聞きたくねえーよそんな裏話！　話すり替えてんじゃねーぞ！」 &lt;br /&gt;「あと、実は家の中ではジャージでね、基本的に上半身は着な」 &lt;br /&gt;「やめろおお！　おまっ、信憑性のない情報で世間を混乱させるつもりか！？　家族をもっと大事にしろよ！」 &lt;br /&gt;激しく突っ込んでから、テュテは考える人のようなポーズで、ベンチに腰を下ろした。 &lt;br /&gt;「ちょ、タンマ……まだ正直オレ、体治ってないんだよ……酸欠……お前にだけは言うけど、実は俺病弱なんだよ……」 &lt;br /&gt;「若いのにだらしないの」 &lt;br /&gt;「てめーさっきまでの一連の流れ、微塵も反省してねーだろ！？」 &lt;br /&gt;「みじんとか、難しい言葉を使われると、正直私ムカッとする」 &lt;br /&gt;「時たま標準語に戻るのやめてくんない！？」 &lt;br /&gt;頭を抑えてしばらく息をつき、彼女は眼尻を指で押した。 &lt;br /&gt;「お前のママ様の苦労が分かるよ……オレ、絶対子供つくんねえ」 &lt;br /&gt;「あんな鬼ババはもうママさまじゃないの。カードはこっちにあるんだから、あとはやり放題なの」 &lt;br /&gt;「さっきから聞き違いかな……？　何か聞いちゃいけないセリフがポンポン出てきてないか、お前の口？」 &lt;br /&gt;「世の中お金なの。これで私は夢の一人暮らしに乗り出せるの」 &lt;br /&gt;「うわあ最低だこの子！　どっちに似たんだこいつ！？」 &lt;br /&gt;「うわさによると、パパさまのお爺ちゃんの生まれ変わりだって言われてるの」 &lt;br /&gt;「そこ答えなくていいから！　お前まさかそれ言い訳にしてんじゃねーだろうな！？」 &lt;br /&gt;「でもその噂は間違いなの。パパさまのおじいちゃんは、今私の背後で絶賛背後霊家業中なの」 &lt;br /&gt;くいっと親指で後ろを指したリンから体を離し、テュテは本格的に突っ込み酸欠に陥ったのか、背中を丸めてバタバタと手を振った。 &lt;br /&gt;「とめろよじじい！　ひ孫が暴走してるぞ！」 &lt;br /&gt;「日々の抑圧された私のふくしゅうが今始まるの。あの鬼ババに目にものみせてくれるの」 &lt;br /&gt;「苦労してんだなお前……何かもうどうでもよくなってきた……」 &lt;br /&gt;「ふふふ。カードを渡したのが運の尽きなの。とりあえずあの屋台を買うの」 &lt;br /&gt;「屋台ごと！？」 &lt;br /&gt;「おじさん、屋台を買うの！」 &lt;br /&gt;意味不明な言葉を口走りながら、リンがピヨピヨと、近くのチョコバナナの店に近づく。 &lt;br /&gt;「あーもう気が済むまで行っておいでー……」 &lt;br /&gt;テュテに手を振り、得意げな顔で五歳児が屋台のおやじと交渉している。 &lt;br /&gt;しばらくして、なぜか一本だけチョコバナナを持って、リンはトボトボとテュテの元に戻ってきた。 &lt;br /&gt;「おかえり」 &lt;br /&gt;「屋台ではカードは使えないって言われたよ……」 &lt;br /&gt;「だろうな……」 &lt;br /&gt;「あの鬼ババ分かってて渡したなぁあ！」 &lt;br /&gt;パシーンとゴールドカードを地面に叩きつけ、癇癪を起こしたリンの周囲、半径三十センチほどの地面が、ボコンと円形に陥没する。 &lt;br /&gt;「まあ、祭ってそういうもんだよ……良かったじゃないか。また一つ大人に近づいたぞ」 &lt;br /&gt;ペリペリと地面に張り付いたクレジットカードをはがして埃を払ってから、テュテはしょんぼりと脇に座ったリンの頭に手を置いた。 &lt;br /&gt;「また持ち上げてから落とされたの……」 &lt;br /&gt;「お前、全ての面においてママさまの手の平の上で踊ってるよ……」 &lt;br /&gt;カードの使用期限が切れている。 &lt;br /&gt;そこは言わないでおいてあげてから、テュテはそれを懐にしまった。 &lt;br /&gt;「うさぎ……希望をちらつかせてから落とされるのって、想像以上に心にくるの……」 &lt;br /&gt;「うさぎっつうな。負けを認めろよ。素直に病院行って謝ってきな」 &lt;br /&gt;「病院に行ったら殺されるの。本能というか、後ろのひいおじいちゃんがそう言ってたの」 &lt;br /&gt;「ひ孫をそそのかすなじじいぃぃ！　正しい道に導いてやれよおお！」 &lt;br /&gt;「日ごろ苦労してる私のお正月の成果が、ピルクル三本とチョコバナナ一本っていうのは、何というか人生的に割に合わないの…………」 &lt;br /&gt;アンニュイなため息をついたリンに、テュテは腰の痛みをしばらく堪えてから、息を吐いて言った。 &lt;br /&gt;「しゃーねえなあー。金なら出してやんよ。満足したらママさまに謝りに行けよ」 &lt;br /&gt;「いいのなの！？」 &lt;br /&gt;「別にいいよそれくらい。何をやりたいんだよ」 &lt;br /&gt;「とりあえずあのチョコバナナの屋台をもらいうけるの」 &lt;br /&gt;「屋台から離れろ。お前がゲットできるのは商品までだ。まずそこから理解しないと正月はやってこねえ」 &lt;br /&gt;「え～……」&lt;br /&gt;「何で不満げ？　大体お前、チョコバナナの店なんて手に入れてどうするつもりなんだよ」&lt;br /&gt;「これにチョコをかけるの」&lt;br /&gt;そう言って、リンは先ほどテュテが買ってきてくれたピルクルの蓋をキュポンと開いた。&lt;br /&gt;そして、さりげなくたいらげていたらしいチョコバナナの串をそっと中に差し込む。&lt;br /&gt;何をしているのかと首をかしげたテュテの前で、リンは&lt;br /&gt;「ふっ！」&lt;br /&gt;と串に魔力を込めた。&lt;br /&gt;そして一拍後。&lt;br /&gt;「この前できるようになったの」&lt;br /&gt;と言いながら、ずるんと、中身のピルクルを引きずり出した。&lt;br /&gt;魔力による空間制御の超・高等魔術だった。&lt;br /&gt;本人は気付いていないのだろうが、にゃんこ先生が反物質を形成した時の魔法（SSS３話参照）に酷似している。&lt;br /&gt;それだけで特許が出願できる程の巧みな魔力コントロールで、液体を、まるでプリンのように空間に固着させていた。&lt;br /&gt;つまるところ、ピルクルのゼリーのようになっている。&lt;br /&gt;ぶるん、と串の先に突き刺さったピルクルをテュテに向け、唖然としている彼女にリンは言った。&lt;br /&gt;「私が手を離したら、元のピルクルに戻るの」&lt;br /&gt;「……えぇぇぇえ！？　何これ！？　何でこんなんになってんの！？」&lt;br /&gt;素っ頓狂な声をあげ、兎娘がつんつんとピルクルプリンをつつく。&lt;br /&gt;「うわっはー！　すっげええー！　おもしれえー！」&lt;br /&gt;「特に疑問を抱かないうさぎは、ほんとにいい友人なの。みんなみんなスルーするから、自信がなくなってたところなの」&lt;br /&gt;「いや、何かもうあらゆる全てが疑問だらけだ。一周回ってどうでもよくなってきた」&lt;br /&gt;「何故かピルクルとヤクルト以外じゃできないの」&lt;br /&gt;「おめーの集中力が問題なんじゃねーの？」&lt;br /&gt;「それはあるかもしれないの」&lt;br /&gt;うん、と頷いたリンを見て、テュテは少し考え込んだ。&lt;br /&gt;「説明して相手が理解するかどうか分かんねーけど、それくらいなら頼んでみりゃいいんじゃね？」&lt;br /&gt;「第三女子寮カフェのコックさんには鼻で笑われたの。あれほどの屈辱を鬼ババ以外から受けたことは、いまだかつてなかったことだったの……」&lt;br /&gt;「めんどくせーなーお前ら第一貴族はもー」&lt;br /&gt;ぶつくさ言いながら、テュテがリンの手をひいて先ほどの屋台に近づいた。&lt;br /&gt;そして一言二言話をし、あっさりとピルクル（？）をチョコにくぐらせる交渉を済ませてから、リンを抱えあげる。&lt;br /&gt;チョコバナナ屋のおやじは、ノリがいい人らしく、固まったピルクルを見て爆笑していた。&lt;br /&gt;「ほら、とっととくぐらせな」&lt;br /&gt;溶けたチョコバナナ用のチョコレートがぐつぐついっている寸胴の中を覗きこんで、リンが青い顔でテュテの方を振り向いた。&lt;br /&gt;「何か知らないけどうさぎが交渉したら一瞬で夢がかなったの……」&lt;br /&gt;「お前はもう少し自分を客観的に見た方がいいな」&lt;br /&gt;「しっかしおもしれー特技持ってるなー変な嬢ちゃん。テレビに出れるんじゃねーか？」&lt;br /&gt;おやじに話しかけられ、リンはテュテに抱かれた姿勢のまま尊大に頷いてみせた。&lt;br /&gt;「パパさまとママさまはもう出てるから、私も近いうちにデビューするの。印税とかなんとかでウハウハだってひいおじいちゃんが言ってるの。そしたら、よくあつされた生活から抜け出て羽ばたく予定なの。その時老後のしんぱいをしても無駄だってこの前言ったら、腕ひしぎ四の地固めをキメられたの。あれはどう考えてもいたいけな子供に対する虐待なの」&lt;br /&gt;「どぅあっはっは！　妹さんおもしれーなあ！　印税とか難しい言葉知ってるじゃねーか！」&lt;br /&gt;バンバンとおやじに背中を叩かれ、テュテは三白眼のような目で&lt;br /&gt;「はあ……まあ……」&lt;br /&gt;と、一連の台詞に突っ込み切れず、曖昧に頷いた。&lt;br /&gt;姉だと思われている。母親だと思われなくて良かった……と息を吐いた彼女の手の中で、リンはピルクル（？）をずぼっ、と鍋に入れた。&lt;br /&gt;おやじが手を貸し、くるくると回させてから引きあげる。&lt;br /&gt;ここに、奇跡のチョコ包みのピルクルが誕生した。&lt;br /&gt;爆笑しているおやじを背後に、リンは手を震わせながら、ぶよんぶよんしている何だかよく分からない物体を、唖然と口を開けて見つめていた。&lt;br /&gt;「お前どうすんだよそれ。食うの？　飲むの？」&lt;br /&gt;テュテに聞かれ、リンは&lt;br /&gt;「こうするの」&lt;br /&gt;と答え、手に魔力を集中させた。&lt;br /&gt;プリン型だったピルクルが、うにょーんと伸びてバナナの形に変わる。&lt;br /&gt;周囲の視線を意に介さず、五歳児はサクッ、とそれを噛んだ。&lt;br /&gt;その目が一瞬真っ赤に輝き、彼女は弾かれたようにテュテを見上げた。&lt;br /&gt;「…………イケる…………！！」&lt;br /&gt;「もうどこから突っ込んでいいやら分かんねーよ」&lt;br /&gt;こぼれないらしい。&lt;br /&gt;何かもう、それならそれでいいや、と。&lt;br /&gt;テュテは、おもしろかったから金はいいと言い親指を立てているおやじに親指を立て返し、屋台を離れた。&lt;br /&gt;「もう満足か？　ほら病院に行くぞ。おれはもう満足だ」&lt;br /&gt;「病院には行かないの。どうせパパさまたちは、もう病院になんていないの」&lt;br /&gt;ぷくうと頬を膨らませ、彼女は歩きながら続けた。&lt;br /&gt;「一回、後ろのひいおじいちゃんに教えてもらって、パパさまに、爆裂キャットフィンガーを放ったことがあったの。体表の八十パーセントが黒焦げになってたけど、パパさまは十五分で蘇生したの。あのくらいの出血で死にはしないの。鬼ババがヒステリっただけなの」&lt;br /&gt;「ひ孫に何教えてんだじじいい！　てゆうか何！？　ほんとにいるのそこに！？」&lt;br /&gt;「普段は見えないけど、夢の中とか白昼夢とかで時たま出てくる」&lt;br /&gt;「とりあえずそいつをどうにかしないと、お前は将来ひねくれた大人になるとおれは思う……」&lt;br /&gt;早口でそういって、テュテは再びベンチに腰を下ろした。&lt;br /&gt;「…………疲れた…………」&lt;br /&gt;「わかいのにだらしないの」&lt;br /&gt;「もうそれでいいよ……少し休ませてくれ……」&lt;br /&gt;元々テュテは教会に行ったらすぐに帰る予定だった。冗談ではなく、あまり体の調子がおもわしくないのだ。&lt;br /&gt;考える人のようなポーズになった兎娘の隣に腰を下ろし、リンはチョコピルクルをかじりながら言った。&lt;br /&gt;「そろそろ限界なの？」&lt;br /&gt;「マジな話、ちょっと、しばらくの間ボケないでくれ……短時間に何回も突っ込みすぎた……」&lt;br /&gt;「牛おじさんも時たまそういう状態になるけど、うさぎほどつらそうじゃないの」&lt;br /&gt;「牛おじさん？」&lt;br /&gt;「おじいちゃんみたいな立ち位置の人なの」&lt;br /&gt;「お前を取り巻く環境はどうなってんだよ……だめだぞー……世の中危険なおじさんもたらふくいっかんな」&lt;br /&gt;「ぶっちゃけた話、その点ではパパ様が一番危険だと思うの」&lt;br /&gt;「やめてくれ……これ以上おれの中のアイドル像に踏み込まないでくれ……」　&lt;br /&gt;聞きたくないと拒否して頭を押さえたテュテを、心配そうにリンが覗きこんだ。&lt;br /&gt;「うさぎ、顔が青いの……そろそろ寿命なの？」&lt;br /&gt;「頼むから、もうしばらくボケないでくれ……おれ、肝臓と、生まれつき肺が弱いから、長時間の突っ込みには耐えられない体なんだよ……」&lt;br /&gt;「ずいぶんと不憫な体に生まれたの……」&lt;br /&gt;「おめーに言われたかねーよ……」&lt;br /&gt;「何か飲むものを買ってきてあげるの。だからお金を頂戴」&lt;br /&gt;「気を遣ってくれんのか……そのセリフにはすごい違和感を感じるけどな……まあいいや。じゃ……薬飲むから、俺には温かい飲みもの買ってこい。お前はピルクルでも何でも買ってくるがいいさ……」&lt;br /&gt;懐からコインを出してリンに渡す。&lt;br /&gt;五歳児は「はいなの」と言い残し、ピヨピヨとジュースを売っている屋台まで走って行った。&lt;br /&gt;それくらいのことはできるだろ……と傍観しているテュテの目に、屋台のお姉さんと小さい子供が、しばらくの間何事かを交渉しているのが映った。&lt;br /&gt;遅いな……と思いながら呼吸を整える。&lt;br /&gt;よし、安定したと気合を入れ直したところで、ピヨピヨとリンが戻ってきた。&lt;br /&gt;「買ってきたの」&lt;br /&gt;「あーはいはい……ありが熱っ゛！」&lt;br /&gt;渡されたガラス瓶を慌てて脇に置き、テュテはそれを見て素っ頓狂な声を上げた。&lt;br /&gt;「ピルクルじゃねーか！！！」&lt;br /&gt;「特別に温めてもらってきたの」&lt;br /&gt;「薬飲むって言わなかった！？　ばかやろー！！　乳酸菌死滅してるだろこれ！！」&lt;br /&gt;「ピルクルでもお薬は飲めるの」&lt;br /&gt;「お前と一緒にすんじゃねえよ！　お前の中の飲み物は乳酸菌一択しかな……う゛っ……腰が……」&lt;br /&gt;「つ、冷たいピルクルもあるの！」&lt;br /&gt;「…………ピルクルから離れろよ…………」&lt;br /&gt;ぜー、ぜーと息をついてから、とりあえずテュテは温かいピルクルの蓋をあけ、バッグから取り出した薬と一緒にのどに流し込んだ。&lt;br /&gt;「何かすっぱいんだけどよ……」&lt;br /&gt;「だろうね……」&lt;br /&gt;「分かっててやったのか……嫌がらせ以外のなにものでもねーな……」&lt;br /&gt;「それはいいけど、うさぎ、具合が悪いなら馬車呼ぶ？」&lt;br /&gt;「もういい余計なことすんな……」&lt;br /&gt;リンの言葉を遮って、テュテはまた息をついた。&lt;br /&gt;「とりあえず、教会で一緒にミサは受けてやっけど、その後は、おめーを家まで送るからな。別に正月は今日だけじゃねーんだから、ちゃんとママさまとパパさまに謝って、明日明後日にもう一回来な」&lt;br /&gt;言われて、リンは初めて一瞬止まった。&lt;br /&gt;そして、手の中のピルクルを弄りながら、目線をそらす。&lt;br /&gt;「私は今日からうさぎの娘になるの。だからうさぎの家に帰るの」&lt;br /&gt;唐突に重要なことをさらりと言われ、テュテは突っ込もうとして失敗し、激しく咳込んだ。&lt;br /&gt;しばらくして呼吸を整えてから頭を抑える。&lt;br /&gt;「お前なー。ちょっと怒られたくらいで拗ねるなよ」&lt;br /&gt;「毎日怒ってばっかいる鬼ババはもう嫌なの。うさぎも私のことうざい？」&lt;br /&gt;聞かれ、テュテは人ごみに視線を移し、しばらくしてからボソリと言った。&lt;br /&gt;「……ちょびっと……うざい……」&lt;br /&gt;「何パーくらい？」&lt;br /&gt;「ギリで四十パーくらいかな……」&lt;br /&gt;「それくらいなら大丈夫。まだイケるの。うさぎは強い子だから」&lt;br /&gt;「ひるまないどころか上から目線だよこの子！！　くっそー……どこがターニングポイントだったんだ……変な子供に気に入られちまった……」&lt;br /&gt;「ママさまはきっと、私のことなんていない方がいいと思ってるの。そろそろ臨界点を超えると思ってたけど、今日ついに超えたの……」&lt;br /&gt;ため息をついて、リンはボソ、と言った。&lt;br /&gt;「パパさまも最近、すきあらば封印しようとするし、きっと私のことなんかもう要らないの。ごはんも一人で食べに行くことがおおくなったの」&lt;br /&gt;テュテは少し押し黙ってから、五歳児の頭に手を置いて口を開いた。&lt;br /&gt;「まあ確かに、ママさま若いから色々あるんだろうけどなー。お前が要らないなら、もっと早くに捨ててると思うぞ、おれは。少なくともお前みたいな子供なら、おれはそうする」&lt;br /&gt;「もっと早くも何も、私はまだ産まれてから一年も経ってないの」&lt;br /&gt;「何言ってんだ？　ちょっと、ほら落ちつけ。意味分かんねーこと言ってるぞ。おめーをとり残して帰ったりしねーよ。絶対死人が出る……」&lt;br /&gt;「げんにまだパパさまもママさまも私を探しに来ないの」&lt;br /&gt;「うーん……」&lt;br /&gt;そうだなあ、と心の中で頷いて、兎娘は流れる人ゴミを見つめた。&lt;br /&gt;「みんな私を怖がるの。怖がらないのはママさまとうさぎくらいなの。怒るのはママさまくらいなの」&lt;br /&gt;「お前を怒ってくれる人がいるってのは貴重だと思うぞー」&lt;br /&gt;何気なく、ぼんやりとテュテが言った。&lt;br /&gt;「怒ってもらえるうちが華だぜ？　人間、大きくなっても忘れねえのは、褒めてもらったことよりも、怒ってもらったことだかんなー。大きくなって、褒めてもらうのは簡単だけどよ、親に怒ってもらいたいと思った時には遅いことだってずいぶんあるぞ」&lt;br /&gt;「……でもどっちかというとドメスティックバイオレンスに近いの……」&lt;br /&gt;「てゆうかお前にドメスティックできる人間がいるっていうことの方が、おれには驚きだったよ」&lt;br /&gt;「自分でも、何であの鬼ババに勝てないのか不思議なの……」&lt;br /&gt;「そんなに強いのかあの人……」&lt;br /&gt;「私の攻撃が届くことはほとんどないの。胸力の差だと思うの」&lt;br /&gt;「あー……」&lt;br /&gt;言葉を濁し、テュテは五歳児のなだらかな胸を上から下まで見た。&lt;br /&gt;「ドンマイ。将来的にも勝ち目ねーよお前」&lt;br /&gt;「うるさいの。うさぎに言われたくないの」&lt;br /&gt;「おめーよりはあんよ。もめるくらいはあんよ」&lt;br /&gt;「あわれみの目で見ないで欲しいの」&lt;br /&gt;「乳酸菌より牛乳飲め牛乳。乳でかくなんだろあれ？」&lt;br /&gt;「てゆうか乳に執着しない人を始めて見たの」&lt;br /&gt;驚愕の顔で見上げられ、テュテはどうでもよさそうに胸をそらして見せた。&lt;br /&gt;「まあ、でかいほうがいいっちゃいいけどよ。そのへんは持ちつ持たれつじゃね？　相手と自分の価値観というかさ」&lt;br /&gt;「パパさまは圧倒的に巨乳派なの」&lt;br /&gt;「絞め殺すぞてめえ！」&lt;br /&gt;急にキレたテュテにガッと頭を掴まれ、プルプルしながらリンは言った。&lt;br /&gt;「ごめんなの……さすがにいまのはちょっと失言だったと思うの……」&lt;br /&gt;「次はないぞ……」&lt;br /&gt;「やっぱり気にしてるみたいなの……」&lt;br /&gt;「ちげーよ！　負けを認めたくねえだけなんだよ！」&lt;br /&gt;ドンとベンチを手で叩いて、しかし突っ込みすぎの喘息のようになり、テュテは深く息をついた。&lt;br /&gt;「まーいいや。何か疲れた。薬も飲んだし、礼拝して帰るぞ。そんなにママさまと戦争したいんなら、今日はうちに泊まってもいいぞ」&lt;br /&gt;「マジなの！？」&lt;br /&gt;「正月なのに誰もいねーけどな。郊外にでなきゃなんねーからめんどくせーぞ」&lt;br /&gt;「安心するの。これから私も住むから」&lt;br /&gt;「言っとくけど、お前の家には連絡するからな。誘拐犯になるじゃねーか」&lt;br /&gt;そう言って兎娘はリンの手を引いて立ち上がった。そして教会に向けて歩き出す。&lt;br /&gt;人ごみは立ちくらみがするからと、少し離れた道の端を歩く。&lt;br /&gt;外見は完全にギャルなのだが、実のところ、本当に体が弱いらしい。&lt;br /&gt;無理して歩いているのを感じ取ったのか、リンは少ししたところで足を止めた。&lt;br /&gt;そしてきょとんとしたテュテを見上げる。&lt;br /&gt;「何だ？　はよ行くぞ」&lt;br /&gt;「……」&lt;br /&gt;少し迷ってから、口を開きかけたところで、パタパタという足音が聞こえた。&lt;br /&gt;聞き覚えのあるその音に、条件反射的にビクッとしてリンが振り返る。&lt;br /&gt;「ちょっと！　待ちなさい！　待てっつってるでしょおお！！」&lt;br /&gt;甲高い声が聞こえる。&lt;br /&gt;周囲の視線を跳ね返す勢いで、着物を翻しながら小さな妖精がすっ飛んできた。&lt;br /&gt;背中の四枚のトンボ羽が高速で動いて、半分くらい宙に浮いている。&lt;br /&gt;撮影の合間を縫って抜け出してきたのだろうか。&lt;br /&gt;髪の毛なども完全にセットはされていたが、汗で乱れきっていた。&lt;br /&gt;彼女は硬直しているリンの前で急停止すると、少しの間ゼー、ゼー、と息をついた。&lt;br /&gt;そのだいぶ遠くの方から&lt;br /&gt;「アークシー！　アークシー！？」&lt;br /&gt;と彼女を見失ったのか、聞き覚えのある声……生徒会の牛男、ゼマルディの声が、人ごみの中に埋もれてかすかに聞こえる。&lt;br /&gt;「や……やっと見つけたわ……」&lt;br /&gt;「ゆ………………油断してたの……………………」&lt;br /&gt;顔を上げた母と目を合わせて、リンはプルプル震えだした。&lt;br /&gt;殴られると思ったらしく、テュテの脇に慌てて隠れる。&lt;br /&gt;その様子をあきれたように見て、そこで始めてロッタは兎娘の存在に気づいたらしかった。&lt;br /&gt;少しの間きょとんとしてから、軽く首を傾げてみせる。&lt;br /&gt;「あなたどこかでお会いしましたっけ……？」&lt;br /&gt;聞かれ、慌ててテュテはブンブンと手を振った。&lt;br /&gt;そういえば随分前に、生徒会のフィルをいじめたことがあった。&lt;br /&gt;同じ生徒会員のロッタなら知っている可能性が高い。&lt;br /&gt;「い、いえお初です」&lt;br /&gt;「あら……そうですか。ゴルァ！　リン！　何やってんのあんた！」&lt;br /&gt;学園代表のほぼアイドルとは思えない凄みのある声で怒鳴られ、リンが大粒の涙を目に浮かべながら、歯をガチガチと鳴らしつつ言った。&lt;br /&gt;「ママさま何しにきたの……？」&lt;br /&gt;「パパさまをテレビ局に置いてきてから、ずっとあんたのこと探してたのよ！　マルディとクヌギ君家のホスト達も総動員してたのよ！？　何あんた携帯の電源切ってんのよ！？　魔力も感じなかったし、何このステルス性！？」&lt;br /&gt;撮影には彼女だけは行っていなかったらしい。&lt;br /&gt;リンは不満げな顔をしながら、おどおどしつつ母に言った。&lt;br /&gt;「携帯も魔力も消してたんだよ…………」&lt;br /&gt;「どおりで見つけることさえできないわけだわ……」&lt;br /&gt;「だってママさまは勝手にしてなさいって……」&lt;br /&gt;「素直に家に帰るかと思ったのよ。それを一秒でも期待してしまったあたしがアホだったわ……」&lt;br /&gt;額を押さえて首を振り、彼女はテュテに深く頭を下げた。&lt;br /&gt;「何だかよく分かりませんけど、どうせうちのがご迷惑をおかけしていたと思います。まことすみませんことです」&lt;br /&gt;「あー……なんかもう、どうでもよくなってきましたんで、気にしないでください……途中で迷ってたみたいなんで拾っただけですから」&lt;br /&gt;「ご親切に……すぐ関係者に回収させるように指示はしたんですけど、見失ったようで。やっと見つけましたわ」&lt;br /&gt;同じ高校生とは思えない。&lt;br /&gt;完全に母親化している。&lt;br /&gt;「ほら、リン。いまのところパパさまに全部やってもらってるから、とりあえずマルディたちと合流するわよ」&lt;br /&gt;呼ばれ、おどおどと五歳児は母を見上げた。&lt;br /&gt;その背中をぐい、とテュテが押し出す。&lt;br /&gt;「ママさまは、私がうざいんじゃないの？」&lt;br /&gt;聞かれ、ロッタは深くあきれたようなため息をついて&lt;br /&gt;「何言ってんのほら早くしなさい。ママはこれからテレビ局にもどるから、一時間だけちょっとマルディといて。あ、申し訳ありません、ちょっと所用がありまして。これあたしの名刺です。後ほどご連絡をいただけますか？　きちんと御礼をさせていただきますから……」&lt;br /&gt;ポカンとしているテュテに慌てて名刺を渡し、ロッタはごそごそと懐からお守りのような飾りがついた小袋を取り出した。&lt;br /&gt;それをリンに持たせ&lt;br /&gt;「あたしも怒りすぎたわ。年賀のお守り買ってきてあげたから。今日はどうしてもはずせないの。マルディを呼び戻したから、後のことはあいつから話を聞いて」&lt;br /&gt;「ママさまこれくれるの？」&lt;br /&gt;「パパとママからよ。ちょ、ごめんマジで時間ない」&lt;br /&gt;そこでロッタの姿を見つけたのか、テレビ局のスタッフらしき人たちが、汗だくになって十数人駆け寄ってきた。&lt;br /&gt;「今行きますううう゛！」&lt;br /&gt;半泣きになりながらそれに答えたところで、ゼマルディが到着した。&lt;br /&gt;「や……やっと見つけた……」&lt;br /&gt;コートも羽織らない私服だ。&lt;br /&gt;実家から、おそらく強制召還の魔法で、無理やり時空を超えて引きずり出されたのだろう。酷いことをするものだ。&lt;br /&gt;そのマルディのみぞおちに&lt;br /&gt;「遅い！」&lt;br /&gt;と叫んで拳をめり込ませ、ロッタはリンの頭を一つポン、と叩いてからスタッフに引きずられて人ごみに消えていった。&lt;br /&gt;呆然としていたテュテが、大分経ってから立ち直り&lt;br /&gt;「……全部お前が悪いんじゃね？」&lt;br /&gt;とボソリと呟いた。&lt;br /&gt;母が持ってきてくれたお守りを手に持ちながら、五歳児がしばらく停止した後、おもむろにカバンに手をいれ、子供携帯を取り出し電源を入れた。&lt;br /&gt;その履歴を見て青くなる。着信履歴が三百件を超えている。&lt;br /&gt;「まったく……正月から何やってんだよ……癇癪起こしてお前を置き去りにするアークシーもアークシーだけどさ……何であの二人にはこう、子育ての才能がないのかな……」&lt;br /&gt;つかれきった顔で、悶絶していた牛男が立ち上がる。&lt;br /&gt;その顔を見て、テュテがポカンと口をあけた。&lt;br /&gt;「あれ……？　クラウンじゃん。何やってんのあんた？」&lt;br /&gt;聞かれて、牛男も兎娘を見て動きを止めた。&lt;br /&gt;「ああー久しぶりだなー。一瞬わかんなかった。お前、ラルカじゃん。何だお前、まだザインフローにいたの？」&lt;br /&gt;「普通に学生やってんだけど……」&lt;br /&gt;「え？　何？　二人とも知り合いなの？」&lt;br /&gt;聞かれ、ゼマルディは肩をすくめて言った。&lt;br /&gt;「初等部から中等部が一緒だったんだ。その後こいつ、学園の南区に行っちまったから、接点はないんだけどな。何だ？　お前がリンを保護してくれてたのか」&lt;br /&gt;「まさか牛おじさんってあんた……？」&lt;br /&gt;「牛おじさん？」&lt;br /&gt;聞かれ、リンはコクリとうなずいた。&lt;br /&gt;「なの」&lt;br /&gt;「まあ否定はしないけど……」&lt;br /&gt;「ねえ……てことは、この変な子供、もしかして東区の生徒会で育ててたりすんのかよ？」&lt;br /&gt;「ああ。まあ色々な事情があってさ……」&lt;br /&gt;「何で校内でアイドルグループが子育てしてんだよ……」&lt;br /&gt;「いや、誰もが勘違いするんだけど、リンはセンとロッタがつくったんじゃないんだ。父親はセンだけど、そのへんもまあ色々あってさ。変なうわさ流さないでくれな」&lt;br /&gt;耳打ちされ、テュテは一拍ポカンとした後、次いであんぐりと口を開けた。&lt;br /&gt;「母親は誰だよ！？」&lt;br /&gt;「うっ……寒っ！　まあいいや、とりあえずリン、帰るぞ。俺そろそろ限界だ」&lt;br /&gt;「うさぎ、何か私捨てられたんじゃなかったみたいだから、おうちに帰るなの。うさぎも途中まで馬車に乗っていくがいいの」&lt;br /&gt;切り替えが早い。&lt;br /&gt;その子供に手を引かれ&lt;br /&gt;「あ……ああ……」&lt;br /&gt;と答え。&lt;br /&gt;兎娘は、何とか許容しようとしていたセンシエスタとアルヴァロッタの子供がこいつだという認識がガラガラ崩れていくのを感じ。&lt;br /&gt;正月に何度目かの、意識が遠くなる感覚に襲われた。&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;結&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>ラルロッザ ショートストーリー</dc:subject>

<dc:creator>マツサガシン</dc:creator>
<dc:date>2009-01-07T00:27:59+09:00</dc:date>
</item>
<item rdf:about="http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-a88c.html">
<title>羨辛　――　詩</title>
<link>http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-a88c.html</link>
<description>幸せになってほしいと、その人は言った でもそれは。 何よりも難しく。 何よりも辛...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;幸せになってほしいと、その人は言った&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;でもそれは。&lt;br /&gt;何よりも難しく。&lt;br /&gt;何よりも辛いことだった。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;幸せになってほしい、と。&lt;br /&gt;願ったことがあります。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;でも、それは。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;自分があまりにつらく。&lt;br /&gt;なにもかもがあまりに悲しく。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;どうしようもないものだったから。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;だから、せめてにも、幸せであってほしいと。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;そう、考えた末の願いでした。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;きっとその人も。&lt;br /&gt;そう、考えての願いなんだな。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;そう思ったら。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;永遠に、その人の心は満たされないのだろう。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;僕のようにと。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;そう、考えてしまった自分がいました。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;考えてしまったのです。&lt;br /&gt;そうなのかどうかもわからないのに。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;そう、願ってしまたっという方が。&lt;br /&gt;近いのやもしれません。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;幸せになってほしいと、僕はいくらでも言うことができます。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;誰にだって、言うことができます。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;でもきっと、それは慈愛ではなく。&lt;br /&gt;恋慕でもなく。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;ただ、たんなる。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;あこがれなのだろうなあ。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;そう、考えると。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;幸せになってください。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;その、切な願いが。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;とても。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;とても。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;つらくて、仕方がないのです。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>詩のストック</dc:subject>

<dc:creator>マツサガシン</dc:creator>
<dc:date>2009-01-05T15:00:20+09:00</dc:date>
</item>
<item rdf:about="http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-aeb3.html">
<title>灯影　――　詩</title>
<link>http://matusagasin.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-aeb3.html</link>
<description>この指がなければ。 僕に何が出来るのだろうか。 足がなければ、何が許されているの...</description>
<content:encoded>&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;この指がなければ。&lt;br /&gt;僕に何が出来るのだろうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;足がなければ、何が許されているのだろうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;声がなければ、何かを許されるのだろうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;百年、二百年。&lt;br /&gt;これから先、安らかに眠るために。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;一体どれだけ払えば、その権利を売ってもらえるのでしょうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;指がなければ、何かから解放されるのだろうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;足がなければ、何かから解放されるのだろうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;しがらみからも、夢からも解放されて。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;静かに横になることができるのだろうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;見えなければ、許されるのだろうか。&lt;br /&gt;知らなければ、許されていいのでしょうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;ならば僕は、知り得なければ、つらくないのでしょうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;この指も、足も、声も、目も。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;映るものすべてと、聞こえるもの全て。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;モノトーンにそれが、静止映画のような断続的な音をたてて。&lt;br /&gt;カラカラ、カラカラと動いているのです。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;耳障りなその音は。&lt;br /&gt;僕にはどうすることもできないのですけれど。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;その音を立てなければ、機械は動かないと。&lt;br /&gt;みんな、言うのです。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;その通りなのでしょう。&lt;br /&gt;多分。きっと。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;世の中には、音を立てずに映写せる機械が沢山ありますが。&lt;br /&gt;僕が触れるものは、今にも朽ちて落ちそうで。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;虫食いの穴を所かまわずに開けながら。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;カランカランと、それでも回り続けています。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;指がなければ、フィルムをなぞることはできないのかもしれません。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;声がなければ、アテレコの必要もないのかもしれません。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;この目がなければ、耳がなければ。&lt;br /&gt;まわっていることに、気付かないのかもしれません。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;カラカラという、腐った音を聞きながらいつも思うのです。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;何がなければ、目をそらすことが許されるんでしょうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;気づけば誰も、周りに座っていませんでした。&lt;br /&gt;朝も、昼も、夜も。&lt;br /&gt;映写機は回り続けています。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;劇場は暗く寒くて。&lt;br /&gt;非常口が、ずっと、ずっと遠くに見えます。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;一度、外を見たことがありました。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;そこには同じような寂れた劇場が、ずらずらと。&lt;br /&gt;連なっているだけ、だった。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;端から腐って崩れていくのを、いろいろな人が待っているのかもしれない。&lt;br /&gt;そう、なのかもしれない。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;足がなければ、誰かが来てくれるでしょうか。&lt;br /&gt;腕がなければ、係員が来てくれるでしょうか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;この劇場の椅子は臭くて汚くて。&lt;br /&gt;横になることが、できないのです。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;ねえ。&lt;br /&gt;誰か、見ているのでしょう。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;何がなければ、出してもらえますか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;指がなければ。&lt;br /&gt;足がなければ、許してもらえますか。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;でも、それはきっと。&lt;br /&gt;とても痛いの、かもしれません。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;痛みを避けようとして、ただ安穏と座りつづける。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;そんな僕には。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;朽ちていくのがお似合いだと。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;

&lt;p&gt;&lt;span style=&quot;color: #000066;&quot;&gt;誰かは、哂っているのかもしれません。&lt;/span&gt;&lt;/p&gt;</content:encoded>


<dc:subject>詩のストック</dc:subject>

<dc:creator>マツサガシン</dc:creator>
<dc:date>2009-01-05T13:42:05+09:00</dc:date>
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